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20日(土)は芦別健夏山笠の追い山!

毎年7月15日は博多祇園山笠の追い山。今年はBS3局が同時生中継したほど、日本中の注目を集める夏の一大イベントになっている。
一番山笠の舁(か)き手が歌う祝いめでたの感動。時間を競い、街中を疾走する山笠のど迫力。そして沿道を埋め尽くす観衆の熱狂。私は過去に2度、現地で追い山を観たが、やはりテレビを通じてでは味わえない熱気を体感でき、沿道から容赦なく飛び交う水を浴びてしまったりするのもまた楽しいものである。
しかし、なかなか北海道から博多まで行くのは時間的にも金銭的にも大変で、現地で観るのを諦めている人は少なくないかもしれない。でも、北海道でも負けず劣らずの熱気に包まれた追い山を観ることができるのをご存知だろうか。
かつて炭鉱の街として栄えた芦別市の夏の祭り「星の降る里・芦別健夏まつり」のメインイベントで、芦別駅前通を中心としたコースを、約1㌧もの重さの山笠が駆け抜けるのだ。

本場博多公認! 芦別健夏山笠

芦別での山笠の歴史は昭和59(1984)年、市民の青井愼介氏(後の芦別健夏山笠振興会初代会長。故人)がNHK特集「熱走!博多山笠」を観たのがはじまり。市の基幹産業だった石炭産業が衰退の一途を辿った当時の芦別には、市民が一丸となって情熱を傾けられる祭りでなんとか活力を、という切実な想いがあった。青井氏は仲間に「あんな熱気がある祭りをやりたいな」と話していたそうだ。
翌昭和60(1985)年に番組のビデオを基に見よう見まねで山笠を作り、「まとい踊り」に参加する形で出したのが最初。当時の形は山笠というより「ねぶた」に近いものだったという。そして、平成4(1992)年に博多祇園山笠振興会からお墨付きを得て、正式に本場博多公認の山笠となった。「北の山笠」を名乗れる所以である。人的交流もあり、昨年の健夏山笠には博多からも櫛田神社の宮司や博多祇園山笠振興会会長らが駆けつけていた。

芦別健夏山笠を構成する4つの流

本家の博多祇園山笠では7つの流が年ごとに順番を変えながら一番山笠から七番山笠までを舁き、最後に上川端通が八番山笠の飾り山笠を舁く。芦別健夏山笠では、現在4つの流が存在する。人口減少の影響などで、かつて存在した中央流と北流は緑幸流に合流している。

市流(いちながれ) - 主に芦別市役所職員で構成されている。芦別駅前に飾る山笠を作る。追い山では、3つに分かれて他の流の加勢をする。
栄流(さかえながれ) - 主に芦別駅前近辺(栄町町内会)から構成。
北大黒流(きただいこくながれ) - あかつき・渓水町・中央団地など6町内会で構成。
緑幸流(りょくこうながれ) - 緑町・幸町町内会で構成。2015年より従来あった中央流・北流が合流。

昨年、二番山笠だった緑幸流が今年の一番山笠とり、同じく三番山笠だった栄流が二番山笠となる。昨年の一番山笠だった北大黒流は三番山笠になる。祝いめでたを歌う栄誉は、本場より短い間隔で訪れる。
芦別健夏山笠は、観るだけでなく「舁き手」として参加することも可能。近年は人口減少に伴う舁き手不足や観光促進の観点から、全国各地からの参加を歓迎しており、芦別健夏山笠振興会の大西会長によると「市外からの参加者はだんだん増えている」そうだ。

芦別の巨樹「黄金水松」をよりどころに

健夏山笠は、昔、アイヌの人たちがお祈りをした「黄金水松(こがねみずまつ)」をよりどころとした奉納行事である。芦別市民の無病息災を祈念して行われる行事なのだ。
芦別市黄金町の小高い丘の上にあるのが黄金水松公園。ここに推定樹齢1,700年、樹高21m、幹周6.2mのイチイの巨樹「黄金水松」が聳えている。「水松」とはイチイの別称で、イチイとしては全国8位の太さを誇っている。その巨樹は、古くから上川地方のアイヌたちが通行する際の目印にしたり、猟の無事や無病息災を祈る、御神木として親しまれた存在なのだそうだ。

