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私が起業した理由とProject:Fを立ち上げた理由

こんにちは、坡山里帆(はやまり)です!
昨日、私が起業したSworkersという会社で「Project:F」を立ち上げました。(プロジェクト エフと読みます。)

Project:Fはのミッションは「女性の起業家をふやすこと」で、具体としてはまず「女性用起業家育成プログラム:Female Founders Door」を1月にスタートすることになっています。

昨日(2024/12/12)は大きな反響をいただき、おかげさまでFemale Founders Doorはなかなかハードコアのプログラムにもかかわらず、すでに100名以上の方に興味を持っていただいております。

同時に、「いつからこんなこと考えていたのか」「これをやるために起業したの?」「どうして立ち上げたのか」「Female Founders Doorはどうやってつくったのか」などたくさんのコメント・メッセージをいただきましたので、この機会にしっかりnoteにまとめておきたいと思います。

2部構成となっており、第1章はProject:Fの構想〜起業までのストーリー、第2章は女性用起業家育成プログラムをリリースするまでのストーリーです。

第1章: Project:F

第1章では、私がなぜ起業し、そしてなぜProject:Fを立ち上げるに至ったかをお話しします。

幼い頃からの違和感。

ただシンプルに、女性と男性は人口比率が半々なのに、世の中のルールを決める人たちの性別がかなり偏っているんだろう?という疑問をずっと持ち続けながら生きてきました。

小学校の頃も、中高生の頃も、大人になってからも、前職でベンチャーキャピタリストをしているときも、ずっとうっすら感じて疑問に思っていました。

職業によって、女性の方が向いている仕事や、物理的に力が必要となる仕事において、性別の偏りがあることはもちろん理解できます。しかし、政治家や、企業の経営陣、いわゆる偉い人たちは本来性別特有の性質は関連がないように思えるのに、なぜかものすごく性別に偏りがあるのです。

その事実に、わたしは幼心に「男性の方が優秀ということなのか」というつまらない疑問をもったこともありました。

大学を出て新卒でサイバーエージェントに入社し、仕事に打ち込む日々を過ごす中で、周囲の女性たちの活躍を目の当たりにし、能力的な意味で男女優劣がないことに安堵し、少しその疑問からも離れた時期もありました。しかし、サイバーエージェントでベンチャーキャピタリストという職務に就いたとき、またその疑問が強くなってゆきました。それは、新興企業の経営者も圧倒的に男性が多いということに直面したからです。

政治家や大企業の経営者に、男性が多いというのは、なんとなく歴史がそうさせてきたと納得する部分もあるのですが、スタートアップのような新しい組織でさえ、男性のリーダーシップがベースとなっているということはわたしにとって興味深い現象でした。

もちろんそのことを否定したいという気持ちはないですし、性別によって生き方が異なるのは当たり前のことなので、「多少リスクテイクが求められる起業家という職業を選択するには、女性とミスマッチする部分があるのだろう。」と、その程度に疑問をおさめつつ、ベンチャーキャピタリストという職業に没頭し、ルールメイカーとして男性が多い社会になんとか順応しようとやってきたのが私の20代でした。

サイバーエージェントでキャピタリストをしている頃

ただ普通に仕事がしたいだけなのに。

しかし、私も30歳という節目を迎えて、私の友達、同僚の女性もその社会の中での生きづらさを感じ始めるという場面に直面することが増えてきました。

「結婚したら私が仕事をやめることになりそう。」
「子供が生まれたら今のキャリアは厳しい。」
「育休をできるだけ長くとりたいけど、キャリアに穴ができてしまう。」

5年前の私でも想像はできたような女性の悩みですが、いざ、リアルな声や悩みが友達から聞こえてくると、急に自分ごとのようになった気がしました。

自分ごとになった瞬間、過去のいろんなことを思い出しました。

例えば、友達や後輩が会社でセクハラを受けて悩んでいたり、ひどい場合には会社をやめてしまったり。女性の起業家の友人が資金調達のピッチのアポを取ろうとしたら、アポの場として男性の自宅を指定されたり。お世話になっている経営者に食事会に誘われて行ったら狭い個室で二人きりで、怖くて店前で知人に待機してもらったり。男性10人の中に女性が1人という会があり、二次会で男性が複数人Tシャツを脱ぎ出してびっくりしたり。

