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シード期のスタートアップにありがちな「チーム作りのしくじりポイント」を学ぶ

スタートアップの創業期において、チームビルディングは技術やビジネスモデルと並び、最も重要な要素です。中にはプロダクトに投資をしているのではなく、チームに投資していると明言する投資家もいます。

また、スタートアップにとってチームの重要性を示すデータがあります。米調査会社のCB Insightsが成功に至らなかった101社のスタートアップの原因を調査したところ、以下のような結果になったのです。

1位:市場のニーズがなかった(42%)
2位:資金が底をつきた(29%)
3位:チームが適切ではなかった(23%)
4位:競合他社に負けた(19%)
5位:値付けとコストの問題(18%)

つまり、5社のうち1社はチームビルディングが失敗につながっているというわけです。

しかし、これらの失敗要因を回避する方法に模範解答はありません。スタートアップが100社あれば100通りの解決方法があり、開発する製品や市場によって最適解は異なるのです。しかし、ダメな事例というのはハッキリしています。今回は過去さまざまなスタートアップを支援してきたHAX Tokyoのディレクター陣が過去の経験から見た「シード期のスタートアップにありがちなチーム作りのしくじりポイント」と、その回避策もあわせて紹介します。

1. CEOが自分自身の偏りに気付いていない

シード期の創業メンバーは基本的に兼務が当たり前です。とくにCEOは「なんでも屋」として、他の共同創業者やメンバーが開発や顧客開拓に専念できるよう、時にはバックオフィス業務を進んで引き受けることも重要です。

しかし、誰にも得手・不得手があるように、バックオフィス業務が得意ではないのに、取り組まなければいけないというケースもあるかと思います。最も避けなければならないのは、自社にとって重要ではない業務に時間を割きすぎることです。たとえば、展示会に行くための飛行機や新幹線、滞在先のホテルの手配、現地で使用する備品の手配に丸一日費やして達成感に浸っている−−。周りに仕事をカバーしてくれる人がいる大企業の組織ならいいかもしれませんが、時間に限りのあるスタートアップのCEOが1日かけるべきタスクではありません。苦手な業務は思い切ってリモート秘書サービスを使用したり、バックオフィス専門のアルバイトを雇用するなどして、アウトソースするようにしましょう。自分の得意・不得意や好き・嫌いを振り返った上で、各々が本来すべきこと、得意な領域にフルコミットできる環境づくりに専念することも時には重要です。

2. 自分の関心が低い仕事に対する対応が甘い

1の「自分の偏りに気づいていない」にもつながることですが、自分自身が苦手なことや、専門外の業務は他のメンバーに割り振る必要があります。その際、CEOがさまざまなタスクに追われて多忙を極める余り、専門外の業務やタスクに対して乱雑に丸投げしてしまったり、現状をよく知ろうとしない結果、情報共有ができておらず、チーム間に軋轢を生むというケースも度々あります。

一方で仕事を丸投げされた側も、自分に対するリスペクトが欠けていると感じると、モチベーションが沸かずに辞めてしまい、結果的に計画通り事業が進まず、チームの雰囲気も悪くなるという負のスパイラルに陥ってしまいます。
こうした状況にならないためにも、自分の不得意な部分をカバーするメンバーや、専門領域以外の業務を担うチームへのリスペクトは忘れずに、コミュニケーションは絶やさないことが重要です。

「自分はこの分野がわからないから、この仕事をあなたに頼みたい。ただ、全てを理解しているわけではないので、わからないことがあれば自分に教えて欲しい」と信頼と敬意のあるコミュニケーションが取れる創業者であれば、初期のつまずきもチームで回避できるでしょう。

3. 採用や人事を大雑把にやってしまう

創業期のスタートアップの採用で起きがちな採用のトラブルとして、エンジニアや知財など専門性の高い職種で採用する際、採用要件や採用後の評価項目を定めずに「なんとなく良さそうな人」を採用し、「どう評価していいかわからない」状態が続いた結果、お互いに信頼関係が築けず、チームにフィットしないまま社員が退職してしまうというケースがあります。

また、シード期であるにも関わらず、CxO(CTO,CFOなどの最高執行責任者)や部長職のチームが多いというのも問題です。CxOの役割は各部門の責任者ではなく、5年後の会社を見据えた判断ができる人材であるべきです。事業の進捗と伴って、自分たちよりも優秀な人材を採用し、マネジメントできる人間であるか。そして、彼らに対して数年先のビジョンを共有した上で、事業を成長に導ける人材であるかを検討した上で役職は決めるべきでしょう。

必要な場面で必要なメンバーを採用できなかったばかりに、急いで採用した。しかし、ミスマッチで社員が退職(もしくは解雇)したというケースも、スタートアップにありがちな事です。その際、労務面や雇用契約書の内容に不備があり、金銭トラブルに発展するケースもあります。こういった事態を避けるためにも、採用は計画立てて慎重に進めていくべきでしょうし、社員を増やす前には社労士や弁護士など、外部に相談できる機能を確保しておくことが重要です。

成功しているスタートアップほど、初期の採用には非常に慎重です。事業のスピードを落とさずに良いメンバーを採用したいのであれば、社員採用にこだわらずアウトソースを選ぶの一つの手段です。

特に財務や労務、法務は採用が後回しになりやすい職域です。資金調達の際には財務のエキスパートがチームにいるかによって、自社のバリュエーション(評価額)にも大きく影響します。また、労務や法務は社員の採用だけでなく、あるべき雇用形態の検討や契約書の作成に加え、外部の企業との契約書作成にも必要です。自分たちに必要な機能は何かを考えた上で、シード期は即戦力として信頼できる外部のプロフェッショナルを活用するようにしましょう。一方で、新しく入ったメンバーが会社の状況をよく理解し有意義なサポートができるように、迎え入れる側もコミュニケーションを日頃からよく取っていくことを心がけましょう

開発においても、経験豊富で優秀なエンジニアの採用に苦戦しているのであれば、社員で採用するよりも人件費が高くなる可能性がありますが、技術者派遣会社を使うのも有効です。その際はノウハウや知財などの技術資産は、アウトソース先企業との取引が終わっても自社に残せるよう契約書に盛り込み、ドキュメント化しておくことを忘れないでください。

特にハードウェアの事業は製造や品質管理など、ソフトウェアに比べてケアすべき要素が多い一方で、事業のステージや段階によって必要なメンバーも移り変わるのが特徴です。製品の開発段階であれば、筐体設計や回路設計などのエンジニアが、量産以降であれば生産管理やカスタマーサポート人材が重要になります。

事業に永続的に必要なコア人材はビジネスモデルや自社のステージによって異なります。闇雲にメンバーを増やしたり役職を設けず、採用は慎重に進めながら足りない機能は外部で補い、良いチームづくりにこだわりましょう。

監修:市村慶信
取材・文:越智岳人

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HAX Tokyoは、日本のシード・アーリーステージのハードウェアスタートアップの発掘と育成を目的とし、HAX深セン、HAXサンフランシスコと連携するプログラムです。

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