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琥珀集37.
五十代という暗い年代のさなかに
早春の嵐が夜に落ちてくる
影は一年のうちで最も濃く
陽光のささない海底に崩れ落ちた都市のように
我々の青春の日々の葬送曲が試し奏され
すでに落命した者たちが青白い若い顔のままで
我らの荒涼たる後半生を先導する
今 何千人の警備員が耳元に吹き荒ぶ夜の嵐に家族を思っているか
今 何千人の生産者が畑の作物を思いやっているか
今 何千人の若い両親が幼き子らの幸福を思いの中に描いているか
心せよ
家族を持たない者もまた
死後 縁ある生者の視界に棲むようになる
暖かい陽射しのような祝福を子孫にもたらせるか
自分を呪うような境遇を愛する者にもたらす凶運の元凶となっているか
今 暗黒の上空を通過してゆく嵐に攫われてゆく
自分の死後の霊魂に
今 自分が何をしてやれるかを
■画像はヤフー、琥珀画像より。