私自身も、社会人二年目で社長室に異動した時に社内の先輩に、「社長とそういう関係なのか?」とエレベータホールで真顔で聞かれたことは今でも忘れられません。それが男性であったら、私に吐いたひどい質問をするのでしょうか。

私を含めた女性たちは「ただ普通に仕事がしたいけなのに。」と口を揃えて言ってました。

一方で、私もそういう社会に加担していたことも思い出しました。

社会人生活に慣れた頃の私は、下ネタの会話で笑い、時には自ら率先して男性が好むノリで場を盛り上げたりしていました。飲み会に誰か連れてきてと言われれば、いわゆる”かわいい女性”を誘うなどして男性を喜ばせることが仕事ができる人間の所作とさえ思っていました。今となってはそんな自分も恥ずかしくてたまらないのですが、そうやって男性が中心の社会で、自分の仕事をするフィールドを確保しようと必死であったのです。

30歳に差し掛かる頃の私は、そのような自分を反省し、女性が普通に仕事に集中し、成果を出せる社会をどうしたらつくれるのかを考え始めるようになりました。

まず思いついたのは政治の世界に女性を増やして制度やルールの改変をするという方法でしたでしたが、これはおそらく途方もない時間がかかります。であれば、代表が女性である組織が、今よりも圧倒的に増えたらいいと考えました。つまり、女性がルールメイカーである組織を増やすということ、つまり女性の起業家を増やすということです。私がベンチャーキャピタリストであったという経験からしても相応しい山の登り方のように思えました。

私が起業した理由。

とはいえ、自分が会社の代表者となったこともなく、ただキャピタリストを経験したことがあるというだけでは、起業や組織作りについては何もわからない。まずは自分が起業し、自分という女性がルールメイカーである組織を作って率いてみるところから始めようと思い、2023年に起業しました。それがSworkersです。私が29歳の時のことでした。

サイバーエージェント卒業直前。藤田社長、起業を後押ししてくださってありがとうございました!結果出していきます!

今まで起業した理由を聞かれると「とにかく30までに起業しようと決めていた。」と答えていましたが、それは間違ってはいないけど、もっと理由はあるのだけど、自分の中でまとまり切らずにきて、それがようやく話せる程度に理由がまとまって、やっと今日、ここでしっかり書けるくらいになってきました。今まで私もいろんな起業家に、「起業した理由」を聞いたこともあったけど、そんな簡単に言えるもんじゃないんだろうなと、自分を通してわかった気がします。

さて、起業してから約2年が経つ中で私は、会社の運営上、性別に有利不利はないと確信しました。生理休暇を上司にどう報告するかに頭を悩ませる必要はありませんし、飲みに行って男性ノリについていかないと「今日どうしたの?」と質問してくる先輩もいません。決して、自分がルールになりたい!という我儘を通せて幸せということを言いたいのではありません。自分やメンバーが、つまらないことに頭を使って悩むことなく仕事に集中できるようにするためのルールを、自ら整えられるのは幸せなことだと思ったし、その幸せをもっと多くの働く女性に手にして欲しいと思うようになりました。

日本で、女性の起業家によって多くの企業がつくられ、そこでは女性が安心して仕事に集中し、成果をだせるようにするためのルールがつくられ、またそこから新たな女性の起業家がうまれ、新しい生態系のように自然と広まっていく姿を想像したとき、私はこれをやらねばならないと強く感じました。

その想いが【Project:F】の種となりました。

Project:Fの目指すところは、女性が女性特有のライフイベントにとらわれず、また各種のハラスメントに身構えることなく、女性が普通に仕事に集中し、成果を出せる社会の実現です。そのためまず私がやるべきことは、女性の起業家を今より圧倒的に増やすということです。

私が「女性起業家もっと増えて欲しいな」という想いを強くしたきっかけの一つになったイベント。THE SEEDのヒロザワさん、共同開催してくださりありがとうございました!

