松本山雅の前半戦をデータで振り返る
■勝ち点比較
・リーグ首位
現在首位の大宮は
昨年19節終了時点で首位の愛媛は
⇨前半戦首位ターンの愛媛はそのまま首位を維持し、
21勝7敗10分け 勝ち点73(得失+11)。
昨年首位よりも勝ち点を+8稼いでいる大宮が堂々の首位ターン。愛媛は後半戦もほぼ同じペースを維持し、リードを守る形になったが、大宮がもしもこのペースを維持すると『他のチームは数字的に抜かすのは不可能な差』にすでになっている。
・昇格圏
現在2位の沼津は
昨年19節終了時点で2位の富山は
⇨前半戦は昇格圏だった富山だが、最終的には3位で
19勝14敗5分け 勝ち点62(得失+11)。
後半戦は26しか稼げずに首位に追いつくどころか逆に捲くられてしまう結果に。
昨年19節終了時点で3位だった鹿児島は
⇨2位富山と5差で折り返した鹿児島だが最終的には2位で
18勝12敗8分け 勝ち点62(得失+17)。
2位富山との5差を埋めたのに加え、劣っていた得失点差を+10積み上げたのが最終的には昇格の決め手に。負傷で出遅れていた米澤が後半戦だけで8G1Aと爆発したのが大きかった。
・松本山雅は・・・
自軍なので少し細かめに……
今年は現時点で順位は9位
昨年19節終了時点での順位は6位
⇨最終的には15勝14敗9分け 勝ち点54(得失+3)。
勝ち点は1、得失点差も2減っており、順位も3つ落とした。
首位との差も昨年の10差に対して19差と大きく離されており、優勝するのはほぼ奇跡レベルと言っていい。
一方、2位との差は昨年8差が今年は4差のみ。
今年からPOもあるので(勝ち点差からすると)現時点での昇格可能性は昨年の現時点より残していると言える。
■得失点比較
続いて山雅の各スタッツを見ていく。
昨年1年のデータに対して、今年はまだ半年なのでその点はご容赦を……
・得点数
昨年前半戦はリーグ1位の得点数を誇り、エース・小松蓮が13点で前半戦のうちに2桁を達成。菊井が4得点、村越が3得点と続いた結果、今年を上回る33点を前半戦で記録するも、後半戦は全体で18点(小松も6点)と明らかに伸び悩み、リーグ7位まで後退。
今年と比較すると『昨年前半戦よりもやや減った』という見方もできれば『後半戦でしぼんだ得点数を再び取り戻した』という見方もできそう。
得点者ではトップの浅川が8点でトップ。小松には及ばない(とはいえ小松18試合に対して浅川は13試合のみ)が、樋口が5点、村越が4点、山口が3点と昨年よりは満遍なく得点が取れているのは特徴的。シュート決定率も高い。
後半戦は昨年の二の舞になることなく、このペースを伸ばすことはできるか。
・アシスト数
アシスト数は昨年よりも増加傾向。
個人で見るとトップの菊井は昨年よりも少なくなっているものの、SB陣が昨年の5アシスト超えの7アシストを前半戦だけで記録。安藤や山本康ら新加入組も3位に食い込めているなど貢献。
昨年は小松・菊井の関係性が多かった中で様々なバリエーションが増えているのは目指すサッカーを考えると明るいトピックス。
・失点数
失点数は昨年の前半戦と同様の26失点。
昨年と比較すると失点数のペースは上がっている(※ただいつかの6失点を半分にでも減らせていれば昨年以下のペースになるが笑)
ただ昨年はここから前半戦の26失点を後半戦で21失点に減らしている。
得点も激減してるので一概に評価できないところはあるが、昨年同様に失点を減らすことも注力しなければならない。
・ゴール期待値
ゴール期待値は昨年の55.0を上回るペースの27.8を上回るペースでここまでリーグ1位。『ゴールの確率を高める』という点では昨年同様、それ以上の結果が出ている。ちなみに22年の期待値は43.0【リーグ9位】なので、J3初年度から比べても大幅に増えている。
裏を返すとそれに伴うだけの得点は挙げられていないので後半戦はどれだけそのチャンスを生かせるか。
・非ゴール期待値
非ゴール期待値は昨年の44.5から約4点減の20.1でリーグ4位。『非ゴールの確率を減らす』という点ではこちらも悪くない数字は出ている。ただし、22年の非期待値は37.0【リーグ2位】でJ3初年度よりも決定的なチャンスは作られやすくなっているというデータも。
