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プロダクトの解像度の高さとチーム組成が出資の決め手に。Archetype Ventures向川 × Haul平田が語る「プレシリーズA調達の裏側

株式会社Haulは、国内初となるAI x SaaSで採用成果を向上させるイネーブルメントSaaS「RekMA」を提供する、コンパウンドスタートアップです。今回の対談では、弊社事業に出資頂いているArchetype Venturesの向川恭平氏 (以下、向川)に、出資を決めた理由や投資判断に影響したポイントについて、Haul代表取締役・平田と対談を行いました。

プロフィール:向川恭平(Archetype Ventures パートナー)
三菱商事にて上下水道事業に従事後、日米クロスボーダー VC、DNX VenturesにおいてHorizontal・Vertical SaaS/Cloud, Fintech,不動産領域にてアーリステージ投資を実
施。東京大学経済学部卒、UC Berkeley Haas School of Business MBA 修了。高校生
起業インキュベーションプログラム「Blast!School」メンター。

社会課題の解決に重きをおいて投資、Haulの想いと合致

ーーまずは出会いのエピソードに触れさせてください。最初はシードのファイナンスの時ですよね。

向川:平田さんがシード調達をこれから回られるタイミングで、たしか2023年の2月・3月、バークレーMBAの先輩だった方からご紹介いただいて、話をしたのが最初ですね。

一回目の面談で、非常に面白いなと感じたのをいまでも覚えています。平田さんが福井俊平(Archetype VenturesのManaging Partner、以下 福井さん)が投資をしていたABEJAの初期社員で、当時から交流があったこともあり、社内ではすごい巡り合わせだと盛り上がりました。

平田:前職のABEJAに入社したのは2014年の春で、そのタイミングでArchetype Venturesさんにご出資いただきました。福井さんとはそこからのお付き合いです。福井さんはベンチャーキャピタル界の中でも熱心にハンズオンしてくださるキャピタリストでしたので、営業活動をする中で同席いただき、その過程で議論を行い、アドバイスをしてもらうような関係性がありました。その経緯もあって、起業する時はArchetype Venturesさんに必ず相談を持ち込もうと思っていたタイミングで偶然、その前に向川さんとの接点をいただきました。

ーーシードとプレシリーズA、2回の出資でこ゚縁をいただきました。 Archetype Venturesが何を大事にされているベンチャーキャピタルで、我々Haulのどの部分がフィットしてシードの出資を決めていただいたかを教えていただけますか。

向川: Archetype Venturesは、起業家が取り組んでいる事業領域やアプローチが大きな 社会課題の解決になっているかに重きをおきます。
特にHaulが取り組んでいる「採用」領域は、労働人口が減少する日本においてはスタートアップのみならず、日本の企業全体が最も困っている部分でありますので、我々としても応援したい分野です。その中でも、業務効率化を超えて、良い人材を採用する上で企業側が採用候補者に対してどのようなアプローチを取るべきかをプロダクトを通じて提供できるHaulは、僕らも大事にしていることとすごく合致しました。


「代表平田の強さ」「プロダクトの解像度の高さ」がシード出資の決め手に

ーーシード出資時のHaulの印象はいかがでしたか。


向川:シード出資時の印象は、まずは平田さんの経営者としての強さが挙げられます。

1つ目は、やりきり力です。
何度も創業しているシリアルアントレプレナーではないかもしれないですが、 ABEJAに初期から入り、人事部門をずっと見てこられたご経験の深さもそうですし、その後にご自身で取り組んだ大なり小なり50社のスタートアップの採用コンサルを通じて積み上げた知見に深みがあると感じていました。採用コンサル時代は、ジョブディスクリプションの設定・作り込みから、媒体の選定、候補者の絞り方、要件の決め方、社内の選考プロセスの決め方までやってこられました。
当時のクライアントの方にヒアリングしても、まず経営者に対してハイレベルなアドバイスをして大枠を決めてから、自ら手を動かして現場のワークフローを構築するところまで、すべてやりきっていることが良く分かり、非常に印象に残っています。

2つ目はプロダクトの解像度の高さです。
現在のメインプロダクトであるオファーレターやアトラクトレターだけでなく、 その後のプロダクト群がどう拡大し、重なって波及していくかについて、ピッチの中でプロダクトのモックアップが用意されていました。将来的に自分たちが作りたいプロダクトビジョンを機能やサービスページの変遷といったディテールに踏み込んだ解像度の高さで、シード期から持っていることは珍しいと思います。
プロダクトを作る前に、数多くのクライアントをお手伝いし、さまざまな顧客フィードバックを集めてきたからこそできることだと思います。そのプロダクトビジョンは今でもまったくブレていないと思います。

シードから1年間で今回のプレシリーズAになり、さまざまな変化はもちろんありましたが、プロダクトがブレずにピボットしていないのはご経験と専門から来る解像度の高さだと思いますし、 それを予見できてしまうようなプロダクト群の解像度の高さを見せていただいたのがシードで投資させていただきたいと思った大きな理由です。