2025年1月、Female Founders Doorをはじめます。

私は、Project:Fで最初の取り組みとして「Female Founders Door」という女性用起業家育成プログラムを始めることにしました。一言で言うと「起業家としてのDAY1から、資金調達までをサポートするプログラム」です。

プログラムの設計にあたっては以下の3つを特に意識しました。

  • 現状具体的な起業アイディアがない方でも受講できるもの

  • 学生や仕事をしながら受講できるもの

  • 本気の方には最初の資金調達まで伴走し、フルタイムで起業家にコミットできる環境を用意するもの

対象者は広くしつつも、内容はハードコアで本気で起業家を目指す方にとっての最高のプログラムを用意しています。

起業に興味がある方、サービスやプロダクトを作って世の中を良くしたいと思っている方は、ぜひ一度、Project:FのWebサイトでFemale Founders Doorの詳細を読んでみてください。第1期生の応募は2025/1/5日まで受け付ける予定です。

第2章: Female Founders Doorができるまで

さて、1章ではProject:Fを立ち上げるに至るまでの想いを語らせていただきました。

「女性の起業家を増やす」というミッションを掲げるところまでは良しとして、問題はその具体です。

2章では、「Female Founders Door」というプログラムをリリースするまでのストーリーを、これから何かを事業を興す方に役に立つかもしれないTipsを含めながら書き記します。

Female Founders Doorに興味があるような、起業家予備軍の方々にも読んでおいていただきたい内容を含んでいます。

きっかけ: ある女性の起業家との出会い。

Project:F、「女性の起業家をふやす」というミッションが自分の中に生まれてから、わたしはずっと悩んでいました。どうやって女性の起業家をふやすのか?

今までのキャピタリストとしての経験からも、投資を希望して会いにくるのは9割が男性。だから自分がVCみたいなことをしたところで女性の起業家が増えるわけじゃない。待っているだけではいけないのです。

では、女性の起業家という「職業」の良さを布教したらいいのか。そんなことでは事業にはならない。これはライフワークにすべきことで、いまSworkersでやるべきことではないのか?

と悩んでいる時に、私はある一人の女性に出会いました。

あるC向けのサービスを開発し、VCから初めての資金調達を考えているというところで私に相談をしてくれました。事業のピッチ(プレゼン)を聞いたところ、非常に真摯にユーザーに向き合い、ユーザーの課題を丁寧に調べ、そのユーザーの課題を解決するプロダクトを極めて綺麗で無駄なくつくりあげており、スタートアップ起業家のバイブルであるリーンスタートアップの技法を忠実に実行している、私が数多くであった起業家の中でも極めて稀なほど丁寧にプロダクトを作っている起業家だったのです。

まるで起業2週目なのかと思いきや、それが1社目の起業で、聞けば社会人経験も多くなく、エンジニアスキルもなく、経営やマーケティングを体系的に学んだわけでもない、決してビジネス経験豊富とは言えない方でした。なのにどこでそんな綺麗で無駄のない起業法を学び、エンジェル出資を受け、素晴らしい初期プロダクトをつくりあげているのか、心から気になり彼女にどうやったのかを聞きました。

そうすると、驚くことに私もよく知る起業家に弟子入りして、起業家1年生がやるべきことの全てを教わったというのです。その師匠たる人が、mgramという性格診断サービスをつくった松村さんだったのでした。

私は松村さんに、何を教えたのかを全部教えて欲しいと頼んだところ、彼はいつもの飄々とした様子で「全部リーンスタートアップって本に書いてあることをとにかく丁寧にやるだけよ。ちょっと難しいところはあるんだけど、こうやって、あんな感じで・・・」と。

私はリーンスタートアップが起業家のバイブルであることは100も承知でありながら、あんな本をまともに読んで、まともにあの本の通りになぞっている起業家などそうそういないというのが私の正直ベースな肌感ではあったのですが、彼が「リーンスタートアップは最高なんだけどちゃんとやろうとするとかなり難しいのよー。」というのを聞き、Project:Fでやるべきことのヒントがそこにあるのだと確信しました。

そのとき私は、今すぐにでもProject:Fの話をして、「なんとかそのノウハウを提供してくれないか?なんならそういうプログラムを一緒にやってくれないか?」という声が喉から出かかったところで、一瞬躊躇しました。なにしろ松村さんと言うのは経営者の中でもかなり異質の人物として名高く「普段はいい人だけど、一緒に仕事をしてみて相当気難しい人だったらどうしよう。怖いなー。」と思った私は、恥ずかしくもそこでリスクをとれず、一旦退散しました。

