The Scale of Orpheus (奥泉光「鳥類学者のファンタジア」から)
奥泉光さんの「鳥類学者のファンタジア」は大変面白いファンタジー小説である。
音楽も物語の主要なテーマであり(ちょっとネタバレだが)「オルフェウスの音階」という一種の音列が登場する。
これは弦なり板なりの発音体の長さをフィボナッチ数列に従って配列することによって得られる音階である。たとえば、フィボナッチ数列の第一項である1をピアノの中央ド(523.251Hz)においてみる。そして、発音体の長さがフィボナッチ数列に従うように(1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, ...)に延ばしていくと、その発する音の高さはどうなるかということを調べてみる。
もちろん仮想の発音体の長さはどんどん長くなるので音の高さはどんどん低くなっていく。また、12音平均律に従わないのも当然であるので、12音平均率に当てはめることはできず、若干高くなったり低くなったりする。それを第9項まで調べてみたのが上の図である。
このままでは見にくいので、奥泉さんにしたがって、オクターブを調整し、中央ドから上に向かって上行するように並べてみると次のようになる。
上段が私が試算したもので、下段は「鳥類学者のファンタジア」単行本に載っている音列である。どうして違ってしまったのかはわからない。ひょっとすると私の計算が間違っているか、逆に奥泉さんの計算が間違っているのかもしれない。
せっかくここまで計算したので、どんな音がするのか聞いてみたい。
最初の三つの音はおなじなので、3つ目からはじめて順に鳴らしていって和音をならしてみた。こんな感じ。あっけないので3回繰り返してみた。実はこれは結構大変で、SONARのTTS-1のピアノの音なのだが、数セント違う音高を出すために、ピッチホイールの値を計算してそれぞれ別のチャンネルに適用して、音の高さを合わせている。苦労した割にはどうってことないか。
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