(ハワイレコード版)大江千里オリジナル・アルバムレビュー 1st『WAKU WAKU』
大江千里
『WAKU WAKU』
1983年5月21日発売
1. ワラビーぬぎすてて
2. 君はマドンナ
3. 瞳キラキラ
4. 裸足のマドモアゼル
5. ポパイ'S カレンダー
6. 海開き 山開き
7. 宵闇
8. 天気図
9. たそがれに背を向けて
10.ガールフレンド
配信・ダウンロード
2022年どうしたものか、突然の大江千里特集が始まりソニーが本腰を入れてキャリアをアーカイブし始めた。
大学生の頃から音楽が好きで、何より私とくれば大江千里が好きという事で通っていた(なんならラインのアイコンですら本人の写真を使ってる)
チラッと覗いてみたアルバムのレビューがさっぱりしてて、お茶漬けくらい喉越しが良かった。「読みやすいならいいじゃん!」と読者の皆様お思いでしょう...
しかし、ここは大江千里のギラついたメガネ男子感を語り継ぐ為に、鬱陶しいくらい油ぎったレビューを書いてみても良いんでないか?
と勝手に解釈して、1stアルバムwakuwakuでハワレコレビューの口火を切らせていただきます。
1983年、関西の大学生という事でデビューした大江千里。ライブにレコーディングと東京⇄関西を行ったり来たりする生活で当時日本一忙しい大学生のコピーがついていました。
何より、ソニー肝入りのSDシリーズで選抜された優等生ミュージシャンと言う事もあって、レーベルとしてもかなり金と力で物を言わせた雰囲気が節々に漂ってます。
1stアルバム制作以前から、大江千里は関西のライブハウスにてバンドのコンポーザーもしてました。
その時の形跡と見られる楽曲も見られるし、なんなら実際に演奏していた曲も含まれています。そこまで語っちゃう、自分の好き楽曲・好きポイントをピックアップしてご紹介します。
1.ワラビーぬぎすてて
大江千里ファンとしてはおなじみの楽曲。デビューシングルはこの曲をカットしてます。
このワラビーというのは、イギリスクラークス社のワラビーという靴のことを指しています。余談ですが、今でこそ全国区のセレクトショップBshop(ビショップ)が、80年代神戸の小さなお店だったころにクラークスをめちゃ押ししていたという話を当時を知る人から聞きました。(眉唾ですが)
何より大江千里は関学の学生。当然三ノ宮・元町も出入りしていたでしょうから、おしゃれ知識は割とこの辺から醸成されているんではと思います。
ちなみにワラビー、特徴的なのがラバーソールです。このソールが素足の様な歩き易さを象徴しているのですが、夏に履くとアスファルトの暑さでベタベタになるんです。つまり、そんなシーズンにはワラビーは履かずに本当の素足で夏を楽しもうぜ!という思いが込められているのでしょう!脱ぎ捨てる感覚が知りたいので、大学2年のころにワラビーを買ったのはここだけの話。
2.君はマドンナ
前述したデビュー前から演奏していた楽曲。トニオクレーガーでyoutubeに上がってます。音激悪なのでなんて歌ってるか正直わかりませんが、楽曲の構成はほぼ一緒です。
と考えるとデモの時点で結構完成度の高いアルバムになる予定だったのかな?
大江千里楽曲特有(と勝手に思ってます)の過去のダサい自分の行い、状況を脚色して描く歌詞がサビ前で結構ハマってると感じます。
間奏でバンドサウンドでサンプリング風味のフレーズが入り乱れるのが好きポイントです。
4.裸足のマドモアゼル
マドモアゼル、突然のフランス語...と思いましたがもともと洋楽志向の強い大江千里、しかも教養もありますからカタカナ語が出てきても全部オッケーです!
メロウなシンセピアノから聞こえるイントロが時代を思い起こさせる一曲です。
全面的にサックスがフィーチャーされていて、夏の暑い日に聞くと海のまちのポップスというのを感じます。あとこの曲だけ4分半もあるのに、あっという間に終わるのが結構驚きます。学生の夏休みみたいなもんですね。そんな曲の雰囲気が好きです。
サビで盛り上げすぎないメロディーと眺めることしかできない去り行く人の後ろ姿に、ダサい俺感が存分に出てきますね。思わずやり残したことをたくさん思い出してしまう一曲。
7.宵闇
「イントロダサっ」と聞き始めた当初は思ってましたが、静かに波を眺めるようなピアノとダンスホールのワンシーンに合わせたようなベースのビートが、映画のワンシーンを切り取った曲に仕上がってます。この曲から特にハコバン感が強く感じられるのですが、恐らくバンド時代に既に仕上がっていた曲なのかなと。それにしてはバランスが絶妙すぎますが。というよりさすが大村憲司。かなりメロウな感じなのにギターが強い曲が成立するのがすごい。
余談ですが、宵闇のラジオverというのがあってそれはめちゃくちゃベースが強調されています。あと、ダサいイントロはスラップをバリバリに聞かせたベースにすり替えられてます。NHKラジオ大江千里で調べてみてください。
この曲もやたら陰りのある雰囲気が好きです。
全体を通して、ピアノで作った曲をバンドでやるときの相性を考えたアレンジに見えます。大江千里自身がアウトプットすることが上手くても、まとめあげる力がこの時は働かなかったのかな?というのも感じます。キャリアのある大人たちに頼ることになると、自分を出すことが難しいのか、あるいは緊張していたのか笑
ハタチそこそこの年齢で業界を代表するミュージシャンと仕事するってだけで最初は緊張しますよね。ストレスもそれなりにあったろうに。
ただ、その辺は大人びていた大江千里、結構自分と向き合ってアルバムをつくっていたようです。(いつぞやかの月刊カドカワに書いてました)
そして、瞬間瞬間を切り取った歌詞がすごく目立ちます。ちょっと広告的な歌詞も見られますが、どれもが学生の頃のなしえなかったことや大事にしてたい想いとか忘れえぬレガシーを載せているのでしょう。私としては大江千里の卒業制作と勝手に解釈しております。
ちなみに、ここから名前が全国区になって、みんなの千里君になるまでは少し時間がかかります。この間に様々なイベントを企画していたりしてますが、それはまたの機会にご紹介します。
(有山多聞)
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