早朝ピカチュウジェット
実はポケモン世代である。
赤緑の、ゲームボーイがまだ色付きですらないころのポケモンをプレイしていた民である。
歳がバレそうな気がするけどそこはちょっとスルーして欲しい。
大人な対応を望みます。
二歳下の弟の熱望により我が家にやってきたゲームボーイソフト。
母は基本「なんでも平等」を謳っていたので、弟に与えるのであれば私にもと、赤と緑両方買ってきてくれたのである。
私は正直そこまで興味はなかった。
だけど一応、赤にしか出ないポケモンというのがいて、緑をプレイしている弟の図鑑を埋めるために協力していた。
ストーリー進行にさほど興味もなく、ただ可愛いポケモンを愛でるというトレーナー手腕を発揮していた私、ひたすらにレベルだけをあげて戦った。
当時の推しポケモンはダグトリオである。
当然ピカチュウ様の存在は存じている。
初期の丸っこいボディからどんどん垢抜けて、アイドル街道を駆け抜けていく姿はまさにスター。
国際的アイドル。
赤いほっぺがチャーミング。
そんなピカチュウさんと、昨年の帰省時、飛行機でお会いした。
可愛くない?
そう。私はピカチュウジェットに乗ったのですよ。
早朝六時三十分羽田発鹿児島行きスカイマーク。
望んでピカチュウを選んだわけではなく、本当にたまたまピカチュウだったの。
年に二回程帰省しているから、往復で四回飛行機に乗るんだけど、ピカチュウジェットに乗ったのはこのときが初めて。
ちょっと興奮したよね。
機内アナウンスもちゃんとピカチュウが喋る。
CAさんが通常アナウンスをしたあと、特典ボイスみたいな登場の仕方する。
「ねえピカチュウ?」みたいなCAさんの声も可愛かった。
機内で提供される飲み物の紙コップもピカチュウだった。
朝から癒されたよ。
朝六時半の飛行機に乗るためにこっちは三時半に家出てるからさ。
完全に寝不足だったけど、ピカチュウの声聞いたら「ああ可愛い」って。
ときめきで一瞬寝不足を忘れたよ。
離陸してすぐ寝たけどね。
降りる時のアナウンスもピカチュウボイスが入る。
「ご利用ありがとうございました」のお礼アナウンスのときですよ。
着陸して、シートベルト着用サインも消えて、みんな立ち上がって扉が開くのを待っているとき、機内に響くピカチュウボイス。
仮眠して少し頭がすっきりした私、少し機内を見回して思ったよ。
「子供、全然乗ってないな」って。
そりゃそうだよ。
平日早朝の便だもん。
ほとんど大人だよ。
しかも(おそらく)みんな寝不足の。
そんな大人が「早く飛行機から降ろせ」の圧をかけつつピカチュウボイスを聞いている空間、かなりシュールだったよ。
なんか、こう、絶対今じゃないよなって思った。
ピカチュウジェットが輝けるところ、もっとあるはずだよなって。
ピカチュウに罪はない。
飛行機の乗客にも罪はない。
需要と供給が一致しなかっただけ。
またピカチュウジェット乗りたいけど、行きは早朝だし帰りは遅いし、きっとピカチュウが輝ける環境ではないんだよね。
一度きりの軌跡に感謝しつつ、ここにあのとき確かに癒された乗客がいたことを報告したい。
ありがとうピカチュウ。
ありがとうCAさん。
快適な空の旅でございました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。
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