仲間は慎重に選ぶべし。

どんなに仕事ができる人だとしても、仲間にするというのは一定のリスクが伴います。仕事ができる人だときいていても、実際にチームに入ってみると思ったようなパフォーマンスが出なかったり。仕事で会うことが多くなったときに、その相手が何らかのハラスメントを働く可能性だってあり得ます。それが仕事と関係なかったらドライに判断できても、仕事上有用だったときにはより厄介です。

だから、強くコミットしてもらう必要のある人であればあるほど、事前にある程度の下調べが必要です。そのために私がお勧めしているのは、数ヶ月間だけ一緒に仕事をするという方法です。

そこで、私は彼にSworkersの事業のグロースハックをお願いすることにしました。というのも、彼は、業界では凄腕のグロースハッカーとして知られており、なんでもmgramの日本のユーザーの最初の1,000万人を集めるのにかかった広告費はたった17,000円だというのです。(1万人につきうまい棒1本だって・・?)

なんとか3倍になればありがたいと思っていたKPIが、3ヶ月で15倍になっていました。何をやったのかと聞くと「やるべきことを丁寧にやったの😡」と謎の膨れ顔です。彼のグロースハック手法は、何百人にも教えたらしいのですが、具体的に言ったところでだれもやってくれないからもう詳細は語りたくないのだそうです。ちなみに、ひとりだけちゃんとやってくれた人がいて、それが(アルの)けんすうさんらしいです。

それでも教えてくれと頼むと、結局教えてくれたのですが、ひたすら面倒くさそうなことを極限まで丁寧にやっているというだけだということがわかりました。先の起業家の話も、リーンスタートアップをものすごく丁寧に、面倒なことも厭わずやるだけだ、というのと似てました。

彼が仕事でパフォーマンスを出す方法には一貫性があるし、彼のやり方に倣った人たちはちゃんと成果を出しているわけで、仕事のパフォーマンス面でのリスクはないと判断しました。そして、もう一つのリスクである人間性についても、全く問題ありませんでした。彼は一緒に仕事をしていても全く気難しいということはなく、極めて温厚で仕事に真っ直ぐで教え上手なナイスガイでした。彼ならば、起業家1年生の人たちを安心して任せられると確信するに至りました。

皆さんもぜひ誰かを仲間にする時には、ある程度一緒に仕事をしてみて、仕事のパフォーマンス、人間性が自分の求めるものであるかどうかを事前にチェックすることをおすすめします。

仕事ができる人は忙しい。でも諦めてはいけない。

当たり前の話ですが、仕事ができる人というのは忙しいのです。自分の仕事で忙しかったり、他からもひっぱりだこであったり。松村さんも例外ではなく、ただちょっと彼の場合は私の予想の斜め上でした。

ある日、私はおそるおそる松村さんに打診します。

坡山「(かくかくしかじかで)女性の起業家を日本に増やす必要があって・・・」
松村「それは素晴らしい。とにかくリーンスタートアップを丁寧にやることだよマジで。」
坡山「あ、はい。だからそれをぜひ松村さんに・・・」
松村「あ、いまぼくね、ドライバーのバイトをやってるから忙しいのよ」
坡山「バイト!?」

何と言うことでしょう。コンピュータサイエンスの博士号を持ち、国内外に1,500万ユーザーを抱えるサービスを開発し、国内屈指、いや下手したら世界屈指のグロースハッカーである彼が、あろうことか時給1,100円(東京都の最低時給未満)で、深夜にドライバーのバイトをやっているというのです。

理由は「ユーザーリサーチのため」と。彼曰く、「顧客の課題がわからなければプロダクトを作れない。だから起業家は現場に行くんだ。事件は現場で起きてんだ!」と。

それまでの自分の経歴など全く関係なしに、最低時給未満だろうがそんなことを気にせずに、プロダクトをつくるためにどんなところへでも飛び込むその姿は、まさに起業家の模範たる姿をみた気がします。

それをみて私自身も反省しました。「いいプロダクトをつくりたい」なんて言いながら、きちんと顧客に向き合うことが彼のレベルではできていなかったのです。だからこそ、なお一層、私自身も改めて起業家として彼に教わりたいと思ったし、彼の教えを体系化して、多くの女性の起業家予備軍にそれを提供することこそが、女性の起業家を増やすことにつながると確信するに至りました。

