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第2章 家事と主婦の誕生

Q「主婦とは何か」


イギリス 社会学者 アン・オークレー(Am Oakaley)
→主婦とは....
「召使以外の人間で、家庭の任務をほとんどに責任を持つ人間」
「家事を運営もしくは指揮する女、家庭の女主人、世帯主の妻」

・現代の主婦役割の特徴 四点
①もっぱら女に割り振られる   ②経済的依存
③労働として認知されていない  ④女にとって、それが主たる役割である
  ⇒家事「housework」とは何かということを知らないと定義の意味がわ
   からない
   ハウスワイフ=ハウスワークをする女


家事とはなんなのか?
  「主婦論争」:考える上での参考になるもの
     →高度経済成長期に主婦とは何かが問われたもの
◇出発点
 石垣綾子 「主婦という第二職業論」
主婦も職業婦人も含めた女性たち全体に奮起を促したいというものである。
それに対しての反論
 ・時間的拘束がきつい男性たちや職業婦人にはできない社会運動を担える


第一次主婦論争(1955~59年)
主婦なんて評価に値しないのか、それとも重要なのかをめぐって、今日に至るまで論点を出し尽くしたというもの
第二次主婦論争(1960~61年)
  「家事とは何か」により論点が絞られたもの、経済学的論争に発展、欧米の方が後発
  経済学的:家事とは
    家事は価値を生むのか?、有用なのか?=「家事は労働か」ということ
  基礎としてマルクス経済学的な労働概念が含まれるのである。
マルクス経済学
  「労働」における定義として、
     有用つまり役に立って価値を生む人間活動なのか
       価値=交換価値、売れる(市場に出してお金と交換できる)
   →家事には普通給料が払われない=価値を生まない
それに対して、マルクス主義フェミニスト
 「家事をやることによって生産しているものがある」と主張している
→家事は何を作っているのか.....価値を生むと言えるのか......
 A.夫と子供:労働力として売れる
   家事=労働力を、労働者を、人間を再生産している
お母さんが教育熱心になる=自分の労働の価値を高く評価されたい
→製品である子供が良い学校を出て、良い会社に就職しないといけない。抽象化に過ぎない
第三次主婦論争(1972年)

フランス マルクス主義フェミニスト 
     ー クリスティーヌ・デルフィー(Chritine Delphy) -
「家事労働の市場からの排除が、それが不払い労働であることの原因であって、結果ではない」
→家事だから払われないのではなく、市場から排除されていて払われないから家事なのだということ。あらゆる労働の中で市場化されていないものが家事と呼ばれているにすぎない。
→家事というのは要するに、支払われない労働以外の何者でもありません。
    「市場化されない労働」とも言えるのである。
市場とは
(市場つまりmarketという概念が出てこないと「家事とは何か」に答えられない)
⇒商品を売り買いする制度
  家事:古い労働、人間から誕生して以来ずっとあったもの
    ⇒家事という仕事は新しいものである!!
 市場が発達しなければその反対側である家事も区別のしようがないから
→近代社会になって市場化がかなり進んで「売れる仕事」「売れない仕事」とが明確に分けられるようにならなければ「これが家事だ」と指し示すことができないのである。


「近代を生きる女たち」

19世紀のドイツの家庭生活
 18c後半 市場を通じた商品や労働の調達と自家製が複雑に組み合わさっ
       た様子
       市場社会になって反対物として家事が成立(中産階級)
 19c後半 市場が進んでより、同じ中産階級でも買うものが増える
       労働者階級では?
       家族というものが成立していなかった
      中産階級の暮らしぶりを「いいものだ」と思うようになる
       労働者階級の女性(働いているのが当たり前)
 20c初頭 自分のアイデンティティは“主婦”とし家庭中心に暮らすようにな
       っていく
      労働運動からもの身を引いていくようになった。

日本で家事が成立し、主婦が誕生するのはいつのことなのか
 主婦が大衆化して多数派になるのはWWⅡ後の高度経済成長期であるが、
 中流のみに限った場合、WWⅠ後に主婦が誕生したと言えるのである。
おくさん=月給取りの妻
女は皆主婦になったというルーツはまさに大正時代にあるのである
WWⅠ後の好況期、産業化の急速な進展、大組織の管理的労働を担う「俸給生活者」
ホワイトカラーのサラリーマンが大量に生み出された。「新中間層」
  →職場と家庭の分離=公私の分離があって初めて妻は夫の留守を守る「おくさん」
戦前と戦後の違い(おくさんと主婦)
 ①家事使用人の有無 ②全体の中で占める割合という量的な問題
   戦後の主婦は圧倒的な多数派
  戦後という時代「主婦にあらざれば女にあらず」と言わんばかりに、主婦であることが強い規範性を持った時代であった。


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