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大阪天王寺で宿坊に泊まる

 地下鉄谷町線四天王寺前夕陽ケ丘駅で下車し、徒歩6分。途中、愛染まつりで有名な愛染堂勝鬘院門前の愛染坂を下り、松屋町筋を左へ折れると、都心型の宿坊「和空 下寺町(わくう したでらまち)」が見えてくる。
さらに南へ歩くと、真田幸村最期の地、安居神社や法然上人が住んだといわれる一心寺も。大阪を舞台に繰り広げられた歴史ドラマをたどりながら寺社巡りを楽しめるおすすめエリアだ。

 天王寺区の西山忠邦区長によると「上町台地一帯には多くの名所旧跡が点在している。区内にある約200の寺院のうち、80が下寺町に集中しており、全国でも珍しい寺町」という。

 そもそも宿坊とは、寺社を参拝する人のための宿泊施設のこと。最近では若い女性や外国人観光客から注目を集め、宿坊のあり方が多様化。下寺町には宿坊が一軒もなかったことから新しい形の宿坊が誕生した。

 建物は3階建てで、鉄骨造りの住宅のような近代的な外観だ。ところが、一歩中に入ると、和の雰囲気が漂う空間が広がっていた。客室は2階と3階に26室。畳の和室に高さの低いベッドが置かれていて、ゆっくりくつろげそう。一人客用にシングル部屋も用意されているので、仕事帰りに宿泊して翌朝出勤ということも可能だ。

 1階には52畳の大広間がある。ここで写経、写仏、座禅を体験できるほか、ヘルシーな精進料理を味わえるのが一番の売り。オプションメニューで、茶道や着付け、数珠作りなどのメニューも用意されている。

 さらに興味深いのは、近隣の寺社の協力によって実現した寺での修行体験だ。愛染堂では、毎朝午前7時からのお勤めに参加でき、厳かな中で行われる護摩焚きを見学することができる。

「施設内で完結するのではなく、外に出て界隈(かいわい)の寺社に足を運んでもらうことで地域の活性化につなげたい。ボランティアによる無料ガイドと、寺社参拝も基本パックに含まれています」と、和空プロジェクトの熊澤克己社長。今後は寺社で体験できるメニューを増やしていくという。

 早速、愛染堂勝鬘院にも寄ってみた。ここは聖徳太子が開いた寺で、金堂にまつられる愛染明王は主に良縁成就、夫婦和合の本尊として有名だ。愛嬌(あいきょう)アップの御利益もあるそうで、紙に書いた願い事を両手ではさみ、言葉を唱える。参拝の後は、持参した朱印帳にご朱印を押してもらった。

 勝鬘院の山岡武明住職は「宿坊建設の話を聞いたとき、チャンスと思いました。朝のお勤めを人に見せることはなかったので改めて練習しています。質を高めて、多くの人に日本の伝統文化に触れてほしい」と話す。

 7月には松屋町筋に路線バスも復活。宿坊を拠点に寺社巡りが便利になることで、寺町を訪れる人が増えることが期待されている。

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