眼鏡が壊れた話
今年の春、帰省旅行前に起きた悲劇の話である。
私は視力が非常に悪い。
幼少期から、こたつの中に籠って本を読むのが趣味であった。
怒られながらも頑なにそういうことを繰り返した結果、小学校高学年の時に視力検査にひっかかった。
決して勉強が好きだったからとか、そういう立派な理由ではない。
私の目が悪いのはこたつの中で「かぎばあさん」や「ずっこけ三人組」を読み過ぎたせいである。
若き日の過ちと言えなくもない。
中学にあがってからは、コンタクトと眼鏡を併用して生きている。
今はほとんどコンタクトで、夜寝る前だけ眼鏡を使っている。
休みの日でも、外出の予定がなくても、コンタクトはほぼ毎日つけている。
私の視力は年々悪化しており、都度コンタクトの度を上げて対応しているのだが、眼鏡はそうではない。
眼鏡を付ける場所が限定的過ぎるが故に、わざわざ買い替えるタイミングがないのだ。
家の中だと大体どこに何があるか分かるし、眼鏡をかけるときはもう大体今日やることが終わっているから、多少視力が悪くても構わないのである。
というわけでもう四年くらいその眼鏡を使っていた。
プラスチックフレームの眼鏡は、毎日健気に頑張っていた。
そしてそれがある日突然壊れた。
正直に書く。
犯人は私だ。
私が寝ぼけて踏んだ。
弁解の余地はない。
実はこれまで何度も踏んでいた。
でも、意外と耐えてくれていた。
流石に今回は駄目だったらしく、あっけない最期を迎えた。
右側のレンズの横、あのネジの部分(丁番というらしい)のところがぽっきり折れた。
一瞬で目が覚めた。
「マジかよ」って声が出た。
私は裸眼で生活出来ない。
寝る時どうすんだよ問題に直面することになったのだ。
しかも、運悪くそれは帰省の数日前。
当日ももちろん仕事。
もう帰省まで休みはなかった。
私は応急処置として、アロンアルファで眼鏡を止めることにした。
畳むことは出来なくなっても良い。
とにかく私の目のあたりにレンズが来てくれさえすればいい。
必死で眼鏡を止めた。
しかし駄目だった。
何度やっても、ぽろりと取れる。
つい昨日まで元気だったのに、眼鏡さん復活の兆しが見えない。
それならばとテープでぐるぐる巻きにすることにした。
これも駄目だった。
セロテープも養生テープもマスキングテープも全滅。
軽く巻いても取れるし、厳重に巻いたらその穴から抜けるだけ。
仕方ないから休憩中、ネットで再注文することにした。
前回と同じ感じのフレームで、レンズは全く一緒の度数でネット注文した。
本当は今回は度数を上げたかったが、そうなると店頭で視力を図る必要があったので諦めた。
今回はスピードが重要なのだ。
ものすごい軌跡が起きて、二日くらいで眼鏡が自宅に届くことを願った。
しかし現実は厳しかった。
結局眼鏡は間に合わず、私は帰省の日の夜、ずっとこめかみに手を当てる間抜けな人になった。
帰省中、眼鏡が自宅に届いていた。
もちろん前と見え方が変わることはない。
こんなことなら最初から眼鏡屋さんに行けば良かった。
でももう今更そんなことを言っても遅い。
こんなわけで、夜間視力控えめで生活している。
この事件からの教訓としては、プラスチックの強度が下がり、壊れる前に眼鏡屋に行くこと。
そして何より眼鏡を踏まないことである。
形あるものはいつか壊れる。
しかし自分で最悪のタイミングで壊してはならない。
本当に、気を付けようと思っている。
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