この地にいませし精霊は
我を護ると言いおきて数十年前に逝きし
祖母の血流、祖霊なり
遠き微かな縁なるも
野末道べに溢れ来て
わが生を尋ね昔を語らんとせしなり
永き歴史に耐えて傷跡は松の横這うがごとく
肉体と心に残りつつも
生活は豊かならずも
子だくさんにかがやきて
ハンドル握る若者の目に見果てぬ幻の色あり
しばし駅にて黙想にふける我に
祖父母に手を引かれし見知らぬ童は言いき
来たよと
我 涙を堪ええず
かそけき風の中にて野に暮らす人々は
大いなる命をつなぐ野の曙光のごとき
かそけき風ふくこの土地はもはやうち栄えることは無いが
どのような敗残孤宿の魂でも迎える力ある大地の子の宮なり