野性のエンジン11. “ステビアは刑務所産業のコアテクノロジー”
一旦お蔵入りした農業刑務所プロジェクトモデルをインド、スリランカ、パキスタン向けにアプローチすることにした。刑務所農業訓練は受刑者の更生に必要な高い収益を恒常的に可能にし、なおかつ移住先地域に産業として永続可能なブランド農畜水産物を産出する為に産地が形成可能なのだ。しかしそれらを可能とするためには、当該刑務所による出所者産地の産品買取制度が必要だ。さらに刑務所が出所者産地周辺産地からの恒常的買取を実施し、受刑者を当該産地に派遣して農作業を負担すれば、ほとんど人件費が発生しない、とてつもなく競争力ある価格が実現する為に一般市場でも通用する。刑務所買取と利益率の高いブランド農畜産物を365日出荷できる産地は強力な農業エンジンそのものなのだ。疲弊と高齢化により日本のほとんどの農業産地は年金農業地化しており、いかなるIT技術や世界的なオーガニック資材を投入しても産地継続できない、構造的問題と、とめどなく流入する遺伝子組み換え輸入農畜水産物、食品に押し流されて久しい。ここでもまた、日本人だけでは新しい産業構造創造がもはや不可能となっている。だからこそ今はあらゆる日本発創造性は逆輸入とならざるを得ない。属国政府に創造的政治や産業創造は許されないのだ。
農業刑務所プロジェクトモデルの中でも非常にコスパの高いモデルが、“ステビア農業刑務所モデル”だ。ステビアはパラグアイ原産のキク科のハーブで、葉の部分が甘味料として現在世界的にコカ・コーラ社とペプシコーラ社に寡占されているが、茎の部分に非常に強力な農畜水産業や健康産業分野の機能性が日本で発見開発された。
●ステビア抽出液資材を土壌灌水すると、土中のダイオキシンや残留農薬が検出されなくなる。当時の千葉大学などの実証試験の論文を読んだが、どうもステビアの強力な抗酸化作用が当該物質を分解しているのか排出させているという仮説だった。このためステビアを用いる野菜や果実の生産者達は出荷の数日前に作物にステビア抽出液を散布していた。
●ステビアはもともと甘味料または日持ちを格段によくする天然の保存効果成分として使用されているので、当然、農畜水産物の糖度、食味値、日持ちを確実に高める。
●ステビア抽出液の健康効果も当時いくつもの大学でのエビデンスが実証されていた。例えば、肺ガンや糖尿病抑止効果など。今でもステビア飲料企業が渋谷区にある。
これらの魔法のような資材としてまず東京大田市場がステビア農産物コーナーを設けていた。ステビア抽出液資材を研究開発した当時のS社長を幾度も訪ねてレクチャーを受けたが、ステビアはもともと南米インディオの薬草であり、また甘いので、魔力があるのか、蟻のように人もたくさん集まるが中にはあまり良くない層も引き寄せると話されたのを覚えている。以後10年に渡り、様々な妨害工作、発癌性がある等の情報操作等により、メーカーは3代にまたがって戦ったが、大塚製薬系の農薬企業に買収されて雲散霧消している。
またステビアは様々な陰謀論(ホンモノ情報を駆逐する為に意図的に拡散されるものが70%、残りは…)にも登場する。ステビアの様々な抗酸化作用や機能性から、アメリカで人工血液の成分として研究されているとか、御巣鷹山JAL123便機墜落事故に関係者が搭乗していたとか。今から思えばステビア資材企業創設社のS社長は、襲い来る様々な謀略から企業と技術を防衛する為に、滋賀県に本部を置く道教系宗教教団との融合を策したのではと思える。社員のみならず代理店や生産者にまで信仰を勧めた為に、総スカンをくらい初代ステビアメーカーは空中分解し、やむなく副社長が再建したが、その2代目も行方不明。現在は大塚製薬系統の農薬企業が正式な販売権利を所有している。(買収後に大きな借金も判明)。
ことほど左様に、ステビア農業資材は切れ味鋭いオーガニック農業資材なので、ステビア栽培、ステビア抽出液精製、農畜水産産地創出、健康飲料(制癌効果、糖尿病抑制緩和)化など一つのステビア産業体系=ステビア・インダストリアル・コンビナートが可能なのだ。葉はありがたいことにコカ・コーラとペプシコーラが買い上げてくれる。茎の部分以外にも根の持つ機能性も研究中のようだ。一時期はミャンマーの刑務所で栽培されたり、大麻マリファナの代替作物として国連にも推奨されていた。つまりステビア農業刑務所モデルは強力な刑務所産業のコアテクノロジーだということ。ステビア栽培から始まる質の高いオーガニック農業、畜産、養殖、健康食品産業群が刑務所という人件費0施設をコアとし、出所者による農畜水産産地からな産品を買い取る自給システムにより、産出される産品は余計な価格競争をしないで成長できるのだ。かつての法務省地下会議室での勉強会にて、ステビア最後のメーカーのW社長が階段にすわって、これからうまくいくのかねとつぶやいたのが思い出される。
■画像は青朽葉色。吉岡幸雄著『日本の色辞典』より。