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子供の頃にしか叶えられない夢がある

昔、「少年アシベ」のアニメが放映されていた。
私はビデオで繰り返し視聴していた。

タイトル通り少年のアシベが主人公の日常アニメ。
アシベはゴマちゃんという名のアザラシを飼っている。
ゴマちゃんは大変愛くるしい顔とフォルムを誇りながら主役ではなく、あくまで主要キャラクター。
ゴマちゃん頼りではなく人間たちの日常を主題に描いているこのアニメ、すごい好きだったんですよ。

私は大人になってから原作漫画を買い直して読んでいる。
私の見ていた当時のアニメは配信してなくて再視聴が出来ないの。
ちょっと残念。
リメイクされてるからね。
そっちなら見られるんだけど。

この、少年アシベのアニメですごく印象深かったのが、ゼリーのプール。

アシベのお父さんは大工さん。
頭には白い鉢巻、茶色の腹巻をして、紺色のはんてんを羽織り、足袋を履くという典型的な大工さんスタイル。
アシベも「父ちゃん」と呼んでいて、全然気取ったところはないんだけど、芦屋商事の社長を父に持つ御曹司で、ケンブリッジ大学まで卒業している。

この父ちゃんが小さい頃、自宅のプール一面にゼリーを作ってもらっていた。
本人はゼリーのプールを歩きながらもぐもぐして、ゼリー食べ進めてるの。
プールサイドに控える芦屋商事社長「どうだ? 美味いか」と微笑んで見守る。
メイドさんたち「お坊ちゃまシロップもう少しお入れしましょうか?」と聞く。
みたいなシーンがあるの。

子供の時の私、衝撃を受けたね。
「ゼリーってこんなに大きくも出来るんだ!」って。

で、私は思ったの。
「じゃあ私はプリンが良い!」って。

だけどうち、実家芦屋商事じゃないし、家にプールない。
妥協して母に「お風呂でプリン作って」と頼んだら「今忙しいからあとにして」と取り合ってもらえなかった。
どうしてそれが駄目なのかという話を長々する時間が(おそらくは気力も)そのときはなかったんだと思う。
「またうちの娘がよく分からんことを言っている」認識だったんだね。
結局一度も作ってもらえることはないまま大人になった。

今でも原作漫画のそのシーンを目にするとそのときのことを思い出す。
きっとそれだけ私は本気で浴槽をプリンで埋めたかったんだと思う。
「カラメルもっとお入れしましょうか」ってされたかったんだね。

ふと、「今なら出来るな」って思った。
今なら実家出てるし、自分でやる分には怒られない。
買って来たプリンで浴槽を埋めること自体はお金と時間をかければ出来なくはない。

でもねえ、今、浴槽いっぱいのプリンにそこまで魅力を感じないのよ。

ポテトチップだって「中身年々減量してるけど、もっと減らしてくれていい」と思うくらいなの。
そんなにいっぺんに同じもの大量に食べられない身体になってしまったの。

しかもやる前から後始末とかその他諸々を考えると気が重くなる。

そう。私は大人になってしまいました。

子供の頃の夢は、子供の頃に叶えておくべきだったなあとしみじみ思った。
当時だったらすっごい喜んだと思うけど、もう遅いんだよね。
子供の頃にしか叶えられない夢がある。

ということで今日は夢にも時効があるというお話。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。

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