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琉球戦レビュー~違う姿の因縁マッチ~

<スタメン>

・松本山雅

スタメンは前節から1人変更。
左WGで国友に代えて村越が10試合ぶりの先発。

樋口・山口・榎本に代わって、ベンチには龍平・住田・滝が入る。

・FC琉球

スタメンは前節から3人変更。
高安・岡澤・ケルヴィンに代えて柳・武沢・野田が先発に。左SHの清武は対山雅6ゴールの山雅キラー。

ベンチは鍵山・岩本・人見に代わってベンチには上原・阿部・サダムスレイが入る。阿部とケルヴィンは山雅での前半戦で得点をあげて逆転勝利に大きく貢献しており、切り札としての働きが期待される。

<記録>

・ゴール(41)
15:小松
6:菊井
5:村越
3:滝
2:パウリーニョ、野々村、鈴木
1:榎本、山本、渡邉、藤谷、野澤(、OG)

・アシスト(26)
5:菊井
4:小松
3:下川、常田
2:山本、滝
1:鈴木、野々村、榎本、住田、渡邉、村越、米原

・警告・退場(35・2)
6:菊井※
4:野々村※
3:安永、小松
2:山本、パウリーニョ、滝、藤谷、常田
1:小松、住田、榎本、下川、喜山、渡邉、安東、村山、米原(武石C※)
0:村越※

<総括>

■"らしくない"琉球戦

・対戦成績は最悪の相手……

富山・鹿児島・今治・FC大阪の上位連戦を1勝2敗1分けで終え、下位で苦しむ琉球とホームで対戦。前半戦で山雅に勝利してからは8戦で1勝(対北九州)のみで順位もずるずると下降。失点数最多の守備面、固定できないセンターラインなど苦戦が続いている。

ただし、対戦成績を見るとリーグ戦では0勝5敗0分け
圧倒的なポゼッションと小気味よいテンポのパスワーク、SBやボランチも高い位置を取って分厚い攻めを仕掛けてくる超攻撃的なスタイルを武器に、これでもかというまでに山雅をボコってきたのは多くのサポのトラウマになっているだろう。

そんな因縁の相手に「6度目の正直」を狙う試合となった。

・前半の出来を分けたボランチへの対応

立ち上がりは「繋ぐ素振りは見せつつ、ロングボールを中心にシンプルに試合を進める琉球」と「後ろからしっかりとボールを動かして前進を図る山雅」という構図で試合が進む。

両者同じようにGKからボールを繋ぎたい意思は見えたが、対照的だったのはボランチの抑え方。

山雅の保持時には琉球2トップがプレッシャーをかけ、ボランチには武沢が出てきて何度か安永を潰そうとしていたが、後ろに重く間延びしていたこともあって距離が遠く、ファールで潰すことになったり、相方の米原を使われて展開されてしまうシーンが目立った。

途中からは「潰せない」と感じたのか、武沢が出てくるのは控えめになり、その分2トップが抑え気味の対応に。その分、前線↔ボランチ間に自由にできるスペースはできていた。2トップがCBを牽制しながら山雅ボランチを消そうと頑張ってはいたが、即興性は高く、安永米原が共に自由にボールを受けて運んでが自由にでき、前半の躍動に繋がることとなった。

霜田監督も

1週間の練習でテーマとして挙げていたこと。ちゃんと立ち位置を取ってボールを回す。あるいは回すだけではなくて相手のラインをブレイクする。それがクロス一辺倒になるのではなく、中からも外からもどう裏を取るのかということをずっと練習でやっていて、それが今日、1つ2つと形になっていました。

