【小話】失敗サプライズ
テレビを見ていて、同棲している彼女が「サプライズっていいな…」とぼそっと呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
彼女に気付かれないように彼女の部屋を見回すと、作りかけのパズルが目に付いた。
よし、これだ。
彼女がトイレに行っている隙にパズルのピースを1つ、ポケットに忍ばせた。
そして眠りに付いた。
彼女が探している時に、さっと出すんだ。
そして
「俺というピースが足りてなかったんじゃない?」
って言うんだ。
「やっぱり俺がいないとダメだな」まで言えたら完璧。
上手く言えるように何度もイメージトレーニングをした。
完璧だろ俺。
こういう事なんだろ?
女子を喜ばせるって。
翌日、彼女が「あれー?ない」
とパズルのピースを探し始めた。
まだだ。もう少し切羽詰まってからだろ。
彼女は無言で探している。
苛立ってきたのが分かる。
よし! 今だ!
「これ」
パズルのピースを差し出す。
俺の予定では「ありがとう!どこにあったの?」と彼女の目が輝く……。
「どっから出した?」
「え?」
「どっから出した? 今。そのピース」
「いや、その」
「ポケットから出したでしょ。隠してたの?」
「あ。違くて」
「隠して私が見つけられないの見て、楽しんでたの? 最低だね」
彼女は相当怒っている。
まずい。
ここで余計な事を言っては。
……正直に言うしかないか。
「昨日、サプライズして欲しそうだったから」
「は?サプライズ?これが?」
「……」
「これはね、嫌がらせって言うんだよ!」
余計怒られた。
「そういう、人の気持ち分かんない所、大っ嫌い!」
そう言って彼女は部屋を出て行った。
パズルは未完成のまま。
俺というピースは、彼女にははまらなかったみたいだ。