平田:シードで1.5億円調達させていただきましたが、 その資金を使い終わったタイミングで、オファーレターに続きアトラクトレターができました。直近(2024年8月)で両方のプロダクトを使っていただいた事例では、56%だった承諾率が、RekMAを活用して3か月連続で100%になる成果が出ていますシード時に考えた通りのプロダクトが1.5億円の資金の中で作ることができ、成果が出せるところまで持ってこられたことは計画通りに進んだ証明とも思います。
向川さんは、様々なSaaS に携わってこられたご経験と、HR領域も含めて解像度が高いので、よりミクロなことも含めて議論できるところはお願いして良かったなと感じています。


RekMAは採用ノウハウが入り込んだプロダクトである

ーー我々のプロダクト「RekMA (リクマ)」について、どういった印象を持たれているかお伺いさせてください。


向川:良いプロダクトとは、 ワークフローの効率化などに止まらず、そのプロダクトを通じて顧客が知らない・内的に有さないノウハウや価値を提供できるものかなと考えています。
RekMAのオファーレターもアトラクトレターも、ただワークフローを作っているだけ、候補者のファネル毎のコンバージョンレートを上げるためのものではなく、平田さんがこれまで採用コンサルタントとしてやってきたノウハウを体系化して落とし込んでおり、確りと運用すれば企業の採用力そのものが向上しうるプロダクトになっています。
当然、業務の効率化も重要な観点だと思いますが、どのように人をアトラクトしていくのか、候補者のニーズを捉え、会社の良さを伝えていくのか、というノウハウがプロダクトに入り込んでいる。その思想は他の様々なサービスを見てきた中でも、非常にユニークで突出した考え方だなと思いました。

平田:前職の時から常に新しい市場・サービスを立ち上げることに携わっていて、 海外も含めた情報収集や研究を行っていました。単純に海外からタイムマシン的経営で取り入れても、日本のマーケットを見た時にフィットしないことは非常によくわかっていました。今までの経験も含めて、 日本の商習慣や業界の既得権益や、各社の業務フローを考えた時に、自分の中で最もユニークかつ成果が出る形をゼロベースで考えた結果、RekMAが生まれました。

向川: 非常に共感します。タイムマシン経営は、今でも通じる領域はあると思いますが、こと採用領域に関しては、日本はユニークな商習慣があります。日本でも転職者が増えてきたとはいえ、まだまだ欧米を中心に海外の方が、転職が当たり前で、転職採用の母数もまったく違います。
加えて、受け入れる企業側のソフトウェアの習熟度も欧米と日本でも異なるところが多いので、やはり独自の考え方が必要だと思います。RekMAは日本の人事部や採用に携わられてる方々に合わせて作り込まれているプロダクトだと思うので、オファーレター、アトラクトレターを見ていて、これは刺さる!と思いました。

ーーArchetype Venturesnの方針はお伺いしましたが、向川さん自身がキャピタリストとして大事にされてることや、どういう起業家を応援されているかについても教えてください。

向川:個人的には課題の大きさ、ペインの深さにこだわりを持っています。 このプロダクトが普及した時に、多くの方々が波及効果も含めて変わっていけるか。そういったことに挑戦しようとされている起業家さんを応援したいという思いがあります。
日本の終身雇用制度やそれを前提とした商習慣は、日本のポテンシャルを制限している面があると考えています。セーフティーネットを張って誰しもが過度なリスクを負わないようにすることは当然ながらも、もう少しそれぞれの企業が経済や自社の状況に応じてどのような人材を採用していくのか、どういう部門を閉じていくのかなど、フレキシブルに判断できた方がいいと思います。
そのような社会では、当然転職機会が多くなるので、企業側と採用候補者の情報の非対称性をできるだけ減らし、自分に本当にマッチする会社を見つけられるかが重要になると感じます。世の中のトレンドとして転職しながらキャリアアップする人が増えているので、間違いなく社会はそちらに向かっていると思います。一方で、自分にとって本当にマッチする会社はまだまだ見つけ辛い課題があります。
その時々のタイミングで自分にとって最適な企業を見つけやすい社会を作っていくべきと、個人的に大きなテーマとしてあったので、人事領域やHR領域にはすごく興味を持っていました。平田さんはそのど真ん中に挑戦されてらっしゃると思います。

平田:まだまだマーケットの面では、スペック重視で企業も候補者も互いに採用・転職をしている昨今ですが、自分自身がどう貢献できて、何をやりたいのかを重視されている候補者が最近は増えていると感じています。

向川:そう思います。圧倒的な需要過多で、良いタレントが採りにくくなり、転職にかかるコストが上がってきている昨今、RekMAシリーズへの期待は非常に大きいです。


強いチーム構築が追加出資のポイントに

ーーシード投資いただいた2023年5月から1年強が経過しました。新たに次の成長見据えたプレラウンドもリードとして決めていただきましたが、追加投資を決めたポイントについて教えてください。

