いざ、尋常に【前編】
負けないのは挑み続けているから。挑み続けている間、負けることはない。
勝つのは勝つまで諦めなかったから。投げ出さなかったからに違いない。
恋人になる前、当時同じ会社で働いていた私は、旦那との関係を「共に仕事をするか共に生活するか」悩む程度には仕事に重きを置いていた。仮にも一時間近で仕事をしていた身だ。「この人ヤベエ」で火がついた私は、勝手に勝負を始めた。
ただ言ったところでもうベースからして違う。息をするようにしていることの重みが違う。職場が変わろうと、その噂はどこにいても聞こえてきた。結果「あ、無理だわ」と観念するまでに半年もかからなかった。繰り返す。
私は、旦那との関係を「共に仕事をするか共に生活するか」悩む程度には仕事に重きを置いていた。我はある。意地もある。当然プライドも。
けれどその後、結婚すると同時に、周囲の私への対応は変わった。変わった苗字は、この場において印籠のごとき効果を持った。指輪を外そうと苗字は外れない。この瞬間から速水詩穂は消え「○○さんの嫁」になった。水族館の水槽のごとく、それはそれは分厚いフィルターだった。
時に男性は、好きな女性にとっての、恋人であると同時に、親であり、親友であり、弟でもあるような、全てになりたいのだと耳にしたことがある。その時は「なんと烏滸がましい」と鼻で笑ったが、それを平然とやってのけるのがこの男、通称KPである。
いつだったか、やけに早い帰りに驚いたことがあって、何かあったのかと理由を尋ねると「雷が鳴ったから」と返ってきた。
「不安だと思って」
ニコニコしながら続けるKPに、開いた口が塞がらなかったのを覚えている。
仕事を投げ出してきたのかと問うと、KPは「違うよ」と言った。分かっていた。この男はおためごかしが上手すぎる。ウソはついていない。けれど自分にとって都合よく事が運ぶよう、働きかけるのが上手い。本当のペテン師はどっちだという話だ。
断っておくが、この件で早めに帰ってきたのはこの時だけだ。心配して帰った割に、案外ケロリとしている私に「何だ、もっと怯えてるかと思った」とどこかがっかりした男は、今は雷が鳴ろうときちんとお勤めを果たしている。繰り返す。
私は、旦那との関係を「共に仕事をするか共に生活するか」悩む程度には仕事に重きを置いていた。我はある。意地もある。当然プライドも。
KPは私が癇癪を起こすと、目線を合わせて頭を撫でた。ジョーカーな好々爺は、何のことなしにスペードの3に勝ちを譲る、あの現象だ。
勝たされる。これで機嫌を直して、と。棲み分けできない以上「無意識に同じポジションに並び立つのを避ける」その役割分担が、仮に「正しい」と「正しくない」、「大人」と「子供」だとしたら。
少なくとも私にとって文句のつけどころのない男が、時に腹の底から憎く思えることがある。愛憎。「愛」と「憎」を類義語として捉えることもあるが、この場合水と油だ。ただ、どちらにしても思いが弱ければ煙は立たない。火がつく程度には強いものに違いない。
さて、勝負である。先日からアナリティクスの運用をしている。
知ってる人は知ってるが、ここでの閲覧集計はゆるゆるだ。実際に記事を読まれていなくても、関連で表示されれば1カウント(書く側のモチベーションを保つための工夫らしい)だから〈基本的に「実数割る2」が正確なビュー数〉というのがnoter「しちゃうおじさん」の見解。
しかし投稿する側としては、「実際どのくらい読まれていて」「どのくらいの需要(ユニーク)があるのか知りたい」訳で、私自身1ヶ月程度間を空けて帰還し、ノイズゼロ状態で投稿してみることで、今の本当の輪郭が分かった気がする(そうでなくても間空けば普通は忘れられちゃうから、変わらず戻って来て下さるあなたには頭が上がりません。ありがとう)
そうでなくてもスキ自体、お返し、宣伝のためのものや、トップ画像作成者によるものも多数見られるため、スキの数が純粋にその作品の評価とは限らない。
そんな訳で、真ん中引っ張り出すと「本当は今どれくらい需要があ」って、その結果如何で「読者数増やすために動いた方がいいのか」それとも「今のまま継続していけばいいのか」動き方が変わってくるため、書く側としてはここに信憑性がないと困るのだ。自分の輪郭ベイマックスだと思い込んで、実際中身ほっそ! みたいになるから。