松本山雅公式 霜田監督コメントより

と話している通り、山雅の準備・持っている良さは出やすいシチュエーションになっていたように感じる。

・不調が現われていた琉球の保持

一方、山雅のプレス(非保持)と琉球ビルドアップ(保持)の局面でもこの試合は山雅側が優勢に立つ。

琉球はSB福村が最終ラインまで落ちてきてビルドアップに参加。恐らくサイドに張っている清武にボールを運びたかったはずだが、最終ラインが前進できず、清武までボールを運ぶのに苦戦。
しかも、山雅側も3枚で繋ぐのは織り込み済みだったのか、2トップが縦関係になり、WG野澤が福村の位置まで出て行く形まで整理できていた

途中には試行錯誤しながら武沢が左に下りてきて、サイドで起点になろうとすることもあったが、

前半は中の選手の意図があっていなかったのか、全体が広がっていたにも関わらず、基本的には山雅のプレスを受けて、ロングボールを蹴ってしまうことが多く、山雅のCBに弾かれてセカンドを回収されるという流れが多かった。

正直、山雅のプレスがしっかりハマっていたというわけではなかったので琉球側が蹴る必要がないところで焦って蹴ってしまった、ロングボールで山雅の土俵に乗ってしまった側面が強かったのは否めない。このあたりは失点の多さやメンバーの固定できなさもあってナーバスになっていたのかも……。

■劣勢を跳ねのけた執念

・琉球が修正を見せた後半

前半はシュート数12本(8本)ー1本(0本)で圧倒。保持率も山雅が55%と、リーグ2位の保持率を誇る琉球を上回る保持率を叩き出し、遅攻・速攻を使い分けながらうまく試合を進めていた。

だが、後半になるとそれも一転。
失点した最初の15分では琉球が60%の保持を占めてシュート数も増加。前半のようにゲームを進め、追加点を取りたかった山雅からするとゲームの進め方・スコアともに不本意な展開に持っていかれる。

要因としては、

・<非保持面>琉球側の2トップの追い方が1度整理され、野田が米原を捕まえながらプレスをかけるようになったことで武沢が安永を再び捕まえやすくなった
・<保持面>福村サイドでの可変ビルドアップにこだわらず、柳サイドの質的優位性を使うようになり、それに山雅もそこそこ手を焼いたことで左サイドも使いやすくなった。

ことなどが挙げられそう。

・「右からの失点」の戦術的欠陥

琉球の得点シーンはFKでその右サイドから一発で左サイドへと展開した流れから。

このボールは一度は野々村→藤谷と弾いたが、ここで野澤へのボールを福村がインターセプト。福村に対しては藤谷が出て行くがそこでできたスペースで野田が受け、振り向きざまにシュートを打つとこれが村山の頭を超えて逆のネットに突き刺さった。

最終ラインに人は残っているのに……という形だが、右サイドで攻撃を完結されてしまうというのはここ最近の主な失点パターンとなっている。特に藤谷がサイドに釣りだされて、野々村の周りにスペースができ、さらにその周りを誰も埋めることなく、ボールホルダーに自由を与えてしまうというのが顕著。

※ハイライトより実際の失点直前の映像

一見、野々村が離しすぎているだけのようにも見えるが、目の前の平松がフリーになっているのが視界に入っており、瞬間的に"ゴールを背負っての1対2を作られている"ことがわかる。そこへのパスが選択肢によぎったことで寄せるのが遅れてしまった。

一連の動きを見るとマンツーマンであれば衛星役で動き回る平松についていく人が誰もおらず、ゾーンにしては野田にも平松にもスペースを与えすぎていたので、失点を早急に減らすのであればここは要改善。

さらに右サイドは藤谷がサイドで人に寄せる意識が強くなっており、個人としての課題はかなり改善された一方で、「そこでできたスペースを埋める人がいない」というチーム全体の欠陥が表面化したのが、このタイミングで右での欠陥が生まれている要因にもなってるかもしれない。

