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データとビデオから見るカル・ネイスミスの代役候補たち

この記事は、22年6月6日 ルートン・タウンFCコミュニティサイト Oak Road Hatterに掲載されたものを日本語翻訳しています。執筆者であるディラン・ブンディア氏には事前に連絡し、本サイトに翻訳して掲載する許可を頂いております。快いお返事に関して、ブンディア氏に改めて感謝します。

原文:Dylan Bhundia ディラン·ブンディア
訳:Hatters Japan

カル・ネイスミスの退団は、ルートン・タウンのディフェンスにぽっかりと穴をあける事になった。ルートンのファンならご存知の通り、最も惜しまれるのはネイスミスのポゼッション部分での貢献で、このような才能ある左利きセンターバックは、通常ハッターズでは買えないプレミア価格で取引されている。

この記事では、ルートンで重要視される予算の制約を考慮しながら、ネイスミスの後任を見つけるため、データとビデオを使用して考察する。評価や移籍金、給与に関する情報は限られているものの、契約満了日や現在所属しているクラブの動きを通じて、状況を確認する事は可能である。

<ネイスミスの後任に必要なものは?>

ネイサン・ジョーンズは昨シーズン、3バックを好んで採用し主にネイスミスをその左で使いながら、時折中央でも起用。ルートンのセンターバックは、ポゼッションしている時の要求がやや特殊だ。基本的にはマンツーマンで守る事が多く、それはセンターバックにも当てはまる。特に3人のうち左右の選手は常にディフェンスから飛び出してライン間で相手選手を封じる必要がある。その好例が、プレーオフ準決勝でネイスミスがダニエル・シナニをマークした事だ。そのため、ネイスミスの後任には、このような役割をこなせる機動力が求められる。

さらにルートンの3バックの特徴として、サイドの2センターバックが4バックのフルバックが守るような広いエリアでマンツーマンできる事が重要だ。ルートンのウイングバックはピッチの高い位置でプレスをかけるタスクが求められる事が多いため、カル・ネイスミスやリース・バークが相手のウイングと1対1になる事も良く見られる。この役割を果たすには、やはり機動力が非常に重要だ。

ポゼッションにおいては、ネイスミスはチャンピオンシップで最高の推進力を持っていたため、その代役を正確にこなす選手を見つける事は非常に困難だ。候補に求めるべきスペックを簡潔に紹介しよう。

・広いスペースをカバーし、1対1でマークできる機動力。
・ウイングに対して広いエリアで個々でしっかりとした守備ができる事。
・利き足はいずれでも可だが、ボールキャリアーである事。
(2018年ワールドカップのハリー・マグワイアを想像してほしい)
・深い位置からボールを運ぶ事ができ、ファイナルサードでウイングバックをサポートする事ができる。

<予算を考慮する>

予算、給与、評価に関する正確な情報はほとんど公開されていない。そのため、ターゲットを絞るには綿密なアプローチが必要だ。例えば、ベン・デイビス(リバプール/シェフィールド・ユナイテッドにローン中)は必要なプロフィールに完全合致するが、明らかにハッターズにとっては手が届かない。クオリティが合致するものの、リストには入らない選手を挙げてみる。

・ルーク・マクナリー (オックスフォード ユナイテッド) -高額の可能性
・マレー・ウォレス(ミルウォール) - 長期契約にサイン済み
・マット・クラーク(ブライトン) - 給与面&高額の可能性
・ロブ・アトキンソン (ブリストル・シティ) - 高額の可能性

<ターゲット>

1) ヨアン・バルべ

ヨアン・バルベはQPRとの契約が切れている。昨シーズンQPRの3バックの左で主に使われた彼はマーク・ウォーバートンの下、センターバックとしてポゼッション時に非常に優れたプレーを披露した。下のグラフは、彼のボールプログレッションの数値が、チャンピオンシップの平均を上回っている事を示している。

平均ラインは1000分以上出場したすべてのセンターバック(右足と左足の両方)のリーグ平均

これはビデオでも確認できるが、狭い状況でも頻繁にプレーに関与して、中央前線へのラインブレイクパスで動きを作り出す事ができていた。昨シーズンのネイスミスほどウイングバックをサポートすることはできないだろうが、技術的な面での能力は高く、それを活かす事ができるだろう。ポゼッション時以外では、やや機動力に欠け、それは彼の比較的低いデュエル勝率に表れている。しかし、ネイスミス自身の低いデュエル勝率を考慮すると、この数値はあまり重要ではない。

バルべは昨シーズン、QPRで頻繁にマンツーマンでのディフェンスを要求されたが、その責任をしっかりこなし、3トップの左でプレーするルートンのディフェンスシステムにはよく合っていると思われる。総合的に見ても、強みであるボールを前線へ運べる能力とチャンピオンシップでのプレー経験値を加味するとルートンのバックラインにフィットする事だろう。

2) ジェイク・クラーク=ソルター

ジェイク・クラーク=ソルターは、今シーズン、(チェルシーから)ローン先のコベントリー・シティでプレー。バルべ同様、3バックの左を主に担当し、センターバックから出すラインブレイクパスを攻撃に繋げるために非常に重要な一員を担った。
この選手は、非常に優れた運動能力も持ち合わせ、個々でのディフェンスも強い力を発揮、ディフェンスラインの背後をカバーするスピードも非常に優れている。空中戦の強さはバルベ以上であり、さらに前方へのパスは常に正確、その運動量はファイナルサード付近でウイングバックをサポートするのにも有効である。オフェンスでの平均値以上の貢献は、孤立した状況でのポゼッションの強さをも示している。

