来世ジャッジメント⑧
今日も遅くなり申し訳ございません。
明日は100%もっと早く投稿します!
マジです!何故なら仕事が休みです!笑
そんな事はどうでも良くて昨日の続きをお届けします。
昨日は変なところで区切ってましたね。
とりあえずその続きからです。
あ、今載せる時に昨日まで一箇所変えたところがあります。
案内人ミゲルを「案内人」としていましたが、もう一人案内人が出るので「ミゲル」に変更しました。
というか当初からこうするべきですね笑
それではどうぞ♪
ー・ー・ー・ー・ー
レンツ「誰かと思えばミゲルじゃないか」
ミゲル「その声はレンツか」
レンツ「久しぶりだな。俺に会えて嬉しいだろ」
ミゲル「嬉しいねー。森の中で珍獣に出会ったぐらい嬉しいよ」
レンツ「それは嬉しさレベルMAXと受け止めさせてもらうぜ」
ミゲル「お前は受け止め上手だな。ゴールキーパーに向いているかもな」
レンツ「キーパーがいない時は俺を呼べ。ただしアイスホッケーはお断りだ。俺は寒いのが苦手なんだ」
ミゲル「冷たい男が皮肉なもんだな」
レンツ「お(静香を見て意味ありげな表情)」
静香 「…?」
レンツ「隣失礼するぜ」
レンツ 徳山 カウンター席に座る
マスタ「あーレンツさんいらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか」
レンツ「いつものやつ」
マスタ「レンツさんすみません。いつものやつ切らしてましていつものやつによく似た…」
レンツ「じゃあ何でもいいから早く持ってこい」
マスタ「あー…、かしこまりました」
静香 「さっきと勝手が違うわね」
マスタ「お客様は(徳山に)」
徳山 「わたしも何でも」
マスタ「かしこまりました…(準備する)」
静香 「あの、この方も案内人、ですか?」
ミゲル「そうです」
静香 「では彼女も彷徨ってる…?」
ミゲル「そうですね」
レンツ「ミゲル、おおかた会議の休憩時間ってとこか」
ミゲル「それがどうした」
レンツ「相変わらず会議が好きだな。あんなもんやるだけ無駄なのにな」
静香 「え?」
ミゲル「そんなことはない。会議は大事な行程だ」
レンツ「会議をしようがしまいが行く末は変わらない。ただの茶番だ」
静香 「どういうことですか?」
ミゲル「なんでもありませんよ」
レンツ「あんた、どうせ会議で行く末が決まるとか言われたんだろ。そんなことはないのに」
静香 「…」
ミゲル「適当な事を言うな」
レンツ「会議は別に義務じゃない。開くかどうかは俺たちの自由だ。いずれにしろ行く末を決めるのは案内人の仕事だ」
ミゲル「詭弁はやめろ。そんな事言ってお前はまたその人を殺すつもりか」
レンツ「殺すとは人聞きが悪いな。速やかに来世へと導くだけだ」
ミゲル「お前はいつもそうだ!もっと真面目に仕事をしろ!」
レンツ「大真面目だ。お前みたいにちんたら不毛な会議をやってるほうがよっぽど不真面目じゃないのか。審議委員任せで自分で決断するのを恐れてるんだろ」
ミゲル「そんなことはない!最終的には決断する。会議の結果も踏まえてな。それぐらい慎重に判断するべきだ」
レンツ「どうだかな。百歩譲ってお前はそれでいいとしよう。だがご存知の通り俺の担当は自殺未遂だ。現世を離れたい人間をわざわざ戻す理由はない。イコール来世だ。それ以外の選択肢はない」
ミゲル「みんながみんなそうだとは限らない。現世に戻って、人生をやり直せる者だっている」
レンツ「きれい事だ」
ミゲル「それに、ここだってある」
レンツ「ふっ(鼻で笑う)馬鹿馬鹿しい」
ミゲル「お前は誰もここに残そうとはしない、その選択肢をおろそかにするな!」
レンツ「偉そうなこと言ってんじゃねぇ!ここに残ったってな…」
マスター 話を遮るように
マスタ「お待たせしました。生姜焼き定食です」
静香 「定食!?持ってくるタイミングもそうですけど定食って。何でもいいとは言ってたけど」
レンツ「おいマスター」
マスタ「はい…」
レンツ「グッドチョイス」
静香 「いいんだ」
マスタ「ありがとうございます」
レンツ「悪い、食事の時間だ。これ以上お前と話してる暇はない」
ミゲル「…残さず食べるんだな」
レンツ「トマトは残すけどな」
レンツ 生姜焼き定食を食べる
徳山は食べようとしない
レンツ「どうした食わねぇのか?これが最後の晩餐になるんだぞ」
徳山 「…」
ミゲル「レストランへは?」
レンツ「行く必要はない。どうせ次の人生が始まるんだ。この世での思い出なんて意味がない」
ミゲル「お前」
レンツ「言ったろ、飯の時間だ。食いたければお前も頼め」
