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モバイルアプリエンジニアが考察する【遊戯王アプリ ニューロン】

はじめに

どうも、hatuyuki4です。まず自己紹介がてら、自分が普段何をしているのか書きます。自分は普段、モバイルアプリ(iOS)を開発しているアプリエンジニアです。
遊戯王やMTGなど、カードゲームが好きなのが高じて遊戯王のライフ計算アプリなどを自分で作ったりしていました。

今回はアプリ開発者の視点から、6月29日にリリースされた、遊戯王公式サポートアプリ『ニューロン』を使ってみた感想を書きたいと思います。多分に自分の推察や主観的感想が含まれますので、ご了承ください。

アプリ概要

アプリの概要については公式ページに詳しく書かれているので、そちらを御覧ください。アプリの主な機能を上げると、以下のようなものがありそうです。とても充実しています。

・ライフ計算
・カード検索
・カメラを使用した画像認識
・デッキ編集、登録機能

Unityでの実装

アプリエンジニアの癖というかあるあるで、新しいアプリを触った時にそのアプリで使われているOSS(オープンソースソフトウェア)を見てしまうというものがあります。これは設定画面のライセンスと書かれているところから確認することができます。ここで使用しているOSSを見ることで、ざっくりと、そのアプリがどのように実装しているのか推測することができます。

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この中身を見てみると、Unityをサポートするライブラリをいくつか見つけることができました。Unityとはマルチプラットフォームに対応したゲーム開発エンジンです。特徴は様々なプラットフォームに対応していることで、Unityを使用して開発すればiOSとAndroidの2つのアプリを1つのコードで開発することができます。

しかしUnityとは基本的に、ゲーム開発をするために作られたプラットフォームです。『ニューロン』はゲームアプリではないのに、なぜUnityを使ってアプリを作ったのでしょう?

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自社開発という選択

おそらくKONAMIは、この『ニューロン』を自社開発しているのだと思われます。普段モバイルアプリを開発していない企業がアプリをリリースしようとした場合、おおきく自社開発受託開発の2つの選択肢があります。

受託開発の場合、モバイルアプリの開発を得意とする他社企業に「このようなアプリが作りたいのでお願いします」と、依頼してアプリを作ってもらいます。そして完成したアプリを、名義だけ自社のものにしてアプリをストアに並べます。
この場合、開発リソース(エンジニアやデザイナーなど)を自社で揃えなくても良く(お金さえあれば)特に人員を割くことなく、アプリをリリースすることができます。ただし受託開発の場合、追加開発するたびに契約が発生し、アップデートの頻度が少なくなってしまうということが起きがちです。
(Nintendo Switchの公式アプリは受託開発しており、アップデートは数ヶ月に1度だけです)

自社開発の場合、アプリの設計や開発を自社の社員で行い、アプリを作っていきます。エンジニアを採用したり、開発リソースを自社ですべて揃えたりする必要があるものの、追加開発やアップデートを行うのに調整がききやすくなるメリットがあります。また、実際に開発した社員が自社内にいるので、サポートもきめ細やかに行えます。

KONAMIはモバイルアプリ開発のノウハウは持っていないようですが、ゲーム開発のノウハウに関しては日本でもトップクラスだと思います。そこで今回は、社内のゲーム開発リソースとゲームの開発エンジンを利用して、ゲームではないモバイルアプリを開発しているのだと思われます。
ここには、今後もこの『ニューロン』をリリースして終わりではなく、定期的にアップデートして改善していこうという、KONAMIの姿勢が見て取れます。

(すべて推測です)

クロスプラットフォームのデメリット

しかしUnityとはもともとゲーム開発するために作られたプラットフォームなので、ゲーム以外のアプリを開発した場合にデメリットも存在します。

例えば、ネイティブアプリより起動時間がかかるという問題があったりします。今回の『ニューロン』ですと、KONAMIのロゴが入り、その後通信が入り、実際にアプリを使い始めるまで5秒ほどかかりました(iOS13.5,iPhone7Plusで確認)。
Appleはユーザ体験向上のため、アプリの起動時間は0.4秒以内にすることを推奨しています。それを考えれば、この起動時間は遅すぎます(0.4秒を守れるアプリはごく一部ですけど)。

またUnityで開発すると、各OSが提供するライブラリやコンポーネントを使用できなくなります。基本的にはモバイルアプリは、各OSのデザインガイドラインに乗っ取り、各OSで提供されているコンポーネントを使用することが推奨されています。これにより、ユーザは普段のMusicや写真アプリなど、OSが提供しているアプリの操作感と同じように、様々な会社が提供したアプリを使用できます。
ユーザにとって操作を覚えるというのは、ストレスでしかありません。

今回自分が一番気になったのはこの点です。例えばiOSですと、画面が切り替わったあとに画面の左端をスワイプして横になぞることで、前の画面に戻ることができるのですが、『ニューロン』は独自で画面の切り替えを実装しているため、このような操作ができません。
ほんの些細なところですが、アプリを長く使う上では非常に重要なポイントです。

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さすがのライフ計算画面

そんな中で自分がニューロンを触ってみて一番素晴らしいと思ったのは、ライフ計算画面でした。ライフ計算はそもそもモバイルアプリが提供するプラットフォームには存在しない概念なので、独自の実装をしていても違和感がありません。

また、ライフ計算画面のデザインは、モバイルアプリのデザインというよりはゲームのデザインに似ています。スタイリッシュな見た目はもちろん、どのコンポーネントをどこに配置するとユーザにとって使いやすくなるのかがよく考え込まれています。ボタンをタップした時の効果音やアニメーションも適切で、直感的ですごくわかりやすいです。
このあたりは、普通のアプリ開発会社では実現するのが難しい、ゲーム開発会社ならではのノウハウが存分に活かされているなと感じました。

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KONAMI IDとの連携

遊戯王公式アプリということで、KONAMI IDを連携して使えるようです。この点に関しては、公式である強みを存分に活かしているなと感じました。自分がライフ計算アプリを作った時も、ID連携してデッキや戦績を記録できたらすごい便利だろうなあ、と考えていたのですが、開発ボリュームの大きさに諦めてしまいました。

そこを、遊戯王の公式イベントでも使えるKONAMI IDと、10000種類を超えるカードのDBを連携できたのは、本当にすごいことだと思います。今後も、ユーザがより便利に楽しくなるように、アプリの継続的アップデートをしてもらいたいです。

まとめ

良い点
・作り込まれたライフ計算
・自社で開発リソースを持っている(継続的なアップデートが望める)
・独自のIDとデータベースとの連携

悪い点
・起動が遅い
・クロスプラットフォームの操作感

感想

他にも、画像認識やアプリの設定など、色々書きたいことはるのですが、今回はここまでにしておきます。
全体的な感想は、モバイルアプリを触っているというより、モバイルゲームのメニューや設定画面をアプリに拡張したようなものを触っているような感じを覚えました。
今後のアップデートでどのようになるのかわからないですが、この操作感の改善にはぜひトライしてほしいな、と個人的には思います。

機能がいくらすぐれていても、操作感が悪いとユーザに浸透しないのは遊戯王の某Switchゲームで証明されていますか・・・なんでもないです。

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