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子供に伝えたい「大人になって直面するお金の話」 9~Social Security~
今回は、「Social Security」についてです。アメリカの公的年金制度で、リタイア後の生活を支えるための重要な収入源となります。働いている間に給与税(FICA税)を支払うことで、一定の条件を満たせば将来給付を受けることができます。イメージは日本の国民年金のようなものです。※正確に言うとSocial Securityと国民年金は異なります。
アメリカで仕事をする場合、このSocial Securityについてきちんと理解しておく必要があります。
「Social Securityの概要」
対象者:アメリカで働くすべての労働者(市民、永住者、合法労働者)
強制加入:雇用を開始した時点で自動的に適用
運営主体:アメリカ社会保障庁(SSA)
財源:労働者と雇用主が給与から拠出する税
保険料の計算:給与の6.2%(雇用者が同額負担)
免除規定:所得が一定以下の自営業者、学生などが免除される場合あり
老齢年金(定年年金):フルリタイアメント年齢(66〜67歳)で給付。金額は収入に基づく。
障害年金:労働できない障害を負った場合に給付(働いた期間に応じる)
遺族年金:死亡した労働者の家族に給付
「受給資格」
Social Securityの給付を受けるには、「クレジット」を取得する必要があります。これは就労記録を示す指標で、一定の収入を得ることで獲得できます。給付の内容によって必要なクレジット数が異なります。
必要なクレジット数
老齢年金:40クレジット(約10年間の就労)
障害年金:年齢によって20~40クレジット
遺族年金:亡くなった労働者のクレジット数による
クレジットの獲得方法
毎年の収入に応じて最大4クレジット獲得可能です。2024年の場合、$1,730の収入ごとに1クレジット獲得(年収$6,920以上で4クレジット)できます。
自営業者もSelf-Employment税を納めることでクレジットを獲得可能です。
クレジットの重要なポイント
一度取得したクレジットは消えないため、途中で仕事を辞めてもリセットされないです。ただし、収入が一定額に達しないとクレジットは得られないです。アメリカで働いた年数が足りない場合、ソーシャルセキュリティの年金を受け取れないですが、日本での就労がある場合、米国との社会保障協定(Totalization Agreement)に基づいて、クレジットを合算できることもあります。
「老齢年金(定年年金)」
受給開始年齢
Social Securityの「老齢年金」の給付は、以下の3つのタイミングで受給を開始できます。
62歳(早期受給):最も早く受け取れますが、最大30%減額されるます。
フルリタイアメント年齢:生まれた年によって異なりますが66歳から67歳。満額需給できます。1960年以降に生まれた人は全員67歳が満額受給できる年齢です。
70歳(繰下げ受給):70歳になるまで毎年8%ずつ増額されます。70歳以降は増額されません。
受給要件
最低40クレジット(約10年間の就労)が必要です。クレジットは累積されるため、連続した10年間の就労は不要です。クレジットが40未満の場合、老齢年金は受給不可になります。
受給額
受給額は、生涯の平均給与(最高35年間)を基に計算されます。最も収入の高かった35年間の平均給与を算出して一定の計算式により、給付額が決定されます。(低所得者ほど給付割合が高いです)。
また、インフレ調整(COLA)により、毎年増額されます。
2024年の最大給付額(FRA時受給):$3,822/月(約55.6万円)
70歳まで繰り下げると最大 $4,731/月です。
「障害年金」
受給開始年齢
年齢制限はないです。若くても受給可能です。障害が発生し、一定期間働けなくなった場合に給付されます。
受給要件
十分なソーシャルセキュリティクレジットを持っていることが条件です。年齢によってこの必要なクレジット数が異なります。(通常は過去10年間のうち5年間就労していることが基準です)。
SSA(社会保障庁)が定める障害の定義は、「長期(12か月以上)または致命的な障害であること。」、「仕事を継続できない状態であること。」です。
給付には試用期間(Waiting Period)があり、通常は障害が確定してから5か月後に給付開始されます。
給付額
受給額は、障害を持つ前の平均収入を基に計算されます。2024年の平均の給付額は毎月約$1,537でした。2024年時点では、最大毎月約$3,822の給付でした。
「遺族年金」
被保険者が死亡した場合、配偶者や子供などの遺族に年金が支給されます。
受給開始年齢
対象者によって異なります。
配偶者: 60歳(早期受給) 減額支給。フルリタイアメント年齢であれば、 満額受給可能です。50歳以上で障害がある場合、早期受給可能です。
未成年の子供(18歳未満) :18歳まで支給。就学中なら19歳まで受給可能です。
障害を持つ成人の子供:年齢制限なし。もし、22歳前に障害を負った場合、終身受給可能です。
親:62歳以上。亡くなった子供の扶養を受けていた場合に支給されます。
給付額
亡くなった人の年金額の50%~100%を受給することができます。60歳で早期受給すると減額されますが、フルリタイアメント年齢であれば、満額受給可能です。
扶養されていた子供や障害者の子供は一定額を受給することができます。
子供に伝えたいこと
今回、子供に伝えたいことは次の3つです。
1.アメリカで仕事始めると給与の6.2%をSocial Securityに拠出しなければならないこと。
2.これは自分の老後や、障害を持った時、あるいは家族を守るために必要なものであること。
3.受給には10年(40クレジット)以上働く必要があり、給付額は収入によって異なること。
最後に
Gross Incomeからいろいろ引かれてしまう項目の一つで、給与明細を見るたびに、なんでこんなに引かれるのか、嘆いてしまうときもありますが、自分が働けなくなった時に、経済的に助けてくれるものの一つです。そのため、快く払うように心がけています。
次回は、「退職金制度(Employer-Sponsored Retirement Plans)」について投稿したいと思います。