仕事術をかんがえてみる
不動産エージェントをしていて一番こわいのは、訴えられること。不動産取引はうごくお金が大きいので、揉めることがよくあります。
エージェントとして指導をうける立場、エージェントの指導をする立場、両方の経験がある私。
不動産エージェントとしての「おすすめ仕事習慣」をご紹介します。
不動産エージェントにとってだけではなく、他の業種の仕事にも応用していただけるかと思います。
コミュニケーションの記録をつける。
面倒ですが、電話やライン、テキストなどの記録をつけておくのは必須です。電話、ライン、テキストでお伝えしたことで、重要なことはかならずメールでわかりやすくまとめて先方に送りましょう。メールであれば、送信先、送信した日時が記録されます。文書で記録を残しておくのは非常に重要です。
不動産取引で問題が発生した場合、通常、訴訟にもちこむ前に仲裁をたてて調停を試みることになっています。
この調停手続きには2種類あり、Mediation(メディエーション)という、拘束力のない仲裁方法と、Arbitration(アービトレーション)という、裁判判定に近い裁定をおこなう仲裁方法があります。
メディエーションだと、両者が歩み寄って、両者で解決をはかりますが、歩み寄って解決できない場合は、アービトレーションという、仲裁に入った第三者が決断を下す、という流れになります。
ここで仲裁に入る第三者は弁護士の資格を持っている必要はありません。はっきり言って、誰でもできるのです。
では、不動産取引でもめて、仲裁を立てる場合、その仲裁をしてくれる人はどんな人なのでしょう?
実際のところ、弁護士が多いのですが、実は退職した学校の先生も多いのです。時間があって正義感があるからでしょう。
そういう人たちが仲裁人として入る場合が多いので、書類や記録がきれいにファイルされていて、きちんと保管されている形だと、非常に好印象なわけです。それだけで有利なわけです。
でも、問題になった案件のファイルだけばっちりきれいに揃っていて、他のは全く記録がない、というのは逆効果です。
仲裁調停や裁定に入った場合、他の案件のファイルの提出も求められることがあり、そのエージェントの「仕事のやり方の習慣」というのがチェックされるからです。
また、文書化した保存記録が多いほど有利になります。
関連書類にはかならず目を通す。
不動産取引には膨大な情報が必要で、書類も膨大な量になります。
契約書、タイトル調査書(不動産の権利に関する調査書)、測量報告書やコンドミニアム関連書類、売主情報開示書、家屋点検調査報告書など種類も多く大変です。
エージェントとしては、全てに目を通し、理解しておかなければなりません。
エージェントの中には、営業に時間を取られ、書類は「大丈夫だろう」と詳細をチェックしない人も大勢います。
書類のチェックを怠ったり、クライアントへの報告を怠ったりして、後で問題点が見つかり、クライアントから苦情の申し立てがあった場合、大抵エージェントの落ち度となり、最悪の場合は多額の罰金を課された上にライセンスを失うことになります。
綿密なリサーチをおこなう。
物件の検索や調査を行うとき、また関連書類に目を通す中で、わからないことなどが出てきた時などは徹底的にリサーチをするようにしましょう。
リサーチをするときは、当たり前のことですが、確実な情報源に問い合わせをして確認をしましょう。
例えば校区。
MLSという不動産データベースには、色々な情報が載っていますが、この情報は一部をのぞき、ほとんどがマニュアルで入力されているため、間違った情報が載っていることも多いのです。
実際に訴訟までもつれ込んだ話ですが、このMLSのデータを見た買主が、子供を進学させたい公立学校の校区内にあることが気に入って、物件を購入したところ、MLSのデータが間違っていて、この購入した物件に住むと、子供が進学させたい公立学校に行けないことが判明しました。
この買主は、MLSに間違った情報を載せていた売主と売主側の不動産会社、不動産エージェントと、自分の側の不動産会社と不動産エージェントを全て訴えました。
そしてこの買主が勝ち、売主、売主側不動産業者、買主側不動産業者全て責任を追うことになりました。
当たり前ですが、特にクライアントが気にしていること、後々影響が及ぶと思われること、などについては綿密なリサーチを行い、確実な情報源から正しい情報を入手し、その情報を正しく伝え、記録を保管しておきましょう。
専門分野以外については、その分野の専門家を紹介する。
書類が膨大な量になるのをお伝えしましたが、例えばコンドミニアム関連書類など、エージェントが全てをチェックするのが物理的に難しい場合もあります。
また、各種報告書なども、細かな内容までエージェントがクライアントに説明する際、もしかしたら間違った説明をしてしまうかもしれません。
そういった場合は、クライアントに報告書を用意した専門家に直接説明をしてもらうか、弁護士やコンサルタントなどの第三者の専門家に内容のチェックを依頼してもらいましょう。
いわゆる「デューデリジェンス」専門家に情報や書類をチェックしてもらうわけです。
「その分野の専門家に内容のチェックを依頼してください」とクライアントに依頼することで、エージェントとして起こりうるリスクを軽減することができます。
聞かれる前に連絡する。
クライアントから「〜の件、どうなっていますか?」という連絡を受けてしまったら、エージェントとして仕事ができていない、という証拠です。
恥ずかしいことなんです。
クライアントが問い合わせをするということは、そこまで切羽詰まっているからです。
不安になって、イライラして、「どうなってますか?」と連絡してくるわけです。
クライアントから状況を聞かれる前に、まめに状況報告をしましょう。
一行でいいので、「この件についてはまだ〜から回答待ちです。いついつまでに回答がもらえる予定ですので、連絡が入りましたらすぐにご報告します」という感じで、連絡を入れておきましょう。
そうすると、クライアントも安心ですよね。
以上私が新人時代に叩き込まれたこと、またエージェントの指導に当たっていたときにエージェントに伝えていたことの代表的なことを綴ってみました。
こうやって書くと、自分のリマインドにもなりますね。