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【実況と感想】NHK太平洋戦争80年・特集ドラマ 倫敦ノ山本五十六

2021年12月30日(木)22時放送、NHKドラマ 倫敦ノ山本五十六を視聴しました。

ーー始まる前にーー
なぜこの時期に山本五十六を描く必要があるのか?
ここにNHKの意図を読み解く鍵がありそうです。
戦後80年たっても敗戦国日本を忘れるな、ということでしょうか。

<出演者>

  • 山本五十六(香取慎吾)

  • 大角岑生(渡辺いっけい)

  • 富岡定俊(高良健吾)

  • 堀悌吉(片岡愛之助)

  • 松平恒雄(國村隼)

  • 伏見宮博恭王(嶋田久作)

  • 岡新(市原隼人)

  • 山本礼子(平岩紙)

  • 高橋是清(山本學)

■プロローグ
昭和16年12月8日未明、山本五十六連合艦隊司令長官が真珠湾攻撃を決行する映像から始まります。
そして昭和20年12月の戦後の東京へ切り替わり、靴磨きの少女に金を払うシーンを映し出します。

富岡定俊(高良健吾)が山本五十六の資料を集めます。
「ロンドン軍縮会議に海軍の失敗の始まりの源がある」

■昭和9年7月
山本五十六(香取慎吾)50歳、一海軍少将に過ぎませんでした。
ロンドン軍縮条約の予備交渉を控えていました。
軍備縮小と国際協調を目的としていて日本も批准していました。
「軍の任務は戦争をしないことだ。戦争しないことが誇りだ」(堀悌吉)
「その言動は危ういぞ。アメリカの国力はすごい」(山本)
軍縮条約反対派の山本と賛成派の堀の間で意見が別れていたのです。

■軍令部総長室
軍令部総長・伏見宮博恭王(嶋田久作)は山本五十六を予備交渉役代表とすることを認めます。

■五十六の妻・山本礼子(平岩紙)
海軍には強くあり続けてほしい、アメリカなんかに負けないでほしい、と民衆も支持しているようです。
山本五十六には子が四人います。
澄子・正子・義正・忠夫です。

■前大蔵大臣・高橋是清(山本學)が宴会の席で今の情勢を語ります。
「海軍は軍縮条約で軍縮から脱退するらしい」
「国家予算の2割使い続け、それをさらに増やすのか、日本経済はにっちもさっちもいかなくなる。軍のための国家ではないのだ」
「犬養くんのように殺されるか、やれるもんならやってみろ」

■山本家で
長男・義正が府立一中に合格するかどうか五分五分とのこと。
義正を海軍に行かせたいのではないか、と問う妻に五十六は同じ道を進んでほしいと思っていると答えます。

■海軍省
予備交渉の代表を山本にと言われ、海の上のほうが気性にあっていると答える山本。
伏見宮博恭王のもと、承知させられる山本です。
海軍の主張はひとつであり、英米との不平等な戦力比率を撤廃することが悲願。
英米がこの提案に乗るとは思えない、と答える山本です。
海軍の総意は軍備増強でした。
辛抱強く我が国の立場を主張し粘り強く交渉してもらいたい。
期待しているよ、と伏見宮博恭王のひと言がプレッシャーをかけます。

■山本家で堀と
「アメリカ・イギリスと戦争したいわけではない」(山本)
「軍備を増強すれば戦争に進みかねない」(堀)
「俺たちは日本海海戦で本物の戦場をみてきた。あの悲惨な光景は二度と繰り返してはならない」
「考え方を変え、誇りも平和も両立させればいい。軍縮を維持しアメリカ・イギリスに譲歩させる」
「アメリカと戦争になれば必ず負けることはわかっている」(山本)

■昭和9年(1934年)10月16日
山本一行はロンドンに入りました
宿所・グロウナーハウスに入る山本と松平恒雄が出会います。
海軍・岡新(市原隼人)が現地駐在武官として立ち会います。

