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推しに会ったらどうする?

美容室で「推しに会ったらどうする?」という話になった。

もしも推しに会ったら。

美容師さんの推しは星野源さん。
もし万が一いつ会ってもいいように、スマートフォンのロック画面は星野源、聞いてる音楽も星野源。
いつでも準備万端ウエルカム。
抜かりのない布陣。

興奮して嫌われないように、あくまでさりげなく声をかけ、しっかりと距離は保つ。
スマートフォンの画面を見せ、今現在なんの曲を聞いていたか伝え、「そこに立っていてもらうだけでいいので!」と言って自分の隣に少し遠い星野源さんが映るように自撮りをし、「応援してます」とだけ伝えて立ち去るそうだ。

とにかくファンであることだけは伝えたいと言っていた。
なるほどな、と思って私は聞いた。

一方の私。
何度妄想しても推しを目の前にしたら声はうわずり、舌はもつれ、情けない姿を晒す図しか浮かばない。

私の推しはRED SPIDERのJuniorさん。
ちょっとだけお口の悪いレゲエサウンドマンである。

私のロック画面はJuniorさんではないし、聞いている音楽もいつでもJuniorさんとは限らない。
隙だらけ過ぎる布陣で臨む。

しかし、私の推しの場合、どれだけ準備をしたとしても、むしろ準備をすればするほどひかれる可能性がある。
「キモい」って言われる映像、一秒とかからずに脳内再生出来る。
そして言われる「現場に来い」と。

私の推しは決して愛想が良くない。
躊躇いなく暴言を吐く。
こびへつらうという言葉が最も似会わない男。
それがJuniorさんである。

どれだけ熱く信奉しているかを説いたところで、絶対に最後まで話は聞いてもらえないし、すごい顔で睨まれると思う。
そして「ファンなら現場に来いや」と言われて終わる。
絶対にそう。
このシミュレーションに自信しかない。

私の推しにファンであることを伝えるには、とにかく現場に足を運び、ライブ中は飛び跳ね、徹底的にそのライブを楽しむしか手段がない。

だから私は推しに街で会っても絶対に声をかけない。

みっともない私を見られたくないというのももちろんあるが、手の届かない存在だからこそ良いという感情が最大の理由。

Juniorさんは私がファンであろうとなかろうと、格好良い音楽を作るし、とんでもない規模と数のイベントをこなすし、その一方でファンの為に生配信やらラジオやらを提供してくれる。

もうそれだけでお腹一杯。
私の場合は完全に片思いで良い。
私の存在など一ミリも脳内に存在しなくていいから、引き続き精力的に活動して欲しい。
そして一生片思いさせて欲しい。
望むのはそれだけである。

この思想を披露することで話題が盛り上がる図は全く想定されず、むしろ言われた方が困ると思ったので、私は美容師さんの話を聞いただけで別の話題に話を切り替えた。
この判断は間違っていなかったと自信を持って言える。

推しに対する思いを前面に押し出して良い派閥と、そうではない派閥がある。
私は間違いなく後者。

推しを応援する気持ち、密かに胸にしまっておいた方が良い場合もある。
私は今後も密かに推しへの想いを胸にしまい、誰かに迷惑をかけないようにひっそり生きていく所存。

推しは生きていてくれるだけで尊い。
そんなファン心理のお話。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。


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