向川:少なくともプロダクトのビジョンに関して初期の解像度が非常に高かっただけあって、何を作るか、どういう価値を提供するかという点に関しては寸分の狂いもない、 この仮説が基本的には正しい方向に証明されているなという感覚はもちろんありました。
僕らとして1番関心があったのは、採用という業界知見がとても重要な領域だからこそ、平田さん個人に依存することなく、チームとしてやっていけるかという点でした。この1年2ヶ月の中で相当強いチームを作ってこられたことが最も安心材料になりました。シード出資時は経営チームがまだなく、平田さん一人とサポーターといった組織構成でしたが、この1年で経営チームが作られて、組織全体もチームが強化されたことが追加投資を決めたポイントの1つです。

加えて、いわゆるRekMAのメインターゲットになるユーザーからの評価も重要でした。 1年間で50-100人ほど採用する企業さんにヒアリングした際に、 彼らは相当RekMAの価値を感じていて、アトラクトレターとオファーレターのセットでしっかりと使っていただいていることも決め手の後押しになりました。

シード時からアトラクトレターとオファーレターがセットでバリューが出るという話だったと思います。アトラクトレターがリリースされたのが24年2月で、プレシリーズAの調達まで約5ヶ月しかありませんでしたが、オファーレターとアトラクトレターのセットで、その5か月で成果もしっかり見えたことは、シード期の仮説が正しかったという証明になりました。

プレシリーズAの評価ポイントをさらに言うと、Haulさんの採用力です。
会社の初期段階にもかかわらず入社される方々の希少性、能力の高さを感じています。平田さん、そしてHaulの採用力の高さは際立っているものがあると思います。これはRekMAを運営している会社として、模範的な状態であると感じています。

平田:私一人の力というより、それぞれ良いタレントが集まってきてくれて、みんなの総合力で、会社としての採用力自体が上がってきているのを感じます。

「やるべきことは当然やる」カルチャーのチーム

ーーシード投資時と現在を比較して変化はありますか。

向川:変化したのは、やはりチームの総合力です。Haulはやるべきことは当然やられているし、考えるべきことは当然考えられていることが多いと思います。そこに関してチームが増えても、同じようにできていてカルチャーが築けていると思います。優秀かつ理想から逆算できる人材が集まってきているのは、どなたとお話させていただいても感じる部分です。

平田:たしかに、大人の部活感はありますね。メンバー全員が、スタートアップ2回目の人材が多いです。そういう意味では、理想もわかりながら、現実の中での落としどころをしっかり見つけて推進できていると思います。チーム内で変ないざこざ等も起きたことはないです。

向川:平田さんとしてはどういう組織を作っていきたいですか。

平田:前職の初期メンバーは、それぞれが独立・起業したりしています。それぞれの道でリーダーになって、そのリーダー同士の助け合いができる関係性・環境でしたので、そういう人たちが生まれてくるような組織にしたいと思います。


ーー最後に、これからHaulの候補者・転職者に向けて、メッセージをいただけますか。

向川:平田さんとの距離が近くなればなるほど愛がある人だなっていうことを、関係性を作っていく中で感じると思います。プロのチームを作っていこうと思われているし、実際にそういうチームが作られています。もちろんHaulが目指す世界観を実現するためには困難も多くあると思いますが、 平田さんもHaulのメンバーもお互いサポートし合う体制になっていてとても良いチームだと感じています。

平田:越境人材が集まっているので、お互いに持ち場・主戦場はありつつも、様々な範囲に染み出して 仲間のピンチに駆けつけていく。助け合っていくカルチャーが自然とできているのは嬉しいことだと感じます。

向川:あと、株主や関わっている方を見ても、 平田さんの人付き合いがそこから見えるというか、視点が中長期的ですね。株主一つとっても、福井との縁ももちろんですし、 大事にされる仲間はずっと大事にされていることが、会社の作り方からすごく見えます。短期的に1番バリューが出る意思決定をしていくと、なかなかこうはならないだろうと思うので。それもHaulらしさというか、会社としての文化を感じます。

平田:スタートアップを運営していく中で、大変なシーンやフェーズがやってきます。大変な局面の時にも、社内も社外の協力者も含めて一致団結できるメンバーと仕事ができる状態を築くことが僕自身大事にしているところです。あと、Haulには社内はもちろん社外にも通用するプロとして投資先から認められているメンバーもいて、そういったメンバーがもっと増えていくといいなと思っています。

向川:その通りだと思います。その辺りも平田さんの採用思想に出ていると思いますし、Haulのどのメンバーの方と話してもすごく感じます。その点でもHaulさんはすごく良いチームだなと感じています。
今後のさらなる事業・組織の発展に期待しておりますし、僕らとしても引き続きご支援させてください。

平田:本日は、お時間をいただきありがとうございました。


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