昨年から非期待値は改善されつつあるので実際の失点数もそこまで落とし、欲を言えば22年の数字に近づけたい。
・得点パターン
得点パターンでは
クロスからの得点は減った一方で、スルーパスや30m未満のパスからの得点は大幅に増加。地上戦での得点が増えたことが分かる。
・失点パターン
失点パターンでは
近年泣き所になっていたクロスからの失点は減らせた一方で、パスからの失点が増加傾向。短いパスやDFの数的不利から崩されるケースがやや多い印象がある。
■保持(攻撃)スタッツ比較
・シュート関連
1試合あたりの平均シュート数は昨年よりもやや減少傾向になった一方で、枠内率は上昇傾向。
昨年はシュート数自体は多い一方で小松が無理やり打つようなシーンも多く、決定率はイマイチだったが、今年は決定率が大幅に上昇。先ほどの期待値に加えて『可能性のあるシュートも打てている』と言える。
リーグ全体で見ると昨年は今治と鹿児島がシュート数・枠内数で競っていたが、今年は対抗馬が少なく山雅が筆頭に。さらに、上位陣のシュート数が減ったのに対して、決定率では昨年の首位・富山を超えるチームが4チーム(大宮・長野・金沢・岐阜)もおり、昨年と比べてシュート数よりも決定率を重視する傾向はリーグ全体にありそう。
特に首位・大宮はシュート数はリーグ9位(12.9本)ながら決定率は15.1%。昨年1位の富山(12.2%)と比べても3%近く離しており、驚異のコスパの良さを見せている。
・パス数/保持
昨年より保持率はやや減少したが、パス数は20本ほど上昇。自分たちが保持している時間に対してのパス数の割合も増えている。
要因は一概には言えないが、選手個々の平均パス数を見ると
常田、野々村の平均パス数は減っている一方で、高橋、山本、馬渡ら新加入のベテラン勢が揃ってベスト5に。特に出場時間が長い中で平均パス数で2位に喰い込んでいる山本康の影響は色濃く出ていそう。
・クロス
平均クロス数は約2本減少してリーグ5位。本数はやや減。
クロス数146本でリーグ6位のクロス数を記録していた下川の移籍の影響はあるか。個人の方でもクロス数の減少は見られる。
今年は現時点での1位は馬渡で平均4.5本、総数58本でもトップに立つ(総数では離脱が痛手か)。昨年はクロス数上位は左に偏っていたが、左右のバランスが昨年よりも取れているのは特徴的。
・スルーパス
平均スルーパス数は約2本増でリーグ6位。
成功率も上昇しており、量・質ともに向上したことに。
トップの菊井は昨年はリーグ3位のスルーパスを記録し、今年も同様にリーグ3位タイにつける。
その後は昨年はSBの下川、CFの小松と続いていたが、2列目やCFなど様々なポジションで起用される安藤、そしてわずか8先発ながら山口ら中盤の選手がランクイン。特に安藤は昨年の菊井に近いペースでスルーパスを供給しており、全体の底上げにも繋がっている。
・ドリブル
※守備側プレーヤーと対峙し、その選手を抜こうとする、横にかわしてシュートを打とうとするなどの仕掛けるプレー
昨年は平均ドリブル数は中位ながら成功率はリーグ1位。個の力で突破できていたことが分かる。今年は数も成功率もダウンしている。
今年は昨年とは違ってSBが出場時間を分け合っているので総数では一概には言えない部分もあるが、平均ドリブル数・成功率ともに高かった下川の移籍は数字の面では大きい。藤谷の出場時間減も影響してそう。
今年は回数・成功率ともに村越は高い数値を出している。
■非保持(守備)スタッツ比較
・クリーンシート数
クリーンシート数では昨年は14回に対して今年は年10回ペースで大きく減っている。ただ勝ち点的には昨年と今年で1差なので、勝ちも負けも撃ち合いが多くなっている模様。
リーグ全体での1位はFC大阪で、19試合中10試合がクリーンシートという驚異的な記録。昨年1位も大阪だったが16試合だったのでこれを超えるペースで無失点試合を積み上げている。
・クリア数
意外にも昨年よりもクリア数は増加。クリア"率"ではないので単純には言えないが、多少割り切ってのクリアは見られる?
