最近見た映画0127
最近見た映画。
ネタバレ含む。
AI崩壊
医療用に活用され、生活必需品になった近未来、突如として暴走するAIのぞみとそのAI製造者が紛争するドタバタコメディ。
ネットの海には辛口のレビューが目立つ。
「AIは暴走しないよ。するとしてもそれは悪意を持ったプログラムを忠実に実行するだけだよ」「技術が発達しても足を引っ張るのは人間だよ」という作品のテーマを正しく捉えれば、もっと違う評価になると思うんだがなぁ。
タイトルからして「崩壊」というのは違う気がする。かといって「暴走」と言われれば絶対に違うし。いっそのこと「疾走」とかの方がましだったのでは?
作中、警察側が犯人の疑いが高いAI製造者に対して法的にはまだ明るみになっていない捜査AI「百目」を稼働し、AI製造者を追い詰めていく。地域に設置されている監視カメラ映像から人相や歩き方、体格などをサンプリングして逃走経路なども計算していく。しかし製造者は捕まらない。
何故か?
捕まえに行くのが人間だから。
特殊部隊まで動員して製造者を追いかける。超小形ドローンを飛ばし、逃走経路を発見。その製造者にフラッシュライトを浴びせる。暗いと捕まえに行く人間が見にくいから。
結局、暴走したAIの真相は、製造者側の意図しないプログラムを後乗せで走らせた奴がいて、その結果が人類に仇なすようなをことをさせる内容だった。
そもそもとして「百目」は特定の人物を探索し、捜索することに長けたプログラムではあったが、そもそも犯人として断定した製造者自体、実は犯人に仕立て上げられただけのヤツなのよ。
そういった意味で、この映画は非常に示唆に富んでおり、時に皮肉にも感じられるようなメタファーに満ちていた。
女性総理大臣が常識的な判断を下す一方で、副総理が剥げた年老いた男で、倫理的にどうよみたいな法案をしつこく押し通そうとしているし、製造者の逃走を手助けしたのは、AIのぞみで医療の恩恵を受けた老人だったり、最後、異常プログラムを停止させる為に作ったコードをAIのぞみに読み込ませる為に、プロジェクターという旧世代デバイスを使ってみたり(しかもAI読み取り用のカメラには小さすぎて映らない!)。
お前らが思っているより進化の過程はゆっくりよ、未来なんてこんなもんさ。
という声が聞こえてくる。
車が空を飛ばない限り、驚くことはないのかな、人間。
オチも「えぇ愛やなぁ」だったし。
ANNA
クソみたいな人生を歩む女性が、クソからクソへと渡り歩いた先に、最もほしいのは「自由」であり、最後に信用したのは女だった。
私、パッケージ裏に書いてある説明文が90分経たないと達成しない映画なんてクソだと思う。
丁寧に丁寧に伏線を張っている部分もあれば、ことが起きてから「3ヶ月前」なんて言われてもなぁ、みたいな部分もあって微妙。佳作ではあるが傑作ではない。
最低な人生を送っていたアナがKGBの諜報員として生きる。磨耗する中で自分をこの道を提示してくれた男と寝るし、偽装としてやっているモデルの仕事仲間の女と恋仲になるし、実はCIAのダブルクロス(二重スパイ)をやらされるし。
上官の女性オルガは嫌味ったらしいし(ハニートラップにしか使えないじゃないと、面と向かって言う)。最高幹部(長官)のオッサンに「約束と違う、辞めさせて」って言ったら「死んだらね。今すぐ抜ける?」とか言われるし。
話の根本テーマは「女は強い」かしら。
作品を通して、女性上官のオルガだけがアナを対等に、一人の人間として扱っていた。厳しい言葉や任務を与えるにしても、それは諜報員としての扱いにほかならない。彼女のプライベートに過度に口出さず、CIAにほだされた瞬間を見逃さず、即処分でもよい場面を助け(もちろん、オルガの野望ありけり)、彼女が望むものを与えた。
男どもなんて、口先だけでは「君を助ける」だの「仲間として迎える」だの耳触りの良い言葉を吐いて、ちいとも約束を履行しない。
アナは最後にオルガに対して「誇り」という言葉を使う。
それこそ、オルガにとって揺るぎないものであり、その辺をきちんとアナは理解していたのだろう。「念の為」と言ってオルガ暗躍の証拠を用意しておいたのも、アナにとってオルガと対等であるために自分の価値、つまりオルガに育てられたという証を示したかったから、ともとれる。
銃と濡れ場のあるプラダを着た悪魔でした。
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