逆噴射小説大賞2022 ハクゾースチャンピックアップ(1)

ごきげんよう!みなさん。
基本的に宣伝がクソ下手なわたくし。前回のライナーノーツの最後に、今書いている連載小説の宣伝すら忘れてました。まじでどうなのって声が止みません。すぐそういうの忘れちゃう。
世の中のものは「よい」というだけではなかなか読まれません。
やはり、膨大な作品の海からすくいあげ、触れるにあたって「よいものだよ」という誰かの意見というのは強い影響力を持ちます。
ほんとうであれば、良いものを自分で探すのがいいんでしょうけど、まずはポータル、入り口の整備をしても誰も損しないものね。

あ、これはあれですよ、わたくしの書いている連載小説「ハニカムウォーカー、また夜を往く」という大変軽やかなファンタジーパルプ小説もぜひ立ち読みして、よかったらその宣伝もしてくださいよ、という見えない圧力ですからね。承知してくださいね。
というわけで宣伝リハビリを兼ねてピックアップ行為、わたくしもやってみます。まだ全部読めてないので、時間が許せばパート2もするつもりです。

つらつら読んで、気になったものをちまちまツイートしたもののまとめです。こちらから今回は、とあるテーマでピックアップしていきます。

「すごくおもしろいのに一次選考で落ちそう ピックアップ」

うわあ、って顔したでしょ。
ちがうんだよ、これdisじゃないんです。これ、個人的に考えている逆噴射小説大賞のシステムなんですけど、1次選考っていうのは、機械的に「レギュレーションを満たしているか」という選考をしているんじゃないかと思うんですよね。そのうえで、面白さで二次選考をする。一次・二次が同時に行われるのはそういう意味じゃないかと思うんです。

ではどのレギュレーションかっていうと

「この続きを読みたいと思わせる、最もエキサイティングなパルプ小説の冒頭800文字」

https://diehardtales.com/n/nd3ac9e02b773

この部分ですね。
もっとも正確にはどこにも言及されてませんが、「この続きを読みたい」というのに必要な要素というのは非常に限られてきます。
800字の中で綺麗にまとまってオチまでしっかりついてしまった作品、ひと段落してしまった作品というのは、いくら面白くてもそこで生まれるのは「この作者の作品を読みたい」であって、「この続きを読みたい」ではないんですよね。
同じように、界隈でいう「依頼エンド(主人公が探偵と出会って「ある事件の調査(具体的なことを言わない)を依頼したいんです」で終わるやつ)」がなぜダメかというと、その時点では「続きを読みたいかどうかをまだ判断できない」んですね。
普通の賞レースと違うとこは「そこ」なんじゃないかと思ってます。

つまり、わたしがここでピックアップする作品は、ダメな作品、惜しい作品というわけではなく、単純にレギュレーションから漏れてしまったのではないか、という作品になります。
いいですか。諸兄、これは勲章です。
あ、言いすぎました。そんな大層なものではありませんが、一次・二次選考の発表から漏れて、「ダメだったかあ!」と肩を落とすのではなく、レギュレーション漏れだったかあ!と思って次回、がんばってみてくださいという気持ちを込めてます。
ここで紹介した作品が二次選考を通っていたとしたら、レギュレーションの不安を「面白さ」がぶっ飛ばしたということなので、大賞獲ると思います。
じゃあ、順番に行きます。

こちらは、シンプルに設定が好みです。冒頭の台詞に始まり、端々にイメージが膨らむ仕掛けが為されているところが良いと思います。マイナス点としては、火星人が自らを「火星人」と呼ぶところと、「具体的な未解決」を残さず最後、一息をついてしまっているところ。
あとひとつ「何か」が欲しかったです。

こちらもギャグになりそうな設定と問題を、きわめて真面目に、へらへらせずに書いているところがすごくいいです。広がりの余地もすごくあるし、続きを書いてほしい、と強く思うのですが残念ながら「何の事件も起きていない」んですよね。
800字で書ききれない具体的な「広がり」を描いていたら変わったと思います。

急に去年の自作をぶち込みますが、これ、自分でいうのもアレだけど、相当面白いんですよ。ただ、今自分がやってる視点で見ると「何も起きてない」んですよね。怪物が出てきそう、というだけであって、未解決のものが残ってない。キャラクターだけ。
ちなみにこれも前回、二次選考にすら残ってません。なんかほら、レギュレーションでの一次選考足切り、信憑性でてきたでしょ!

これはいわゆる「インタビュー」の形式の中でもとても完成度が高かった作。語り口も、徐々に解像度が上がってくる構成もすごく技巧的。
残念なのは、刑事さんがそんな目に遭った原因である「奴」について、もう一歩迫っている部分が弱いこと。逆に言うと難点はそれだけの気がします。その正体について残る強い不可解や、何らかのワンダー。もう一個あるとよかったと思います。

これは審議です。
ものすごく面白いせいで、わたしの逆贔屓の目が向いていて「何も起きていない」にカウントしてしまっている可能性があります。ずっと貫いて横たわる「不可解」の原因を知りたい、という欲求と、この直後に「カッコいいオープニングのロックンロール」で映画が始まる予感がすごい。
これはちゃんとフックがあるでしょというカウントで一次選考、通るかもしれません。

これは断言します。めちゃめちゃ面白いし続きは絶対読みたいけど一次のレギュレーションで落ちるんじゃないかしら。去年のわたくしと同じ匂いがする。物語が一旦落ち着いてしまっていて「続きを読まないと分からない謎」が薄い。
不可解があとひとつ、物語の中に落ちていたら完全だったと思います。ドライブ感は満点。

天才。
同じくドライブ感とキャラ立ちが満点。すごく続き読みたい。ただ、これに関しては最後、急に出て来た「チュパカブラ」がだいぶ強くて、なんかの間違いで一次を通過する可能性があると思ってます。
切実に残ってほしい。

今のところの一押し。
明らかに取ってつけたようなラストの異常なドライブ。しかしライナーノーツを読むと逆で「それまで」の方が虚無から湧いているのだとか。正気か。この不協和は確かにマイナスポイントなのですが、この二つを「きちんと繋ぐ」ことさえできればこれは大化けしたのではないでしょうか。
タイトルが「ドラゴンズ ビデ」とかだと、怒られ枠でのダブル受賞もあったと思います。

これは今のところ、今回もっとも「800字でしっかりまとまってしまっていた」だと思います。すごく上手。
着想が面白い上にしっかり使い切っているので、むしろそこは雑に使い捨ててしまって、殺した相手と二度目に戦う部分をメインに据えて、あとひとつなんかワンダーを付け加えたらメチャクチャ強い作になったのでは?と思ってます。

とりあえず今日はご飯なのでここまで。
気力が続けばまた続きやります。

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