・インターセプト
※相手のパスに対して能動的に動いてそのパスをカットし、自ら保持もしくは味方につなげたプレー総数。
1試合平均のインターセプト数はほぼ同じ。
昨年は1試合の平均数・総数ともにパウリーニョがチーム1位(平均0.4本)だったが、今年は米原がチーム1位(平均0.4本)。
・タックル
※相手プレーヤーがコントロールしているボールを、身体あるいはボールへの接触によって、足下から離すプレー総数
タックルはリーグでも下位の方だったが今年はさらに減少。成功率も下がっている。
ちなみに22年のタックル数は19.4本(リーグ5位)。保持時間が長くなるとタックルの機会も減るのでタックル数はスタイル転換の影響は出てそう。
個人で見ると今年は山本康がトップ。1試合平均タックルでは宮部が1位(1.9回)(60.0%)。昨年から増加した2位の常田やSB陣が奮闘している。
一方、昨年トップの野々村や2位の菊井が圏外に(野々村は離脱期間もあったが1試合平均でも1.1回と減っている)。また昨年1試合平均で2位の宮部を大きく上回るタックル率を誇っていたパウリーニョの引退は中盤のタックル数、高い成功率×数でスタッツを引き上げていた野々村の離脱(タックル自体も不調)は影響がありそう。
・空中戦
※浮いているボールに対し、両チームの選手が空中で競り合うプレー。競り合いで先にボールに触った選手を勝利としてカウント
空中戦勝利数はリーグ4位→13位から大幅ダウン、空中戦の割合も減る。
勝率は5%ほど下がったものの、リーグ1位は維持しており、要所要所ではしっかりと勝てていることが分かる。
空中戦勝利数の減少は昨年1位の小松連の移籍が影響大。昨年空中戦勝率1位(83.3%)の住田の出場機会減少も勝率減には繋がっていそう。
全体の勝率は下がっているものの、野々村・常田・米原はともに勝率は上がっているのでそれほど空中戦が弱点になっていないのは後方選手の奮闘が大きい。樋口の空中戦の機会が多いのは攻撃時やセットプレーの空中戦が多いのも影響していそう。
・ファール数
反則はやや増だが、リーグ全体では2年連続で最小に近い。22年は11.0回(13位タイ)だったことを考えると反則は少なくなっている。
・警告/退場数
警告・退場ともにほぼ変わらず。リーグ全体を見ても2年連続で少なめ。
ただし、個人で見ると昨年1位、2位の菊井・安永の警告数は激減。特に菊井はここまで有言実行の警告1枚と明らかに変化が見られる。さらにCB陣もほとんどが1枚ずつとかなり優秀な数値を出している。
その分、警告2枚組は多く、これから次第では出場停止のリスクは昨年より高い。ポジション別ではサイドプレイヤーが多く貰っているのが特徴的だが、昨年のSB陣が下川・藤谷で対人に特化していたのはあるかもしれない。
■まとめ
・昨年とほぼ同ペース
・ただし昨年現時点と比べて1位との差は大きく絶望的。2位以内の差は昨年よりも小さく、POを差し引いても昇格の望みはあり。
・得点数/アシスト数は増加
・内訳でも小松・菊井に依存していたところから分散傾向
・得点数は小松に及ばないものの、浅川が決定率では上回る
・クロス主体だったところからパスでの得点増加
・失点/クリーンシート数は悪化気味
・クロスからの失点は減。代わりにパスでの失点増。
・パスのスタッツが全体的に向上
・ベテラン組(特に山本康)が特に影響
・下川の移籍や藤谷の出場機会減でクロスやドリブル数は減少
・しかし、質や数字ではSB陣が昨年超えの数値と奮闘
・空中戦減は小松の移籍が影響
・警告数・ファールは昨年に続いて少ない。ただ個人の改善は見られる。
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