chapter9: ココちゃんが帰ってきた
そんなこんなで、てんやわんやの毎日だった。父の告別式の翌日は、生前の父が企画していたクラウドファンディングの応援ライブがあり、やっぱり中止にせずにやろうと決めた。連日だというのに父の親しい飲み仲間が来て下さった。ライブを楽しみ、そのあとは会場をお借りしたオーナーさんも交わっての飲み会となり、スーダラ節を歌ったり、思い出話にふけった。
そのクラウドファンディングの英訳をお願いしていたMさんからも連絡があり、今の文章では外国のお客様には伝わりにくいということで、翌日は原文を直す日にして、それから新宿のカフェでミーティング、すり合わせをした。第一線で重要なお仕事に携わっているMさんの指摘は容赦なく、仕事は厳しいと思ったが、優しさから生じている事で、私としては、ひとつ頑張って踏ん張りぬき、ずっとカフェなんて行ってなかったので、新鮮な時間を過ごした。
でも結局、そんなこんなで気づくと7キロも痩せて、頑張ったような気がしていても、ヨレヨレで大して動いてなかったのかも。周りの方たちがフォローをしてくださったから出来たのだ。
*
さて、まさかこんな事になるとは思っていなかったため、ウチには縁あって、保護犬としてやってきた子犬のココちゃんが来て間もなかった。
前の飼い主さんから別れて間もないのに、申し訳ないことに我家にまで騒動が起きてしまい、落ち着くまで犬好きの従兄弟が預かってくださるという話をもらったので、お願いすることになる。そのココちゃんが帰ってくることになった。
子犬だったココは、従兄弟の家で少し逞しくなって戻って来た。なし崩しの躾でダメ犬ばかりを育ててきたので、ハウスが出来るようになっていたのは大きな事だった。
しかし、家に帰ってきてからは、結局やんちゃに戻っていき、ある時、気づくとココの姿がない。
あれっ!と思い、慌てて外に出ると、郵便局の配達のお兄さんがオロオロと目で追いかける、その先の大きな交差点のど真ん中で駆けているココの姿が! 新宿へと向かう道路にはタクシーやトラックが行き交い、目も当てられない。これでココにまで何か起きてしまったら、本当に私は再起不能である。
ココー! ココー!と叫ぶと、郵便局のお兄さんも一緒にココー!ココー!と叫んでくれて、それにココちゃんは気づき、さすがに交差点では怖い思いをしたと見え、こちらに一目散に戻ってきてくれた。そのまま家のところまで誘導して、ドアをバタンとしめた。ココちゃんを抱きしめ、郵便局のお兄さんに感謝しきれないほど、有難うございますと言った。
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