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歯塚傷子
2020年4月8日 15:30
西加奈子は饒舌な作家である。ひとが隠しておきたいと思うような、みっともない、みじめだ、格好悪い、そういった感覚を呼び起こすようなものを、無残にも克明に描いてしまう。たとえば本作『サラバ!』では、「映画や音楽に精通している僕の誇らしさ」「美しい女性を恋人にしている僕の自尊心」といったようなものがそれだ。それらは、そう正直に告白してしまうことが憚られるような——つまり、ひとをいたって「きまりの悪い」