アーカイブに生きて
実は昨年の9月から、月曜日の朝に街中で場所を借りて、その時集まった人たちでコーヒーを飲みながら過ごす会を開いている。
緊急事態宣言やら自分の仕事や会場の都合やらでお休みする時期もあったが、なんだかんだと次で20回目になる。
自分の場づくりの実践とも考えているこの場には、モデルにしている場がある。それが、茨城県つくば市にある筑波大学すぐそばのコワーキング Tsukuba Place Lab で毎週月曜日の朝に開かれていた定例イベント、「コーヒーミーティング」。
オープン初期から、なんならオープン前のDIYの頃から開催されているというこの時間は、始まった当初こそ何かしらのテーマがあったけれど(いまや知る人ぞ知る話になっているかも)、その後は特に決まった目的もなく、その時間に訪れた人とコーヒーを飲みながらコミュニケーションを楽しむ心地よい場になっていた。
『気軽にコーヒーを飲みながら、週の始まり月曜日の朝時間を気持ちよくデザインする』ことを目的にゆるく開催いたします。コワーキングプレイス Tsukuba Place Labで日々生まれるあれやこれやについて代表ほりしたからお話ししたり、みんなでわいわい話したりしましょう。
そんなコーヒーミーティングが、去る2021年3月22日月曜日の会で200回目を迎えた。単純計算すると月4週とみて50か月、丸4年以上開催し続けてきたことになる。
Facebookの投稿でこれまでの写真がアップされていた。
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このコーヒーミーティングに自分の時間を重ねて訪れ、誰かと過ごした人の多さと多様さに、あらためて心が動く。記録に残っているその人々は、時に穏やかに語らい、時に満面の笑みでポーズを取り、時に真剣な顔で対話していた。
あんなに足繁く通っていたけど、今の街に引っ越してからあの場に行く機会はすっかり少なくなっている。車で1時間ちょっとの距離ではあるけど、仕事もあるし、引っ越してすぐにコロナ禍も本格化した。
決して劇的な出来事ではない、「毎週月曜日の朝」という日常の中にある時間。記憶だって薄れていきやすいのだろう。このコーヒーミーティングも、Labで時々ふいに発生していた自炊ランチも、いつ、誰とといった鮮明な記憶が全部残っているわけじゃない。
でも、写真という記録に残っている自分を見つけると、その時のことを鮮明に思い出せてしまう。ざざっと波が寄せるように景色や声、匂いが帰ってくるそのスピードが、それが大切で濃い時間だった証明かもしれない。
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自分がつくばにいる頃に、あの街を発ってしまった人が写っている。
あの頃はよく一緒にご飯を作ったりしていたのに、すっかり疎遠になってしまった人がいる。
あの日一緒にコーヒーを飲んだけど、もしかしたらもう一生出会わないような気がする人もいる。
あんなに大好きだったのに、もう会えないなと思う人も、もう会わないと決めた人も、一緒にそこにいる。
人の流動性がこの場を保っているとして、自分が流れていくのも、自分がここで出会った人や好きだった人たちが流れていくのもごく自然で、この場は次に流れてくる人へと託されるのだ。
あの時一緒にいたみんなと、もう集まることはないのかもしれない。
思い出話すら、もうしないのかもしれない。
写真の中の僕が着る服は、引っ越しの時に捨ててしまった。
だけど、こうやってアーカイブされているから、証拠だけはちゃんと残っている。あの日、ここにいたという記録。
その時間をあなたと一緒に過ごしたという証拠。
あの頃ともにあって、あなたと生きていたという証拠。
「良いよね、素敵だよね」という話がしたいわけではなくて、どちらかというと「だから、大丈夫だよ」ということが言いたい。
流れてしまってもう会えないかもしれないし、しんどい時に連絡することも思いつかないかもしれないけれど、間違いなくあの時、僕たちは同じ時間を過ごしていて、ちゃんと「生きていた」。
どれだけ自分が変わって、誰かが変わって、目の前の景色が変わっても、記録に写っているそれは揺るがない。積み重ねたものが、その上の今を支えるのだ。
あの頃の僕らは、アーカイブに生きている。
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200回目のコーヒーミーティングの当日、3月22日の朝、お祝いをと思って代表に連絡をした。
実は、Tsukuba Place Labとして初めて利用回数100回を迎えたお客さんが僕で、それがちょうど3年前のその日だった。まさかすぎる。
またそのうち行きますね。
いつもサポートありがとうございます…! いつかお会いしてお礼を伝えたい! いただいたお金でジュースで乾杯したり、一緒にコーヒーを飲んだり、お酒と一緒に熱く語り合うことを思い浮かべてます。ぜひお付き合いください(笑) そして、コメント付のシェアも最高です!なんと無料です!