ただ問題は、忙しい人をどうやって巻き込むかです。諦める理由なんていくらでも挙げられます。「あの人は忙しいから断念しよう」「あの人に払うお金は用意できないから諦めよう」などなど。

しかし、経営者の先輩方によく言われる言葉に「経営者は自分より優秀な人間を仲間にしろ」というものがあります。実際、成功する起業家の中には、経験豊かで圧倒的に年上の優秀な人を捕まえることに成功し事業を大きく伸ばした人たち何人もいます。

だから私は、簡単に諦めてはいけない。松村さんにもなにか刺さる部分があるはずだ。そう信じて、彼を口説き続けることにしたのです。

言い続けることも大事。

2024年の夏、あの男を落とす方法はないかと探りはじめた頃、私は京都で開催されたIVS(国内最大級のスタートアップカンファレンス)に参加します。

IVSではたくさんの企業がブースを出しているのですが、私の尊敬する先輩である元ユーザベースで現Nstockマーケタ志賀さんが私をあるブースに連れて行ってくれました。それはTOKYO SUTEAMという事業のブースでした。東京都がスタートアップや起業家の数や質を高める事業をやっている事業会社に協定金をつけて、それを支援するというものでした。

「そんなものがあったのかーーー!」と叫びたくなる気持ちで、わたしはこの補助金を絶対に獲得せねばならない!!!と確信しました。私をこのブースに連れて行ってくれた志賀さんはおそらく神様かなにかの化身だと思いました。

ここで私が大切だと感じたのが「言い続けること」です。志賀さんはきっと私が日頃「起業家を増やしたい」と言っていたことを覚えていてくれて、だからそういう機会があったのだと思います。IVSのような大きなイベントになると、なかなか全てのブースを見て回るのは難しいですし、志賀さんが連れて行ってくれなかったら私はSUTEAMを知らずに終わってしまったかもしれません。だから、自分でミッションが決まったならば、そのミッションが進んでいようが進んでいまいが、いろんなところで言い続けることです。言い続けることで、突然縁がつながったりします。

TOKYO SUTEAMと出会ったIVS KYOTOの現場

東京に帰りわたしは早速チームを組成し、「TOKYO SUTEAM申請プロジェクト」を始動させました。メンバーは、Sworkersの業務を手伝ってくれているよどさんと、前職時代からお世話になっているB Dash Venturesの山崎さん。そして、会社は違うけれど、サイバーエージェント時代からお世話になっているTakさんです。

彼らは本業があるにもかかわらず、土日構わず集まってくれて(三連休はほぼずっと一緒でした)、SUTEAMを獲得するにはどうしたらいいかを議論し、スキームからなにから全て設計し、東京都に申請できる状態の申請書にわずか12日間でまとめあげてくれました。

そこには、もちろん女性の起業家を生み出すプログラムを実施するというコミットメントも書きました。そのコミットメントを実現できなければ、協定金を受けられなくなってしまうので、書くこと自体がリスクですが、ここでやらなきゃいつやるのだと、自分を鼓舞する気持ちで書きました。

その時は、こんな協定金が2年目のスタートアップであるSworkersにおりるとは半信半疑でもありました。素晴らしい事業計画であるし、これは絶対にやりたいと思いつつも、通らない可能性も十分高いと踏んでいました。ゆえに、私はこの時点であの松村さんにはこれに申請するとは言っていなかったのです。

さて、緊張ながらその申請書を送信し、それから日々の業務に忙殺され、プレゼン審査を受けたことも忘れかけていた頃、東京都からメールで連絡がありました。

それをあけた私は、目ん玉が飛び出そうになりました。SworkersをSUTEAMに採択するというのです。私は嬉しさで文字通り飛び跳ねつつも、一方で「通っちゃった・・🤯」という状況でもあり。

今度こそ絶対に松村さんを口説き落とさねばならない。しかし、一度断られているし、当の本人はドライバー業にご執心。だから私は知恵を出しました。まず、SUTEAMに採択されたことを伝えつつ、彼が手伝ってくれているSworkersの本業に関する相談とかこつけて、彼をおびき寄せるのです。

