ハワイの譲渡証書の種類について。。。書いてみようと思います。
ハワイの不動産の名義変更をする際、必要になるのが譲渡証書(Deed)です。
この譲渡証書(Deed)は売買の際、売主から買主へ名義を移すための「道具」としての書類になります。
売主と買主が当事者本人であることを確認することが非常に重要で、売主と買主本人が直筆でサインをしたことを証明するため、公証手続きが必要になります。
譲渡証書には、売主、買主の名前、名義の取り方が記載される他、添付書類(Exhibit A)として該当不動産の法的記述と該当不動産に係る地役権やその他の権利なども記載されます。
この譲渡証書の一部として必要なExhibit Aの内容は、前述のタイトルレポートから抽出されます。売主、買主が個人で、それぞれ婚姻している場合は配偶者の名前の記載も必要です。これは同一同名の人物がいた場合に混乱を避けるためです。
この譲渡証書ですが、色々な種類があります。大きく分けて次のタイプに分けられます。
Warranty Deed(ワランティ・ディード)
たくさん種類がある譲渡証書の中で、一番「安心」なのはこのワランティ・ディードと呼ばれる譲渡証書で、ほとんどの場合はこのタイプになります。
このワランティ・ディードでは、譲渡する者(つまり売主)に対する義務や規制がたくさんつけられており、売主は該当不動産に「隠れた不備」が全くない状態で譲渡することを宣誓するもので、さらに売主は「永久的」に該当不動産を「保証」し、万が一問題が見つかった場合は、それを「ディフェンドする」、つまり権利を守るというものです。
非常に専門的になりますが、譲渡証書に “Grantor will Warrant and Defend”という文言が書いている場合は、このワランティ・ディードとなります。コンドミニアムの売買で使われる Apartment Deed もこの種類になります。
売主には、売却してからも「永久」に「隠れた不備」がない状態を保証しなければならないので、よく考えると非常に恐ろしい譲渡証書です。
「タイトル保険」が存在する理由もここにあります。「タイトル保険」をかけていないと、とんでもないことになりかねません。
件数としては少ないですが、「タイトル保険」をかけていなかったために、ワランティ・ディードで譲渡した不動産に隠れた問題が見つかったときに、非常に痛い目に遭うケースがあります。
下記は、実際にあったこわ〜いケースです。
シンガポールに住んでいるX夫妻(ミスターXとミセスX)が、ハワイにある不動産を売却し、日本人のYさんが現金でX夫妻の不動産を購入しました。
このYさんは、タイトル保険というシステムが日本になく、その保険がなんなのか、よくわからなかったこともあり、必要ないだろうと判断、タイトル保険の購入を拒否しました。タイトル保険は購入当時$800ほどしたので、その分節約しようと思ったのです。
その後、Yさんは、アメリカに住むZさんにこの不動産を売却しました。Zさんは不動産購入時にタイトル保険も購入しました。
しばらくして、シンガポールに住むX夫妻が離婚することになり、ミセスXが財産分与の計算をするために、財産を徹底的に洗い出したところ、夫婦名義で持っていたはずハワイの不動産が知らぬ間に他人名義になっていることを発見しました。
問いただすと、ミスターXは、自分の愛人に頼み、愛人がミセスXになりすまして、売却手続きをしていたことを白状しました。つまり詐欺行為です。その後、ミスターXは責任を問われ、シンガポールで実刑判決を受けました。
でもそこで話は終わりません。怒り狂ったミセスXは、現在の不動産のオーナーであるZさんに不動産の返却もしくは不動産の価値相当の金額の支払いを求めてきました。
Zさんは全く寝耳に水で、仕方ないのでタイトル会社に連絡、保険を使って揉め事を鎮めてもらうよう手配しました。
Zさんから連絡を受けたタイトル会社は、「はい、そうですか、では払います」というわけにはいきません。どこかその金額を徴収できる先をまず探します。
前のオーナーのYさんの記録を調べると、Yさんがタイトル保険をかけていないことが発覚。また、Yさんは、Zさんに、このワランティ・ディードで不動産を譲渡していることも突き止めました。
つまり、Zさんのタイトル保険会社は、Yさんに「隠れた不備」がない状態を保証しなければならない義務があるとし、Yさん個人に責任を追求したのです。
結局ミセスXが要求する金額を、Yさんが支払わなければならないことになりました。
当然のことながら、弁護士も関与したので、Yさんは、この弁護士代もまるまる支払うことになったそうです。
もしYさんがタイトル保険をかけていたなら、Yさんの保険会社がZさんの保険会社と相談、交渉した上で、この2社で然るべき金額を支払うことになり、Yさんは一銭も出さずに済んだはずです。
数年前に起こったこのケース。結局Yさんは合計6千万円ほどを支払う羽目になりました。
ここで注意していただきたいのは、ワランティ・ディードで譲渡した不動産については、売却したら売主は一切なんの関係もなくなるわけではない、ということです。
なので「タイトル保険」は必ずかけておきましょう。
Special or Limited Warranty Deed(スペシャル、またはリミテッド・ワランティ・ディード)
売主が全面的に保証を宣言するワランティ・ディードと違い、このディードでは、売主は単に該当不動産を「譲渡する権利を有する」と定義されます。
これは、基本的に、現在のオーナー(つまり売主)が所有していた期間のみ保証するもの、という意味合いの譲渡証書になり、主に銀行が差し押さえた物件などに使われます。
この場合は、状況が状況ですので、この種類の譲渡証書でしか譲渡しないような物件は要注意で、「タイトル保険」は絶対に必要です。
Quitclaim Deed(クイットクレーム・ディード)
このタイプの譲渡証書は、単に婚姻などによって名前を変更するなど、「簡単に」名義を変えるときや、何か不動産の権利に問題が見つかり、それを修正する場合などによく使われます。
購入しようとしている不動産の一番最近の譲渡がこのクイットクレーム・ディードの場合は、よくよく注意をしてタイトルレポートをチェックした方がいいでしょう。
その他、ローンを組む場合、融資をする銀行の担保権を設定するための譲渡証書(Mortgages, Mortgage Loan Notes, Release of Mortgage)、借地権付きの不動産の「住居」部分の譲渡に用いられる書類(Assignment of Lease)、不動産の所有者が亡くなったときに、前もって決めておいた相続人に権利を移すことのできる譲渡証書(TODD-Transfer on Death Deed)という譲渡証書もあります。
長くなりました。。。