Ravel Le Tombeau de Couperin

ラヴェルの「クープランの墓」は毎度言っているが、ラヴェルがこの曲のために丸々一つの和声体系を編み出しちゃったといった趣がある。

特にForlaneについては、以前最初の4小節だけ紹介したつもりになっていたが、まぼろしだったみたいだ。(でも楽譜のファイルは残っていた)

下に掲げるのは原曲の4小節と、その和声の骨格を数字で表したもの、それに下の段はそこから装飾を取り払った上で、古典的な和声に引きなおしたらどうなるかというのを示している。

この4小節が、E minor で、I-IV-II-V-Iという基本的な和声進行になっていることは、聞いてみればなんとなくわかる。原曲の指定は付点四分音符MM96だが、わかりやすいようにゆ~っくり弾いたものがこちら。4小節目はVの和音(属和音)と考えられるが、導音を半音あげることをせず、Dナチュラルのままになっているのが、E minorではなくEのエオリアンを感じさせる。

この部分の和声をじっくりみてみると、長三和音の5度音を半音上げた増三和音(aug)が多用されていることがわかる。順番にコードネームを振ってみると、

1小節目 Em +7 E aug +7

2小節目 E aug +7 on A     A aug +9 ⇒ 9

3小節目  F#m +7 9 11  F# dim 9

4小節目 G dim on B (Em の四六の和音の変形) Bm7 -9

5小節目  Em

となる。

下に示したのは少々解釈が違うが、以前やった分析である。一番下の段の和声の進行の表現が見やすいのであげてみる。

おそらくこの曲は、古典的な3度重ねの和声を7度音に留まらず、9度、11度あるいは13度まで拡張して、それぞれ半音の変異を加えることで成り立っているととらえることができると思う。すでにリディアン・クロマティックによる詳細な分析などもあると思うが、これは自分でやってみないとなかなかわからない。

最後に上の楽譜の下の段、「目黒のさんま」ではないが、小骨をとり、蒸し揚げて油気を抜いた、4小節の骨格の音はこちら。まったく、魅力のない響きになってしまうが、音楽の骨格は理解できると思う。

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