松村氏を誘き寄せた実際のSlack

よし、予約完了。しかしごめんなさい。私はそんな相談をしたいんじゃないんです。女性の起業家を増やすために、あなたの丁寧な仕事をProject:Fでやってもらわなくてはいけないのです。

三顧の礼は今の時代も使える。

劉備玄徳も三顧の礼で諸葛孔明を落としました。私はこの時、玄徳様になったつもりで孔明殿に会いに行きます。

私はまず、ひととおりSUTEAMが何なのかを話し、女性の起業家を増やすプログラムを実施するというコミットメントが採択されたことを言いました。

松村「わぁいいじゃん!女性の起業家を増やせなかったらどうなるの?」
坡山「補助金はなかったことに😰」
松村「そしたらやるしかないじゃんこれ。育成プログラムはいつはじめるの?」
坡山「3ヶ月後にはスタートしたいです」

彼はようやく察します。

松村「もしかして・・、ぼくにやれってことなのかい?」
坡山「あなたしかいないのです。」
松村「それやるとドライバーのバイトできなくなっちゃう。」
坡山「日本の未来のためにも、ここはどうにか。」
(しばしの沈黙)
松村「わかった。いまからやろう。」
坡山「今から!」

最高です。あれから1700年経った今でも、三顧の礼は使えるようです。やはりここぞという人には、何度でも何度でも、礼を尽くして、心から信じるビジョンをぶつけてアタックするのが大事です。

さてこれで、彼はドライバーのバイトから手を引き、Project:Fの一員として、私とともに女性の起業家をゼロから育成するプログラムをつくるという大仕事にかかってくれることになりました。

ユーザーインタビューは正しいやり方でやろう。

この起業家育成プログラムは、我々にとってプロダクトなんだから、まずは課題仮説をしっかりたてて、その検証からやるのよ。ひとことに起業家育成プログラムでも、本当にリアルに誰を育成するのか、どんな属性でどんな生き方をしている人を育てるのかで、やるべきことが全然違う。独りよがりでつくってはならず、本当に顧客のためになるものをつくるためにも、しっかりリーンスタートアップスタイルでいこう。

松村氏が「女性用起業家育成プログラムづくりキックオフの冒頭発した言葉

育成プログラム作りがはじまったとき、リリース目標の1月までのこり3ヶ月という状況でしたが、急がば回れ。私たちは、議論し仮説をたて、その仮説が正しいのか、どんなコンテンツを用意すべきかを探るためにも、何十名の方にユーザーインタビューをします。

松村さんにはほぼ全てのユーザーインタビューをリードしてもらい、「意味のあるユーザーインタビューのやり方」というものを見せつけられました。私自身、ユーザーインタビューというものは起業家なってからやったことは何度もあったのですが、全然甘かったのです。

私のようにベンチャーキャピタリストとしてリーンスタートアップという言葉に親しみのある人間でさえまともにユーザーインタビューをできていなかったというのは結構恥ずかしいことではあるのですが、同じようなことは誰にでも起こりうるので、こういう一つ一つの基礎・応用をしっかりプログラムで学んでもらえるようにしなくてはならないと実感しました。

ユーザーインタビューの結果を分析し、我々が想定するユーザーの解像度をあげ、仮説の正しいところ、違うところを調べ、プログラムとして構成する作業をやり続けます。約2ヶ月の不眠不休の作業をへて、ようやくプログラムがおおよそ形になってきます。

このとき、ユーザーインタビューにご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。(しばてぃん、翔子ちゃん、横田さんなどなどご協力ありがとうございました!)

Female Founders Door is now open!

さて、その女性用起業家プログラムに名前をつけるという段になり、私は大切な友人でもあり、最も信頼するコピーライターである、The Breakthrough Company GOのありぺーこと有田さんに相談しました。

私たちとありぺーとで、日を跨いで相当な議論を重ね、そのプログラムには「Female Founders Door」という名前がつきました。女性が起業を考える時に、まず一番最初にたたくべきドアとしてこのプログラムを育てるぞ、という想いをこめてのことです。実は、Project:Fというのもそれまで仮称であったものが、この段階で命名されました。ありぺーさん、本当に最高の仕事をありがとう!

