Farm to Bakery
著:御手洗ケール
カイムキのチーズケーキ専門店で働き始めて早7年。失業期間中に手伝いを頼まれて以来、メインジョブができた今でも週に2~3回のペースで出かけています。店番と平行して、バックでも色々な仕事があるのですが、その中のひとつが、リリコイの処理。リリコイはあっと言う間に売り切れる人気フレーバーですが、もちろんそのまま食べてもOK。他にもジャムやバター、パンケーキなどでもおなじみですよね。リリコイは、1年を通してハワイに欠かせないフルーツなのです。
先日、ワイアナエのファームより、今までに見たこともないほど美しいリリコイを頂きました。年中リリコイ探しに奔走(それほどでもないですが)していることを知るファームで働く方からの差し入れ。どんなにうれしかったことか!しかも、果実を見てさらに感動!こんなにつやつやして、ジューシーなリリコイには初めて出会ったような気がします。
作業的には、リリコイを半分にカットして、中身をスプーンですくい出し、さらに種を除いて果汁のみを取り出すためにストレイナーで漉すのですが、これが結構時間のかかる作業でして。。。せっかくのフルーツを無駄にできないので、種と果汁が分離するまで根気よく続けます。今回のMouna Farmのリリコイは、ジュースの量が半端なく、しかもひとつのはずれもなし。今までさまざまな場所から入手してきましたが、このリリコイがあまりに美しくて、思わず育てた方に「Thank you for the beautiful jewels」とテキストを打っていました。フルーツが宝石なんてすんなり思えるようになった自分に驚きながら、今でも宝石以上に美しいリリコイを思うたびににんまりとしてしまいます。
ベータカロテンが豊富で、そのままかりっとした種と一緒に食べると、甘酸っぱい初恋の味(表現が昭和ですみません・・・)がするリリコイですが、英語名はパッションフルーツ。初めてハワイで植えられたのが、マウイのリリコイと呼ばれる地域だったので、ハワイではこう呼ばれるそうですが、パッションフルーツが情熱のパッションではないことをご存知でしたか?実は私がこの事実を知ったのは数年前。トケイトウ科の独特の花の形がキリストの受難を象徴するということで、受難を指す言葉から来ているのです。そう、メル・ギブソンが監督し、キリストの最後の12時間を描いた映画の、あのパッションです。
この摩訶不思議な花のどこがキリストの受難なのかというと、『3裂した雄しべが三位一体、副冠がイバラの冠を表す。また、花柱を十字架、3つに分裂した雌しべは釘、副冠は茨の冠、5枚の花弁と5枚の萼片は10人の使徒、巻きひげはムチで葉は槍という説もあり』(ハワイ州観光局アロハプログラムより)ということで、改めて見ると、自然が作り出す造形美、そしてその中に特別な意味を見出す人間の想像力のすばらしさに感じ入ります。
愛情を注ぎ、丹精こめて育てられた美しいリリコイは、必ずベーカーが美味しいチーズケーキに焼き上げます。Mouna Farmは、オーナーがアーティストというユニークなオーガニック・ファームで、是非行ってみたいところ。いつかご紹介できれば、これ幸い。
Mouna Farm and Arts & Culture Village : https://www.facebook.com/FarmandArts/
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