CBにしても「徹底的にFWに寄せさせ、潰してもらう」のか、「ボランチやSHがしっかりとスペースを埋めて、野田の振り向きざまのシュート、平松へのパスの選択肢を与えないようなポジションを取るようにする」のか……。野澤・藤谷・安永と右はどちらかというと"個人戦術に頼った守備は得意としていない"選手の並びになってるので一度チームとして整理が必要だろう。

・エンタメ性溢れる魅惑のロングスロー

同点に追いつかれ、ますます琉球・山雅ともに動きが激しくなる。
67分には左SHの清武に代えて中野を投入すると、CBが2人とも攻め上がっていたことでできたスペースを中野が独走してシュート。

"中野のファーストタッチが足元に入りすぎたこと"と"菊井の全力の戻り"によって、ギリギリで村山が防ぐことができたが、山雅からするとあわや逆転弾の大ピンチだった。

この試合では前半からリード時・同点時問わず、何度かロングスローを行ったが、シュートに繋がることもあれば、ロストして大きな跳ね返りを喰らうリスクも高いという長短がともに出た試合となった(長くなるので細かくはこちらで⇩)。

この試合に関して言えば山雅の勝ち越し弾を生んだのもこのロングスローなので、結果的を見ると最後の最後で収支がプラスに振れた。

村越が放ち、常田がバックヘッドで逸らしたボールはGKがギリギリ触れない絶好のコースに飛び、菊井が身体ごと押し込むとこれがこのまま無人のゴールへイン。

そこに至る常田をフリーにするための中の動きはデザインされた見事なものだったが、やはり最後はDFより一歩前に出て飛び込んだ菊井の執念が上回った形。山雅サポーターとしては大好物の熱いゴールを見せてくれた。

この得点が決勝点となり、琉球相手に「6度目の正直」でリーグ戦初勝利を挙げることに成功。試合終了の笛とともに倒れ込んだ菊井の姿からもこの勝利への思いが伝わってきた。

あと一歩で前半戦の再現を狙えそうだった琉球側からすると、流れを加速させようと76分に行った3枚替え(野田・平松・富所→阿部・サダムスレイ・岡澤)が好守で悪い方に転がったのが痛手だったように感じる。

これまでの山雅×琉球の相性が嘘のように、これまでとは違う姿、違う景色を見た一戦となった。

■天敵乗り越えまた天敵

こうして鹿児島戦以来の3試合ぶり、ホームでは八戸戦以来の勝利。

これまで苦手としていたような鹿児島・琉球に立て続けに勝利を挙げることができたところで、次節も昨年からの3試合で勝ちがない宮崎との対戦に。

宮崎は松田監督のもと、代名詞である4-4-2システムを突き詰め、順位こそ16位ながら失点数はリーグ7位の30失点。得点数はリーグ最少と攻撃面で物足りなさはあるものの、インターセプト数・タックル数など守備スタッツで光るものを見せている(football labより)。

特に前線からの献身的な守備とその後ろのブロックは強固で、常に2トップがボランチを消せるような距離感で守備を行っている。今節のようなボランチ経由のボールはなかなか簡単には通してもらえないだろう。

そうなると相手はサイド経由からの攻撃が多くなるが、クロスに対しても失点はわずか"5"。クロス対応を苦手とするJ3チームの中でもかなり少ないことが分かる。クロス数は1位、2位を常に争っている山雅がそこをどうどうこじ開けにいくかには注目したい。

また保持時は縦に早くやロングボールでシンプルに前線に放り込んでくることは少なく、ショートパスで繋いでくる傾向にある。特に前節の南野、石津の2トップは機動力や足元で受けてのプレーを得意とするのでその傾向はより顕著だった。Wボランチの下澤、江口ともにボール保持には長けたタイプなので、そこを自由にさせないかもポイントになりそう。

シーズンここまで連勝は6月の1度のみ。逆転昇格を目指すためにここからどれだけ連勝を積み上げられるか。良い流れを継続するために、琉球とはまた一味違った相手にうまくアジャストして勝ち点3を持ち帰りたい。

END


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