医師の言葉に傷ついた時
「お医者さんでまともな人は少ないよね」とか、「失礼過ぎる、横柄過ぎるお医者さん、多すぎる」とか、よく聞きます。
先日も、他人様のブログを拝読していたら、乳癌手術後の定期検診の診察で、ドクターに「胸に垢が残ってますよ」と言われて傷ついたという記事がありました。乳癌手術や、その後の放射線治療の火傷跡で、皮膚が変色してめくれてしまうせいで、決して垢ではないのに、「汚い奴」みたいな扱いを受けて辛かった、と。そのブロガーさんにとても同情しました。そのドクターは何を考えて、そんな発言をしたのだろう?と思いました。今回初めて担当されたとても若いドクターだったそうです。若くて経験が少ないからといって、言っていいことと悪い事があるだろう、と怒りが湧きました。
が。
もしウチの息子がそのドクターだったとしたら、そういう発言をしかねないな、と思ったのです。息子は発達障害です。他人の気持ちを考える、という事が苦手です。
もしそのドクターが息子だったら、患者さんの胸の皮膚に黒っぽい皮膚の残存みたいなのが残っていたら、「黒っぽい皮膚の残存=垢」と機械的に処理して、また、「垢は不潔なので取り除いたほうがよい」という杓子定規な考えから、「垢が残っている」発言を、多分するだろう、と思います。もし逆に自分の皮膚を見て誰かに「垢が残っているからもっとちゃんと洗いなさい」と指摘されたとしても、息子は傷つかないし、「ああそうか、じゃあもっとちゃんと洗わないとな」と淡々と思うだけなので、相手が傷つくなどとは、想像もできないからです。
身内に医者が多い一族なのでよく聞くのですが、医者に発達障害はそこそこいるようです。医師免許を取った甥っ子も、医学部時代、周囲に発達障害らしい医学部学生はいた、と言っていました。ただ、そういう人達は、なかなか大変な思いもしていたそうです。医学部では担当教授が絶対的権力を握っているのに、その教授の機嫌を損ねるような事ばかり、彼等はしてしまうからです。グループで行動する時なども、足手まといというか、周囲に合わせて察して自分も動く、という事ができず、これまた教授からコテンパンに怒られる、目の敵にされることになるのだそうです。甥っ子などは、気の毒だなあと思って、そういう人達を見ていたそうです。
こういう医学生達が国家試験をパスしドクターになるわけで、彼等は患者さんの気持ちを考えての言動をとる事が苦手(というかできない)ですから、「まともじゃない」「失礼」「横柄」と思われてしまうのだと思います。学生時代の教授は彼等を叱り飛ばせましたが、弱い立場の患者は不愉快だと思っても彼等に怒るわけにはいきません。
よく考えたら、私自身も、担当医の言葉に傷ついた事があったなあと、過去を振り返って思います。でも、あれも相手が発達障害だと思えば、傷つく必要もなかったなあと思うのです。
担当医からひどい扱いを受けると、とても辛いですが、相手がもしかしたら発達障害かもしれない、と思ってみると、少しは救われるかもしれません。彼等の言葉は不適切であっても他意はなく、傷つける意思もないのかもしれない、と思ってみる、というか。
それに、その失礼なドクターが発達障害であれば、少なくとも彼等の言葉に嘘はありません。患者を適当にあしらって、いい加減な事を言ってごまかす、みたいな事はしないと思います。また、彼等は診察に手を抜く事も、分からないのに分かったフリをする事も、しません。言葉や態度は悪くても、診察自体は間違いないものをしてくれたと思っていいのではないかと、私は思いました。というか、私はこれから、ドクターの言動に傷つけられたら、そう思おうと思います。
一方、もしこの記事を、発達障害のドクターがお読みでしたら、そして、ご自身の無意識の言動が患者さんを傷つけてしまったと気が付く事があったら、次回の診察の時でもいいので、患者さんに一言謝ってくれたらいいなあと思います。もうずいぶん前の事だし、わざわざ謝るほどの事ではないし、と思われると思いますが、言われた方は結構長く引きずっているものです。一言謝ってもらえたら、そして他意はなかったとわかれば、患者さんは本当に救われるのです。
ドクターに関わらず、発達障害者が無意識に他人を傷つけてしまうのは仕方ないにしても、傷つけてしまった事にもし事後気が付いたら、間髪入れずに謝る事で、双方が救われるのではないかと思います。
私も息子が発達障害なので思うのですが、発達障害者はわりと、自分が他人から傷つけられた事は強く意識しますが、自分が他人を傷つけている事には無頓着だったりします。分かるのは自分の気持ちだけで、他人の気持ちは全く想像できないので、どうしてもこうなってしまうのです。ましてやドクターのように権力を持つ人の場合、誰も注意してくれないので、余計に、自分が他人を傷つけている事に無自覚になってしまいます。それが冒頭書いた、「まともな医者は少ない」とか「失礼で横柄な医者が多い」という一般認識に繋がってしまうのだと思います。
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