ミゲル「もっと考えて仕事をしろ」
レンツ「…」
ミゲル「俺たちは死の淵に立たされた人間の魂の行く先を決める案内人だ。もっと真剣にその人の気持ちになって選択しろ」
レンツ「人の気持ちなんてわかりゃしねぇよ」
ミゲル「おい」
レンツ「じゃあこいつ(徳山)の気持ちを言ってみろ!集団練炭自殺だ。他の連中は死んだ。自分だけ死にそびれて彷徨った。それをまた元の身体に戻せってか!一から人生やり直せってか!お前こそ人の気持ちを考えたらどうだ!」
ミゲル「…」
レンツ「そもそも気持ちをわかってくれるやつが1人でもいれば、ここに来ることもなかったかもな」
徳山 「…」
レンツ「戻ったらどうだ。大事な会議があるんだろ。さぞかしい良い話し合いが行われてるんだろうな」
ミゲル「…」
静香 「…」
ミゲル「行きましょう」
静香 「…」
案内人ミゲルと静香歩き出す
レンツ「(静香を見て何かに気づき)おい待て」
案内人ミゲルと静香立ち止まる
レンツ「お前こいつの未来見てるよな」
ミゲル「もちろんだ」
レンツ「なら決まりだ。来世に送れ」
ミゲル「まだ決まっていない」
レンツ「ふざけるな。迷う必要はない」
ミゲル「それも加味して会議で話し合うんだ」
レンツ「馬鹿馬鹿しい」
ミゲル「俺はお前とは違う。あらゆる条件を踏まえた上でより良い判断を下す」
レンツ「…勝手にしろ」
案内人ミゲルと静香 はける
案内人レンツ 定食を食べる
徳山 「今の女の人、さっき地上で救急車を呼んだ人…?」
レンツ「ああそうだな」
徳山 「これって偶然ですか?またここで会うなんて」
レンツ「偶然なんてない。すべて必然だ」
徳山 「じゃああなたが?」
レンツ「地上への仮戻りは自殺未遂の彷徨い人は必ずやらなきゃいけないシステムなんだ。俺はやらきゃいけないことはちゃんとやるんだ。ただそれがちょっと面倒くさくてな」
徳山 「めんどくさい?」
レンツ「身の危険にさらされてる人のところに連れて行かなきゃいけないんだよ。しかも彷徨い人とは直接関係のない人のところにな」
徳山 「何のために?」
レンツ「さあな。命を粗末にしかけた償い?みたいなところかな」
徳山 「身の危険にさらされてる人がわかるんですか?」
レンツ「わかりたくもないのにな」
徳山 「そうなんですね」
レンツ「ひとつ言えるのは、俺たちがあの時あの場所に行ってなければあの女は助からなかった。彷徨うこともできずに帰らぬ人だ。お前は命の恩人ってわけだ」
徳山 「私が…。最後に、少しでも誰かの力になれて良かったです…」
レンツ「…」
徳山 「あの、ちょっとお聞きしたいんですけど」
レンツ「ここに残る選択肢のことか」
徳山 「あ…(図星)」
レンツ「気になるか」
徳山 「いや…」
レンツ「人の魂は輪廻転生を繰り返す。現世を終えて来世へ向かう、それの繰り返しだ。ここに残るということはその魂の転成を終えるということだ。二度と人間に戻ることはできずに永遠にここで暮らすことになる。家族もなければ帰る場所もない。ただひたすら与えられた役割をこなすだけだ」
徳山 「はぁ…」
レンツ「しかも自分が人間だった頃の記憶もしだいに消えて行く。俺も自分がどこの誰だったのかもわからない。過去の思い出は消え、未来の希望もひとつもない。こんな悲しいことがあるか」
徳山 「ここには、死は存在しないんですか…?」
レンツ「死の概念はない。だが、終わらせることはできる」
徳山 「それは…」
レンツ「魂をあげるんだ。誰かの命を救って、自分の生涯を終わらせる」
徳山 「終わらせる、って…?」
レンツ「どうなるんだろうな。やってみないとわかんねーな」
徳山 「レンツさんは、ここに残ることを望んではなかった…?」
レンツ「どうだったかな」
徳山 「わたし…」
レンツ「俺はお前をここに残す気はないからな」
助手 コーヒーを持ってくる
助手 「こちら食後のコーヒーです」
レンツ「サンキュー。まだ完全に食中でこっちは食前だけどな」
助手 「すみません。どうぞ」
徳山 「ありがとうございます。あの」
助手 「はい?」
徳山 「あなたはここの暮らしは長いんですか?」
助手 「あー、えっと半年ですね」
徳山 「半年」
レンツ「確かミゲルが担当だったよな」
助手 「はい」
レンツ「可哀想に、こんなところに残されてな」
助手 「そんなことないですよ。僕自身もそれを望んだので」
レンツ「望んだ?」
助手 「はい」
レンツ「何故だ?」
助手 「んー、話すと長いんですけど、一言で言うと彼女のためというのが大きいですね」
