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『大本営が震えた日』を読みました

最近私、吉村昭さんブーム来てるんですよ。

先月あたりからずっと吉村昭作品をはしごしてる。
著作が大量にある作家さんを追いかけるのは大変だって分かってたのに、分かってたのに、止められなくなっちゃったんですよね……。

たくさん賞を獲られている有名な作家さんですが、私が最初に読んだのは『総員起シ』。
去年読んで、著作の大量さに一度は諦めた。
「次の本を買ってしまったら止まらなくなる」という自覚があった。
そのときは自制が効いたんだよなあ……。
くう……。

で、今年に入り、『羆嵐』を読んだのがいけなかった。
スピンオフ作品が『海馬』に収録されていると知り、『海馬』を読んで。
そしたらもう止まらなくなったのよね……。
気付いたら次から次へと……。

『大本営が震えた日』は、第二次世界大戦開戦直前に起こったさまざまな物語をまとめた本、といえば多分分かりやすい。
日本は開戦時、奇襲攻撃を仕掛けることが決まっていた。
その作戦に従事した方々の記録。

私は大二次世界大戦を歴史としてしか知らない。
もちろん開戦に関しても、国としてのエピソードしか知らない。
だけど実際、国を運営しているのは人なので、実在の人物たちが動かしてるんだよね。

開戦の意図を悟られないように、しかし奇襲を成功させるために、各地で色んな作戦が同時にあちこちで展開されている。
どの作戦も失敗するわけにはいかないプレッシャーと戦いながら、誰かしらが命がけで臨んでいるんですよ。

そのそれぞれの作戦に当たる人物の言動が、読み手が混乱しないように分か
りやすく描かれているのが『大本営が震えた日』。
これはすごい技術だと思う。
人物も固有名詞も多数登場するというのに、分かりづらい箇所がない。

視点誘導が見事で、それぞれの場面で登場人物にきちんと感情移入してしまう。
緊張感も臨場感もあり、どきどきハラハラする。
上手くいくのかどうなのか。
目を離せず、すらすら読み進めてしまう。

他にも色々「すごいな」と思うんだけど、作品全体を通して私が一番好きな部分は、作者の主観が邪魔をしないこと。

悪者に仕立て上げられる人がいない。
かといってそれぞれが聖人なわけでもなく、ただそれぞれ実在の人間であり、それぞれの意思を持ち、行動している。
それが全体に及ぼす影響などは言及されるけれど、後世や作者自身の評価は入らない。
ただ淡々と、冷静に描かれているというか。

戦争を扱いつつも悲劇が誇張されていない部分がすごく良くて。
読み手に感想をゆだねてくれている感じがたまらなく好き。
他の作品もそうだけど、白黒つけないというか、ありのままを描かれているところがすごく良い。

ということで私は今『吉村昭作品ドはまり期』を楽しく過ごしている。
こうなると著作がたくさんあるという事実が幸せなことになる。
心置きなく読み漁る予定。

読書っていいよねえ面白いよねえという近況のお話。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。

それではー。

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