職場体験学習
中学生のとき、職場体験学習というものがあった。
実際に大人が働いている企業やお店にお邪魔して、どんなお仕事をしているか見てきましょう、という内容。
大体協力してくれるのは地元のお店。
スーパーとか、パン屋さんとか、本屋さんとかだった。
先生が黒板に行先と人数を書いて、立候補制で場所を割り振っていく。
パン屋さんと美容室が人気だったように思う。
すぐに定員オーバーして、じゃんけんで決めていた。
黒板の前で一喜一憂してさっさと場所を決めていく人達を前に、私は困っていた。
別にどこにも行きたくない。
だって別に働いているところ見たって、ねえ? って思ってた。
ほんの一日遊びにくる中学生に大したことさせてくれるわけないし、大したことさせてくれてもそれはそれで困るし。
何の責任も負えないし。
興味がある場所が一個もなかった。
どこにも行きたくないから、どこでも良かった。
どこに行っても一緒だと思ったのである。
そうして結局、一番不人気の警察署に行くことになった。
先生に頼まれたような微かな記憶もある。
「せっかく協力してくれてるんだから誰かしらは行かないと」って。
当日も全然わくわくしなかったけど、学校指定のダサいジャージを着て、警察署に行った。
にこにこの警察官が迎えてくれた。
パトカーに乗せてくれて、どんな仕事をしてるかホワイトボードを使って説明してくれた。
学校で良くないですか? って感じだった。
長机とホワイトボードの個室でほとんどの時間過ごすんだから。
その上時間が余り、その警察官の娘さんの話を聞かされた。
反抗期で困っていたらしい。
そんなこと、私達に言われても。
私達も今まさに困ってる。
時計ちらちら見る訳にいかないし、この話の出口も分からないし。
一刻も早く解放して欲しかった。
もうただそれだけだった。
最後はピーポくんグッズをお土産に帰った。
大変失礼な話だけど、心から「要らねえ」と思った。
思春期中学生とピーポくんの相性、最悪過ぎるでしょ。
体験学習なので、翌日学校でまとめさせられた。
他の班はお土産に焼きたてのパンを貰ったり、試供品のシャンプーで髪の毛がサラサラになってたり、可愛いグッズを貰ったりしていた。
心底羨ましかった。
夜道で光るピーポくんキーホルダーを羨ましがる人は誰もいなかった。
私はそのとき「余り物に福はない」ことと、「自己主張の大切さ」を学んだのである。
選択肢があるなら、「どれでもいい」という態度は排除すべきである。
あとから後悔しても遅いのだ。
という校外学習で一応学びを得たと言う思い出話。
パトカーの乗り心地はあんまり良くなかったです。