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発達障害に対する1つの解決策

 大学生の息子は、年度替わりに、大量の講義資料の整理をする。1人では無理なので、私も手伝うのが恒例だ。

 リビングに大量の講義資料を運び、残しておくべき資料をえり分けて、学科ごとにファイリング(捨てる資料が大量に発生する)していく。

 山のような資料をはしから一つづつ見ていく作業なので、しんどいだろうなあと思っていたが、やり始めると、意外と楽しい。「この先生、変わってたよね」とか、「この先生は優しかったね」といった風に、二人でワイワイ言っているうちに、作業は2時間ほどで終了する。

 ファイルを息子の部屋に運び、定位置にしまっても、棚の半分以上が空白になる。ここに、来年度のテキストや資料が積みあがっていくわけだ。息子はニコニコしながら「来年度の勉強をするのが楽しみになってきた」と言う。

 昨日まで、講義資料満載の部屋にいた時は、そんな事、一言も言わなかったのに。資料を整理した事、来年度用に棚に空白をあけた事、が、彼を精神的に前向きな気持ちにさせるようだ。なんにせよ、楽しみで良かった。

 その後、息子が、意外な事を言い出す。

「僕、〇〇はしては駄目、と注意されるのがものすごく嫌だけど、注意されなくても、〇〇を止めれる方法が、分かった」

「へ~。何?どんな方法?」

「何かに一分一秒を惜しんで集中したらいい。そしたら、その〇〇は止められる」

なるほど。

 例えば息子は、あまり親しくない他人様にでも、プライべートな事を、ずけずけ聞く癖がある。生年月日とか、住んでいる場所とか、結婚しているかいないか、とか。それは止めたほうがいい、と私が再三注意しても、やめないし、むしろ、注意されたほうが余計にやるようになる。更に、注意された事に耐え切れず、注意してきた私に対して、長時間絡み続けるという悪癖も再発する。

 だから息子には、何も注意できないのだが、他人様に迷惑をかける行為に対しては、私も、「注意しても意味がない」「私がまた絡まれる」と分かっていても、「それはこうこうこういう理由で、やめたほうがいい」と噛んで含めるように言い聞かせる。でも、どれだけ時間をかけ、どれだけ丁寧に、ありとあらゆる方向から説明しても、息子は、他人様にプライベートな事をずけずけ聞く悪癖を直さない。

 発達障害者は、人から注意されても自分の悪い癖を直さない、というのは知っているが、健常者からしたら、この特性は、本当に忌々しいものだ。

 遅刻癖を直さない。忘れ物やなくしものをよくする。息子にはこれらの悪弊はない。これらは発達障害者の悪癖の代表格で、周囲の人間からしたら、「直してくれよ」と思うもの。でも、当の発達障害自身は、注意されても無駄、だって直せないのだから、と言い切る。

 でも、息子いわく、「期末試験の為に、一分一秒惜しんで勉強していたら、いつの間にか、人にプライベートを聞きたいと思わなくなった」と言うのだ。

 あれだけ私に注意されても、聞かなかったのに。

 この息子の言葉から、思ったのだが、発達障害者には、健常者以上に、何か心から打ち込めるもの、それに集中できるものが、必要なのではないか。そしてそれが、生活の糧に直接的に繋がるものであれば、最高だと思う。

 昔は「職人さん」と呼ばれる職業が沢山あった。自分が打ち込める分野の職人さんになれたら、発達障害者にとっては幸いだったのだろうと思う。今は、職人業が減ってきていて、残念だ。

 いずれにしても、注意されても絶対に聞かない発達障害者に対しては、何か打ち込めるものを探してあげる事が、一つの解決策になるのだろう。少なくとも、息子本人がそう言っていたので、確かだと思われる。

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