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手紙「ライフデザインの源より」2024.11.01 町野弘明より皆さんへ
先程、京都から福岡へ辿り着いた…生来の縁起のある地に導かれ、様々な物語を想いながら数年ぶりに土を踏んだ。読んできた生命誌の本では、今やサピエンス史的に農耕文明のあり方が問われ、農業生態学的にその地本来の土のつくり方が求められている。九州の土、そしてカルチャー(「耕す」の原義)はどんなものだったか…
「地霊」という言葉がある。アニミズムの一種で、ある土地に宿り、その土地を所有したり,その豊穣を司ったり、またそこに住む人や物を守護したりすると信じられている精霊をいう。民俗学的に「ゲニウス・ロキ」ともいい、その土地の風土、固有の歴史などを十分に尊重することが、すぐれた「物語」を生むという思想である。
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先日、服部さんと辿った弊社のソーシャルライフ・レコードはまさにその「地霊」による「物語」に導かれた感がある。会社は東京でベースがつくられた後、被災地・陸前高田で伝統的な発酵の力で人や物が守られ創造的復興を遂げた再生の物語に導かれ、続いて京都・建仁寺にて650年続く能の固有の歴史の力に学んで事業継続を図った再生の物語へ…
「再生」…生命誌的にいえば、あらゆる行動の中心に生命を据え、社会の拡大・進歩を見直し、土木や循環を原点から考え直す「リジェネレーション」の意、エコシステム的な「本来の道」につながる。この間、民俗学の里、岩手・遠野では生命と土を大切にし再生を図る自然農法の物語に深く気付かされる地霊にも出会った…
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その後、日本の真ん中・静岡の包み込まれるような風土や、蒲原の宿場町の醤油蔵でさらに醸し出された「ライフデザイン」の旅による、地域や社会での再チャレンジを目論む再生の物語に、また京都へ戻り、東寺や神護寺にて生誕1250年を経た空海の事績の振り返りによる、心の問題やマインドセットの再生の物語に至る…
そして今、服部さんの企画により、これら地霊による再生物語が東京の中心・丸の内にて、「物語思考デザイン」の世界観として学びの場に紡がれた。陸前高田、遠野、建仁寺、東寺、静岡でのストーリーテリングが、それぞれのシテ、ワキ(能における出演者)により再生の交響曲を奏でる…この後、自分たち事として導かれる物語ナビゲーションが楽しみである。
思えば、私にとって今年は、正月に観た能「翁」によって、それまで観えなかった世界に導かれる年だった気がする。「翁」はまさに神道が始まる以前の、アニミズム的な古代由来の「精霊の王」ともいわれる。あらゆるところに遍在する「翁」は、みなさんを様々な地霊の物語に導いている…
町野弘明
SBNライフデザイン・ラボ
ジェネラル・プロデューサー