北海道指定天然記念物であり、上川アイヌの首長が、この木に住み着いていた、人に危害を与える黒蛇を退治したという伝説も語り伝えられているという。

芦別健夏山笠の主な行事

芦別健夏山笠の行事を追ってみよう。
7月上旬の飾り山の「御神(ごしん)入れ」からスタートする。博多祇園山笠における御汐井取りに相当する「若松取り」は、追い山の6日前(日曜日)夕刻に行われ、芦別神社に参拝して安全を祈願する。
追い山の4日前(火曜日)夕刻に行われる「祝儀山」では、全4流で1本の山笠を舁く。
追い山の2日前(木曜日)夕刻に行われるのが「追い山ならし」。市流とその他の3つの流(三流連合)による800mのタイムレースで、今年もここまでは恙無く終わったようだ。
いよいよ「追い山」を残すのみ。
追い山は、土曜日(7月第3土曜日)夕刻に行われる。緑幸流、栄流、北大黒流の3つの山笠による2.1kmのタイムレース。上述のように、市流のメンバーは3つに分散してそれぞれの山の助っ人となる。

追い山の一日

私が昨年訪れた時、16時28分頃に撮影したテスト映像。駅前通りの様子を撮影したものだが、水が撒かれ、周囲にはすでに法被姿になった男たちの姿も確認できる。

駅横には山笠が展示されていた(今年は駅が工事のため場所が変わっているらしい)。昨年の市流による飾り山笠は、駅のすぐ横に展示されていた。

そして、各流が舁く3つの山笠も、夕方までは飾り山笠の隣に展示されていた。
大黒天の北大黒流の山笠。

弁財天の緑幸流の山笠。

源義経の栄流の山笠。

追い山では舁かないが、斎藤道三の市流の山笠も展示されていた。

どれも、見事な舁き山である。17時を過ぎると、駅前から移動を始める。大きなポリバケツは、通りかかる舁き山と舁き手に水をかけるための物。

徐々に駅前通には観客が増え、子供たちが中心となる先走りが行われるなどもあり、緊張感が高まっていく。

近くの温度計は、夕方なのにどんどん表示温度が高くなっていったほど、熱気も凄い。そして17時59分。一番山笠がスタートする。
昨年、3分前からペリスコープで中継した映像をぜひ。

祝いめでたを歌う一番山笠の北大黒流。

清道入りの様子。

清道旗を回る。

沿道から水が飛ぶ。

博多祇園山笠では、櫛田入りのタイムとコースタイムの2つを競うが、芦別健夏山笠も清道入り(スタートした後、清道旗を回って追い山コースへ飛び出すまでのタイム)と2.1kmのコースタイムを競う。昨年のタイムは……

 ❏清道入りタイム❏
一番山笠  北大黒流  43秒57
二番山笠  緑幸流   32秒38
三番山笠  栄流    29秒30

 ❏追い山タイム❏
一番山笠  北大黒流  14分55秒
二番山笠  緑幸流   16分16秒
三番山笠  栄流    16分00秒

どちらでも一番を取れなかった緑幸流は、昨年の山笠の後にFacebookで「いろいろ反省点があり、一年かけて改善していかねば」と書いていた。今年、その成果が出るかも注目だ。

そして、本場博多には無いイベントが、終了後の「餅まき」。農業祭りなど、芦別の大きなイベントでは必ず行われるという。柔らかな餅だ。ただし、あんこは入っていない。

今年は20〜21日が「芦別健夏まつり」で、今年は第50回となる。21日はメインイベントの千人踊り(こちらは飛び入り参加OK)のほか、リュウソウジャーショーや子供達の太鼓の演奏会なども催される。また、芦別名物さくらんぼの種飛ばし大会もあるそうだ。
この週末は、健夏まつりの芦別に足を運んでみてはいかがだろうか。ぜひ、ナマの祝いめでたを聴き、勇壮な山笠に酔っていただきたい。

地元網走に帰ってきて5年半経ちました。元競馬専門紙編集部員。サッカーや野球、冬はカーリングなどスポーツ観戦が好き。もちろん、競馬も話題にしています。時事ネタや網走周辺の話題なども取り上げます。よろしければ、サポートもお願いいたします。