豪のウィアー調教師が4年間資格停止に
オーストラリアのracing.comによると、1月30日の連邦警察による強制捜査で厩舎から未登録の銃やテイザーガン、コカインなどが見つかり押収されたダレン・ウィアー調教師は、6日朝にレーシング・ビクトリアの上訴・懲罰委員会(RAD)によって開かれた公聴会に法定代理人とともに出席。RADはウィアー師に対し、4年間の資格停止処分を科した。
30日朝に突然の強制捜査、3人が逮捕
厩舎に警察が立ち入り、調査を開始したのは先月30日朝。Twitterにも複数の現地メディアからの第一報があり、その後厩舎前から虫に悩まされながら報告するレポーターの映像つきで経過がツイートされていた。メディアが大騒ぎしたように、成績が優れた調教師であり、オーストラリア国内では著名な人物であることは後述する。
強制捜査によってウィアー調教師ら3人が逮捕され、銃やテイザーガン(スタンガンの一種)、それにコカインなどが押収された。八百長疑惑から始まった捜査は、競走馬のパフォーマンスを上げるためにテイザーガンを使用している疑いにまで広がったが、その一方でオーストラリアには推定無罪の原則が定着しており、ウィアー師は数時間の拘束の後に釈放された。
テイザーガンは”jigger”と呼ばれているもののようだが、jiggerとはオーストラリアのスラングで、具体的な対象物の名前を言う代わりにjiggerを使うのだそうだ。日本語でははっきりと物の名前を言わずに”あれ”とか”それ”とか言うことがあるが、そんな感じで隠語でjiggerと呼んでいたのではなかろうかと推測する。
ヴィクトリア州の競馬統括団体であるレーシングヴィクトリアは問題の重要性を鑑み、4年間の調教停止をRADに求め、ウィアー師はテイザーガンの容疑については争わない姿勢を示した。このため、調教停止処分が即時発効となり、他の疑いについてもさらに捜査や取り調べが行われる模様で、進展次第では免許はく奪に至る可能性もありそうだ。
ウィアー調教師とはどんな人物か
ダレン・ウィアー調教師は1970年生まれ。ヴィクトリア州スタウェルで装蹄師として開業したが、他の調教師の勧めもあって調教師に転身し厩舎を開業、1995年10月に25歳の若さで初勝利を挙げた。2001年にバララッチに移動後、翌年にシーズアーチーという馬でGI初制覇を果たした。
しばらくは目立たない成績だったが、2013-14シーズンに急上昇。ヴィクトリア州の主要競馬場で前年を49勝も上回る86勝をマークし、リーディングトレーナーの座に就いた。2015-16シーズンには、国内で348勝(うち1着同着1回)を挙げ、年間勝利数の新記録を打ち立てた。さらに2016-17シーズンに449勝、2017-18シーズンには491勝と勝ち星を伸ばし、昨シーズンまで5シーズン連続でリーディングトレーナー。これまでに3,723勝、GI勝利は36勝。オーストラリア国内に4ヵ所の厩舎を持つ。
ここ数年の急な成績上昇をやっかむ人や訝しむ人はいたようで、Twitterにはオーストラリアの競馬ファンによる「それ見たことか」的な書き込みがみられたようだ。また、メルボルン在住の人が「最近、知事がウィアー厩舎の馬に公共のビーチでのトレーニングを許可して千鳥の生息地が破壊された、この決定は中断されなければならない」と逮捕当日にツイートしていた。今回の捜査とは関係なさそうだが、トラブルの火種をいろいろ抱えていた人物なのかもしれない。これでビーチトレーニングは中止されるのだろうか。
日本からの馬を含め大量に厩舎移籍が発生
ウィアー師は日本からの移籍馬を多く受け入れていることでも知られてきた。きさらぎ賞やチャレンジCを勝ったトーセンスターダムは現地でGIを2勝して種牡馬入りを果たしている。サウジアラビアロイヤルカップを勝ったブレイブスマッシュもすでにGIを2勝。その他、ダノンリバティも在籍していた。過去にはアドマイヤデウスやイッテツ、トーセンバジルもいたが、それぞれ調教中の故障で亡くなっている。
ウィアー師が調教停止となったことで、4つの厩舎の612頭いた管理馬のうち直後にレースを控えていた陣営は転厩を選択。ブレイブスマッシュは急遽ニューカッスルを拠点とするリース厩舎に移籍し、9日のC.F.オーアステークス(芝1,400m・GI、コーフィールド競馬場)に出走する。
今日になって、ウィアー調教師の厩舎と調教施設を、シアロンマー・レーシング(マー調教師とユースタス調教師が共同運営)が引き継ぐことが決まったと、racing.comが報じた。しかし、600頭を超える超巨大な厩舎はもういらないという声もあり、以前の様な規模のままかどうかはわからない。