■10月23日
英国首相官邸に入る山本
イギリス首相・マクドナルドなど重要閣僚が出席していて意気込みを感じます。
イギリスは交渉を柔軟にすすめようとしていましたが、アメリカとの交渉は厳しかったのです。
米国代表・ノーマン・デービスが交渉に臨みます。
岡新は海軍のお目付け役のようです。
軍縮会議は武器を使わない戦争です。
それぞれの主張に大きな隔たりがあり、平行線でした。

山本は英語ができるのにどうして通訳を使うのか?
「時間が2倍かかり、考える時間ができるから」(山本)
日本での山本の知名度は日に日に増していきました。

■日英専門家交渉
イギリスは強硬な姿勢を崩さない日米に提案します。
軍備平等を宣言し、他国への比率の強要を禁止するという案です。
イギリスとの交渉をまとめてそこにアメリカを巻き込むことを山本は決めました。

■思案する山本
交渉案ができました。
試案として本国に電報送ることになりました。
お目付け役の岡新が電報送信に反対します。
軍縮条約交渉を継続することでは海軍の方針に反します。
軍縮条約は不要とつっぱねる岡新に対し、そうとは思わない、交渉を続けるほうが賢い選択だという山本。
結局、本国に電報を打つことになりました。

■ロンドン市街で
本国から電報を読む山本。
「海軍は却下した」

■期限
日本の案を出すよういわれる
本国の認可されなかたった、案は無いと答えます。

■昭和9年12月日本
軍縮条約の破棄実現バンザイという世論が起こります。
12月19日予備交渉休会が宣言されました。
軍縮の時代はは終わり、軍備拡大の時代を迎えたのです。

■昭和10年2月
山本は東京に降り立ち、熱狂した国民が出迎えました。
堀中将は予備役に編入され軍の中枢から追われていました。

■自宅で堀と
「誇りと平和を両立できなかった。何を言っても無駄だった」(山本)
「狭い視野のままでいたら、近い将来災いが起こる」(堀)

■その後
海軍次官や連合艦隊司令長官などの要職を歴任。
富岡定俊が振り返ります。
「山本さんはずっと悔やみ続けていたんだ、海軍にとっての満州事変、分岐点だったのかもしれない」
「予備交渉は大きなチャンスだったのかもしれない」
「我々は失敗した。国中を焼け野原にした。多くの国民は強い日本と自分自身を一色多にした」
「失敗の記憶を留めるために、軍縮会議の記録を残そうとしている。放置することはできない」

昭和18年4月18日山本五十六は前線視察中にアメリカ軍機に撃墜され戦死。

----おわり----

■感想
観る前からわかっていたけど、かなり山本五十六を美化した描き方でしたね。
戦争には反対であり、アメリカとは戦争するべきではないという考えだったことを印象付ける狙い。
英米と国内との間で交渉に尽力する姿を描き、山本五十六を持ち上げる狙い。
独断で交渉を拒否した視野の狭い海軍、それに乗った世論としての軍国主義が戦争に突き進んだ、という印象です。
結局、軍縮会議の予備交渉で拒否されることは明らかだったのではないでしょうか。
単に、山本五十六の私案が政府に拒絶されただけなのに、ドラマでは海軍と英米の間で尽力した姿をイメージした演出で美化しているようにしかみえません。
海軍中将の山本を予備交渉役として選出した時点で交渉の価値なしとしたのでしょう。

忘れていけないのは、真珠湾攻撃に邁進したのは山本ですから。
それも、アメリカと戦争しないという戦略を打ち破るかのように真珠湾を奇襲してアメリカの参戦を決定的にしたのも山本です。
もちろん山本一人の意思で戦争が始まったのではないですが、直属の上司・米内光政、永野修身等が絡んでおり、更にその上の近衛内閣が主導したことは通説化しています。
裏では共産革命主義者が暗躍していたことも。
第二弾でこのような真珠湾攻撃の真相を描かない限り、このドラマは自虐史観のプロパガンダの垂れ流しでしかないのです。


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