2話 鶴喰米の販売 〜返品されていたお米が入荷待ちの人気米になるまで〜
平成29年2月に設立された鶴喰なの花村は、品種「くまさんの力」を5.5haに作付けしました。
並行して、自前のミニライスセンターも設置しました。
規模的には超零細と言える鶴喰なの花村にとって、このミニライスセンターに対する4000万円を超える設備投資は大きな冒険でした。
しかし、鶴喰米の品質を維持するためには、
種まき-田植え-収穫-乾燥調整・籾摺り・玄米袋詰-精米・袋詰と全ての工程を一貫して管理することが不可欠と判断し、設備投資を決断。
この判断は結果として、吉と出ました。
ミニライスセンターを設置することで出荷直前に精米することができ、鮮度の高いお米を届けすることが可能となったため、鶴喰米の良さを最大限に味わって頂けるのです。「より美味しいものをお届けしたい」と考えていた私達にとって、とても意味のある投資でした。
袋のデザインは、数種類のパターンの中から訴求力の高いものを選びました。
・長寿や繁栄のシンボル(鶴)
・仲睦まじい様子(鶴+円)
・菜の花は、美しい山里をイメージ
・ロゴの緑色は、自然、エコ、環境、安全、新鮮、大地をイメージ
・ロゴの黄色は、活気、元気、太陽をイメージ
美しい山里で、集落のみんなが仲良く、末永く繁栄していくことを願ってこのデザインにしました。
■ 苦心した価格設定
発売する上で、最も苦心したのが価格設定です。
鶴喰米は特別栽培米基準で生産されています。
この生産コストを勘案し、またブランド化を推し進める上で安くは設定できません。
一方で、高い値段をつけることには“怖さ”がありました。
一般市場において、鶴喰米として販売するのは初めての経験であり、また、八代市内のディスカウントショップでは、5kgの大半が1500円~1800円の価格帯で販売されていたからです。
熊本県内でトップクラスの“七城米(品種:ひのひかり)”の価格が大体2,700円/5kgであったことから、鶴喰米はキロ単価を500円に設定し、
2kgを1000円、5kgを2500円で発売する事に決定しました。
■ 比較的物価の低い田舎で高いお米は売れるのか…?
まずは、道の駅さかもとと、坂本温泉センタークレオンの2か所で販売を開始しました。
道の駅さかもとへの初回納品の際、販売担当者が発した言葉が「たっかね(高い)ね~」でした。店頭には、個人農家の米が2000円/5kgで売られていたからです。
ちなみに、消費税が5%から10%上がった時に、100円値上げして、1100円/2kg、2600円/5kgになりました。
《2023.10.01追記》
燃料・肥料価格高騰により、追記現在は1300円/2kg、2800円(現地特別価格)/5kg、2900円(ネット販売価格)/5kgで販売しています。
鶴喰米の店頭在庫は、精米日の1ケ月後には返品してもらいます。これもブランド化政策の一環です。ブランド化で最も重要視すべきは品質です。品質が伴わない商品はいずれ廃れていきます。
道の駅さかもとで、11月に発売を開始してから翌年の3月までは、納品数がさほど多くもないのに、時々返品を受けていました。
■ 急増する鶴喰米の注文
潮目が変わってきたと感じ始めたのは平成30年4月頃からです。その頃になると返品どころか追加納品できるようになりました。
その最大の理由は、“鶴喰米には、販売価格と同等またはそれ以上の価値がある”ということをお客様に納得いただけのだ、と考えています。
…と言うのは、鶴喰米のような高い販売価格に慣れていないはずの地元坂本町のお客様が、リピーターとしてお買上げになっているからです。
抽象的な表現になりますが、単に商行為として販売するのはでなく、鶴喰米には、鶴喰を知っていただきたいという想い、そして集落の存続に繋げたいと言う私たちの想いを、お客様が感じ取って下さったのだと思います。
また、店頭販売とは別に、他の販路開拓も進展していきました。これは、八代市の出先機関である坂本農林水産事務所のサポートに負うところが大きいです。
坂本農林水産事務所には、鶴喰なの花村の設立のみならず初期の販路開拓も熱心に主導していただきました。
八代市立八竜小学校と坂本中学校への給食材としての納品、八代市役所と熊本県南本部への職域販売、弁当仕出し店や唐揚げ店への納品、坂本ふるさと祭での賞品や来賓へのお土産品での採用は、坂本農林水産事務所の口利きによってお取引をいただいたお得意様です。
こうしてJAに頼らない自前販売網の基礎作りができました。
■ 全国販売に向けた「鶴喰米」の挑戦
鶴喰米の品質は確かなものでした。
時が経つにつれて口コミで広がった評判は、価格が高いにもかかわらず、大量に消費する介護施設からの引き合いを受け、個人のお客様からも直接注文をいただくようになりました。
そして、これらのお客様は、現在でも引き続き大切なお客様です。
また、八代市ふるさと納税の返礼品として登録できたことで、関西・関東圏への発送も急増しています。
発売から5年が過ぎ、鶴喰米はブランド米として認知されつつあります。
現在の栽培面積は6ha。収量は大体400俵(24t)前後です。
令和3年産米は、大口の年間契約先、および鶴喰米としての販売用在庫を除いて3月で完売しました。
令和4年産米の作付け面積は6haと昨年と変わりません。人手に限界があり作付け面積は増やせないことが、その理由です。
今年の予定収穫量は430俵。
これくらいの収量であれば令和3年産米同様、来年の3月には完売するものと予想しています。
平成29年産米と30年産米は、収穫量の一部をJAに納品していましたが、令和元年産米から全量を自前で販売しています。
自前の販売網を持つ事は重要です。
私たちには、お客様の顔が見えます。
同様に、お客様も私たちが見えます。
鶴喰なの花村は、性急に販売を拡大するよりも、お互いが見える繋がりでの販売を目指しています。
その方針に基づいて、今後は、EC(Electronic Commerce)販売に力を注いでいきたいと考えています。
超零細法人ではありますが、お客様と会話しながら、日本全国を市場とした販売を目指したいからです。
《八代市坂本町のお米を全国へ!》
2023年9月15日から10月31日まで大特価キャンペーン実施中です。この機会に、全国の皆様にお召し上がり頂ければ幸いです。
第1話はこちら↓