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各々のタスクを弁えた選手たちがコンサドーレを快勝に導いた
高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ EAST・得点王のタイトルをひっさげて青森山田から入団した檀崎竜孔が、浦和レッズ戦の映像を見て「今のままではあそこに入るのは無理」と衝撃を受けたという。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、試合後の記者会見で「グループの連動性という意味では、マンチェスター・シティに匹敵した」と自軍を絶賛した。それほどまでに、埼玉スタジアム2002で北海道コンサドーレ札幌が繰り広げたパスサッカーはハイレベルだった。
昨年の4位対5位の戦いだったが
開幕戦の浦和は仙台とスコアレスドロー。13分の興梠のヘディング、64分のエヴェルトンの左足のシュートに得点の匂いがした程度で、70%ものボールポゼッションを生かすことはできなかった。一方の札幌も、湘南に63%とポゼッションで優位に立ちながら相手の土俵に乗ってしまった感。落ち着いて回すことができず、逆に武富に2ゴールを決められ敗戦。昨年の4位札幌と5位浦和としては、昨年の上位陣が同じようにつまずいただけに、2戦目で取り返して波に乗りたいという試合だった。
まず、札幌が立ち上がりにゴールを奪って流れをつかんだ。2分、この日は鈴木武蔵と2トップを組んだアンデルソン・ロペスから左サイドの菅大輝にロングパス。菅は走り込むロペスにバスを返すと、ロペスはさらに左に走り込む鈴木にふわりとラストパス。受けた鈴木は、ゴールに流し込むだけだった。開幕前、自身の役割について問われると「監督が求める役割をしっかりこなすこと」と即答したロペスは、確実にタスクをこなした。
27分には、浦和マウリシオのボールをカットしたチャナティップがツータッチ後に鈴木へグラウンダーのパス。鈴木の走り込みのスピードに合わせた優しいパスが、5秒での追加点を生み、浦和サポーターを沈黙させた。
圧巻だった52分のパス交換
後半は無得点に終わったが、52分の細かいパスの連続は距離感が良く今後に期待を抱かせるものだった。ロペスからチャナティップ、荒野そして再びロペスに繋がりシュートまで行った場面は、シュートが枠外だったのは残念だったが、浦和DFはまともに対応できなかった。各々が役割をこなし、全員のベクトルが相手ゴールに向いていた。
役割という点では、宮澤と深井が守備で効いていた。前半は相手のFWがあまり働かなかったことを割り引いても、相手のプレッシングをうまく避けることができていた。また、荒野もよく走り回り、スペースを作ることに奮闘していた。61分の興梠のシュートをファインセーブしたク・ソンユンをはじめ、他の選手も90分間集中を切らさずプレーしていた。
アジアカップの決勝で、カタールを「タスクが身についている。相手がこうしてきた時はこうするというタスクが叩きこまれている」と評した人がいたが、今のコンサドーレの選手たちは、ペトロヴィッチ監督によってさまざまなタスクが植え付けられている最中だろう。特に、カタールと違い、「味方がこう動いたらこうする」というタスクが、練習からしっかり叩き込まれているように思う。
そして、ロペスと鈴木はかなりミシャサッカーに順応し、使えることがわかったのは大きい。昨シーズンは、選手交代ごとにシステムを変えたり、サイドチェンジを多用したり、縦へどんどん放り込んだり……と、相手によって様々なパターンで攻撃して勝ち点を積み上げたコンサドーレにとって、前線にジェイ、鈴木、ロペスとスタメンにおけるチョイスが増えたのも戦術をさらに多彩にする材料になる。そこに冒頭の檀崎が、ルヴァンカップで加わって結果を出したりしたら、ますます夢が広がるのである。
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