徳山 「彼女のため?」
レンツ「彼女のためにここに?どういう理屈だ」
助手 「もちろん最初は元の身体に戻る事を望んでいましたし、それも可能だったようなんですが、戻ったところで一命は取り留めても、意識は戻らないと…、植物状態っていうんですかね」
レンツ「ミゲルがそう?」
助手 「はい」
徳山 「そういう事もわかるんですか?」
レンツ「(頷いて)それも俺たちに与えられた能力のひとつだ」
徳山 「未来が見える?」
レンツ「彷徨い人のごく近い未来がな」
徳山 「ならわからないんじゃ?その後意識が戻る可能性だって十分あったんじゃないの?」
助手 「そうですね。ただ、いずれにしてもすぐにどうこうではないということで、その間彼女に辛い思いさせちゃうかなーと」
徳山 「そんな。死んじゃうほうがよっぽど辛いでしょ」
助手 「そうかもしれません。ただ、戻るか戻らないかもわからない状態でずっと彼女を縛るという選択はしたくなかった」
レンツ「俺でもそうしただろうな」
徳山 「そんな」
助手 「一般的には間違った理論なのかもしれません。ただ、僕はそれを望んで、実際そうなった。それだけのことです」
レンツ「いろんな思いがある。魂は理論では動かせない」
助手 「実はもうひとつ理由があったんです」
徳山 「何ですか?」
助手 「彼女と最後のお別れが出来なかったから。ここに彼女の事を知ってる人がきて、僕の思いを伝えてその人が元の身体に戻れてそれを伝えてくれればと。絶対ないとは思いますけど」
徳山 「そうなんですか…」
レンツ「でも、ここへきて半年ってことはもう」
助手 「はい。もう本当にぼんやりとしか覚えていません。作戦は失敗ですね(健気に笑う)」
徳山 「…」
助手 「ごゆっくりどうぞ。このあとショータイムもありますんで」
レンツ「ああ」
彷徨いのボーカル登場
徳山 「こういうのもあるんですね」
レンツ「耳障りなだけだ」
曲が流れてきて歌う(1980年代の曲)
カーペンターズ
徳山 「懐かしい曲」
レンツ「知ってるのか」
徳山 「子供の頃に聞いたような」
しばらく聴く
徳山 「子供の頃に大好きな曲があったんです」
マスタ「何という曲ですか?」
徳山 「タイトルは忘れましたが、おしりの大きなガチョウの子供の話。森のみんなから笑われて陰口を言われるんだけど、ある日オオカミをやっつけて一気に森の英雄になるの。テレビでいつもそれを見てて、良いなー、羨ましいなーって思ってた。わたしもこんな風に一発逆転で周りから認められたかった。みんなの仲間になりたかった」
マスタ「お客様大変恐縮ですが、何故自殺を」
レンツ「野暮なことを聞くな」
マスタ「申し訳ございません。話すことでほんの少しでも気持ちが楽になればと」
レンツ「そういうものではない」
マスタ「そうですよね…」
徳山 「生きてる理由がわからなくなったんです」
マスタ「え…」
徳山 「わからなくなったというか、ずっと前からわからなかった。人生で楽しいことなんてひとつもなかった」
レンツ「…」
徳山 「小学生になったぐらいから、もう楽しくなかった。周りに溶け込めずに仲間はずれで、いつもひとりぼっち。序盤でつまずいた人間関係は結局ずっと軌道修正できないまま。生きていても、ただ虚しいだけ。生きていても死んでるようなもの。それならいっそ死んだほうがまし。生まれ変わるとか来世とかがあるかはわからないけど、可能性があるならそこに賭けたい。わたしは、生きるために死にたいんです…」
マスタ「そうでしたか…」
レンツ「来世はある。そして、来世は良い人生になる。そういうものだ」
助手 「現世でも、まだ間に合うんじゃ」
レンツ「身勝手なことを言うな」
助手 「すみません」
徳山 「…」
マスター ボーカルの元に歩み寄り声をかける
ボーカル頷いてバンドに合図を出す所作
曲が流れてくる チェッカーズ『ガチョウの物語』
徳山 「これ…」
マスタ「少しの時間だけでも、懐かしく楽しい気持ちになれれば」
みんなで歌を聴く ボーカルに促され最後の一節は徳山も一緒に歌う 歌い終わって
徳山 「まだ、まだチャンスあるかな…。わたし、ガチョウ君みたいになれるかな…。わたし、やっぱり、やっぱりもう少し生きたい…」
レンツ「…」
ー・ー・ー・ー・ー
というところまで。
何か今日も泣いてしまいましたね。
自分で書いたセリフじゃないような感覚になりました。
続きが気になりますね。
また明日をお楽しみに♪
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