また、24歳の彼をフリーで獲得する事は、大きな転売価値を生む。しかし、クラーク=ソルターには他のチャンピオンシップクラブや海外クラブから多くの関心が寄せられているようで、ハッターズにとっては給与面が支障となる可能性がある。それでも、ルートンが彼を確保する可能性はまだ残っているし、もしそうなればとても良い補強だ。ネイスミスからアップグレードも期待できる。

3)ナビィ・サール

ナビィ・サールは全く異なるスタイルのセンターバックである。1対1の守備は非常に優れているし、ルートンのスタイルに合わせたプレーヤーマークへの機動力がある。ボックス内の守備も非常にうまい。しかし、ポゼッションにおいては、カル・ネイスミスやヨアン・バルベ、ジェイク・クラーク=ソルターのようなスタイルには到底及ばないだろう。
図で示したように、サールはディフェンス面においてデュエル勝率はリーグ最高のディフェンダーの一人であり、インターセプトとブロックショットでも高い数値を持っている。これは、ハダースフィールドのプレースタイルが、リーグでも最もプレスの少ないチームの一つであり、より深くコンパクトにディフェンスする事、センターバックには高い守備力が求められる事に起因している。
対照的に、ルートンはリーグで最もプレスをかけるチームの一つであり、センターバックは深い守備一辺倒ではなくより多くのスペースで守備をする事ができた。サールは、デュエルに長けており、運動能力も高いので、このような要求にも対応できる可能性を秘めている。
しかし、ポゼッション時、ボールを運ぶ事においては非常に苦手で、コンスタントな前線の足元への配球は苦労するだろう。これはルートンのダイレクトプレーによってカバーできるかもしれないが,,,。またサールと契約すると、ネイスミスやリース・バークがサイドで行っていたような、深い位置からプレーをスタートして、さらにウイングバックを高い位置でサポートする動きは減り、その点はダウングレードするだろう。
総合的に見れば、サールはネイサン・ジョーンズが常々話している「基本的な事」を確実に実行するだろうが、それがサールの限界でもあり、ネイスミスがこなした様なポゼッションの役割を果たす事はできないだろう。

4) アキン・ファメウォ

ファメウォは2019年にノリッジに加入するべくルートンを去った。1年で契約が切れる事と、ノリッジのトップチームにすぐに影響を与える可能性がない事を考えると、リーズナブルな金額で獲得できるだろう。下記に説明するように、彼との契約はリスクをはらむが、チャンピオンシップに順応するための運動量とボールプログレスの資質を持っており獲得の価値はあると思う。
ファメウォの守備データはかなり低い。私はこれをもたらしたいくつかの重要な要因があると指摘したい。チャールトンでは、ディフェンスライン以前の中盤での守備構造が時にかなり脆く、ファメウォも非常に無防備な状態に晒されていた。さらに、ポゼッション時、特にライン間の選手に近づくためのタイミングなど役割付けも明確でなかった。ルートンのシステムの中でなら、これらをクリアにする事により彼の能力を引き出す事が出来るだろう。
ネイサン・ジョーンズはかつてファメウォを「ロールス・ロイス」と表現したが、彼は今でもその身体能力の高さをキープしている。リカバリーのスピードは非常に速く、背後を巧みにカバーする。マンツーマンディフェンスも、データが示すよりも優れており、バランス能力と機動力を発揮して、ボールを持った相手選手の動きに合わせて対処する事ができる。前述したように、彼のディフェンスにはいくつかの大きな欠点がある。そのひとつは、サイドを駆け上がる相手プレーヤーへの反応が遅い事。ただ、これはルートンのコーチングスタッフが、本来持っている非常に高い運動能力を引き出して成長させる事が出来ると思う。
ポゼッションに関しては優れた能力を持ち、チャンピオンシップレベルにおいては、ファイナルサード周辺でボールを保持し前進させるのに非常に有効なオプションだろう。昨シーズン、ゴールキックからのプレーでいくつかの重要なミスを犯したが、ルートンのディフェンスシステムはダイレクトプレーを多用するため、このようなミスは未然に防げるだろう

ファメウォはルートンが能力を成長させ、価値を高める事ができる選手だろう。すぐにチャンピオンシップに対応で出来るわけではないが、このレベルで成功できる基本的な資質は持ち合わせているし、ルートンのディフェンスシステムにもフィットする。

<オプションのランキング>

ジェイク・クラーク=ソルター 
ディフェンスとポゼッションの両面で明らかにベスト。ルートンのディフェンスとオフェンスのシステムに完璧にフィットする。難点は、彼に対する他クラブからの関心が非常に高い事。

ヨアン・バルベ 
ボール運びが上手く、チャンピオンシップでの経験も豊富、選手対選手のマークシステムにもよく対応している。難点は年齢と、NJの「ハングリー」タイプの選手という型にはまるかどうか。

アキン・ファメウォ
クラーク=ソルターのように高い能力を持つ選手だが、現在のプレーには多くの欠点がある。チャンピオンシップへのステップアップには時間がかかるが、十分な資質を備えており、良い投資となるだろう。

ナビィ・サール
ディフェンス面ではバルベやファメウォよりも優れているが、ポゼッション面では非常に見劣りする。ネイスミスとは全く異なる選手で、ダウングレードとなる。28歳という年齢もあり、その価値を高めるのには苦労しそうだ。

ヘッダーイメージ:写真著作権 (c)ガレス・オーウェン/LTFC

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