Project:Fの構想から、Female Founders Doorの誕生までのストーリーはこの通りです。Female Founders Doorは2025年1月からスタートします。

今回、私もこの育成プログラムをつくる中で得た学びの一部をこのnoteで共有していますが、もっともっとたくさんの体験談をプログラムではお話しできたらと思っています。

とにかく、Female Founders Doorは、「起業家」という仕事に興味がある全ての人に受けて欲しいと思えるプログラムになりました。毎週の講義&宿題が半年間続くハードコアなプログラムになりましたが、これを乗り越えた方の中から、本当に女性の起業家が生まれるのが私は楽しみでなりません。

Project:Fの性質上男性にはご利用いただけないのですが、男性の方でも、もしこの取り組みに賛同していただける場合は、近くにいる女性にFemale Founders Doorのことを共有していただけると坡山、最高に喜びます。

最後に、起業家を志す女性の皆さんに、一起業家としてぜひ伝えたいことがあります。起業し、新しい価値をつくることに集中できる「起業家」という仕事は本当に最高です。人生で一度はトライしてみて欲しいとさえ思える仕事です。なので、起業に少しでも興味がある方はFemale Founders Doorにきてみてください。詳しく内容を知りたい方のために、説明会も随時開催してゆく予定です。未来の起業家であるあなたに、お会いできるのを心から楽しみにしています。

Project:F / Female Founders Doorのウェブサイト
(問い合わせ等もサイトのフォームからお願いします)

Project:Fは、女性の起業家の輩出に協賛いただける企業・団体によるスポンサーシッププログラムを展開してまいります。詳しくはこちらからお問い合わせください。

謝辞

この場を借りて、起業からここまでを支えてくださった多くの皆さんへの感謝も申し上げたいと思います。

元サイバーエージェント投資部門の時の上司であり、投資もしてくださったサイバーエージェント・キャピタル代表の近藤さん。VC時代から非常にお世話になり、まだ何もなかった私に二つ返事で投資を決めてくださったB Dash Ventures代表の渡辺さん。東京都のSUTEAMの起案から応募まで三連休を返上して向き合ってくださった投資担当であるB Dash Venturesの山崎さん。山崎さんと共に、私の起業を常に後押ししてくださったTakさん。学生時代からの先輩かつ友人で、色んな方をご紹介してくださったり、事業アドバイスもくださるHERO Impact Capital代表のヒロさん。起業したてでお茶をしながらその場で投資の意思を伝えてくださったEast Ventures代表の太河さん。起業した瞬間に太河さんと引き合わせてくれて、常に僕にできることがありますか?といつも寄り添ってくださるEast Venturesの平田さん

女性を応援する取り組みをしていきたいと伝えた際に、女性が活躍する会社をはやまりが作るんだよ!とYahoo!の過去の話とセットで、応援の言葉をくださったLINEヤフー会長の川邊さん。VC時代からお世話になり、起業家としての心得やアドバイスをいつもくださる経沢さん。本取り組みを伝えたら大きな賛同と共に、色々なディスカッションをしてくださったPIVOT時代に一緒にMCをやらせていただいた現TBSのライアンさん

弊社の会社のロゴだけでなく、本プロジェクトの一連のロゴも華麗に生み出してくださったデザイナー兼現代アーティストのにいみひろきさん。コピーを納得いくまで毎晩のように向き合ってくれたGOのありぺー

IVSで東京都さんのブースに連れていってくださったNstockマーケターの志賀さん。SUTEAMの応募を皮切りに、今回の取り組み全体を一緒に進めてくださるyodoさん。過去に培ったカンファレンスやイベント、アクセラ運営の知見を存分にシェアしてくださる堀野さん、土手本さん。このタイミングでSworkersの社員になってくれたなっちゃん。まるでSworkersのメンバーのごとく私を助け続けてくれている愛情深い優子さん。

そして今までもこれからも、未来の女性の起業家育成に一緒に向き合っていく、背中を預けている師匠であるmgram松村さん

その他にも沢山の方々に支えていただき、本プロジェクトを世の中に打ち出していけることを非常に嬉しく思います。本当にありがとうございます。

2024年12月 坡山里帆・はやまり

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はやまり。(坡山 里帆) | Sworkers代表・Project:F主宰
皆様に新しい発見を届けるためのリサーチにまつわる事に使います!