【感想】NHK『歴史探偵』第7回「長篠の戦い」を観ました
一昨日2021年5月20日(水)22:30~23:15、NHKの歴史番組「歴史探偵」7回『長篠の戦い』を視聴しました。
この番組は、今まで放送していた「歴史秘話ヒストリア」の後番組です。
今回のテーマは、長篠の戦いの常識を覆す。
長篠の戦いと聞けば、学校で信長が鉄砲を大量に用いて武田騎馬隊に大勝したと習いました。
そんな常識を覆す真実が登場するそうです。
推測ですが、武田信玄が突然死して、体制が混乱している状態での戦いなので、その影響もあったのでしょう。
戦力、軍備など総力で比較すると武田が勝てる見込みはなさそうに思えます。
■長篠の戦いとは
今から450年前の天正三年(1575年)、愛知県新城市長篠において、武田勝頼の騎馬隊を織田・徳川連合軍の鉄砲隊が打ち負かした戦いのことです。
武田軍は15000人、織田軍は38000人という規模です。
信長軍の三段撃ちが行われというのが定説ですが、実戦向きではないのではという疑問があります。
実際に合戦が行われた愛知県長篠に向かいます。
上空から見ると、連吾川を挟んで38000人の信長軍と15000人の武田軍が対峙しました。
馬防柵を再現します。
火縄銃の威力を調べてみます。
50mの距離で40cmの的に当たるのは平均73%
100mの距離から撃つと10%しか当たりません。
つまり、50m以内の距離になってから射撃し始めることになります。
甫庵本『信長記』によると3000丁の鉄砲を用意したとあります。
実際に三段撃ちをやってみたところ、弾込めに時間がかかり戦法としては効果的でないようです。
■コンビニのレジ待ち撃ち
本当は空いたところに各自が入っていくうち方だったのかも。
先着順自由連射ですと、平均3秒で射つことができ、突破されないようです。
この方法なら、入れ替わり立ち替わりで撃っているようにみえます。
これがコンビニのレジ待ち撃ちです。
■武田軍側から見ると
武田勝頼の騎馬隊がやみくもに突撃し敗れたというのが通説です。
武田勝頼陣立書によると、武田騎馬軍団は最先端の軍だったそうです。
10%が鉄砲隊で1000丁の鉄砲を持っていてもおかしくありません。
しかし、武田の鉄砲隊には弱点がありました。
それは、「鉄砲玉」です。
武田の鉄砲玉を成分分析してみると、中国・明の永楽通宝と一致しました。
鉄砲玉を造るため、銅銭を使っていたのです。
それは、地理的制約が武田の領地にあったからです。
南蛮貿易の拠点であった長崎や堺は甲斐からは遠いため、物流アクセスが厳しく、鉛が不足したのです。
代替品として銅を鉄砲玉とせざるを得なかったのです。
■AIで合戦をシミュレーション
前提として鉄砲の数を、武田1000丁、織田3000丁とします。
弾数を武田5万発、織田90万発とします。
戦法は、先着順自由連射式、武田軍は田んぼを避け沿道をうまく使います。
AIのシミュレーション結果は1か月後にわかります。
合戦スタート、武田軍が壊滅的打撃を受け、戦死者が増えます。
その後、武田軍が巻き返し、善戦します。
ここで武田軍は玉切れ。
武田軍の槍隊は馬防柵を突破、騎馬隊が突き進みます。
武田軍が勝ちそうです。
■睦平鉱山
長篠の近くに睦平鉱山があって鉛の産地でした。
この合戦の場所で鉛の鉄砲玉が発見されています。
この鉄砲玉は、睦平鉱山で採れたといわれています。
武田軍は、鉛の産地であった睦平鉱山を手に入れるために戦争を起こしたのではないでしょうか。
新たな発見です。
■予想しない織田連合軍の秘密兵器
武田勝頼の手紙に、敵が城を構えて籠もっていた、という記述があります。
城というのは、堀、石垣、塀、土塁を要する地形が城に見えたようです。
甫庵本『信長記』に、さかも木といって、尖った木を柵に設置、身隠しという有刺鉄線のようなものを配置していたことがわかりました。
実験してみると、足軽部隊は、なかなか突破できませんでした。
この秘密兵器を配置して再度シミュレーションしてみました。
すると、合戦開始が午前6時。
柵をなかなか突破できず、次々と連合軍の鉄砲隊に撃たれていきます。
午後2時終了、武田軍敗北。
高森恵光寺の墓が第三の馬防柵があった所にあります。
織田軍を苦しめた人物の墓として造られたのではないかと番組は言います。
動かないで狙い撃つのが一番良い方法だということで、この後、関ヶ原の戦いや真田丸で鉄砲三段撃ちが行われました。
おわり
■感想
新説が登場し、なかなか面白かったですね。
三段撃ちについては、昔から疑問が出されていますので、新たな説が取り上げられたと言っていいでしょう。
一番面白いのが、睦平鉱山と長篠の戦いの関係性を見出したところです。
鉄砲玉の材料である鉛の不足を補うための戦いだった、という仮説は面白いですね。
近世史はあまり詳しくないのですが、地理的な優劣というのが経済力の差、そして戦国大名の力の差となって現れたというのは、本質をついていて面白いですし、研究してみたいテーマです。
経済力の差が戦国時代、江戸時代、明治時代、そして現代へと続いていくことは明らかです。
だけど、小説とかドラマでは描きにくい題材です。
経済学をもっと勉強しないといけないですね。