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『サタンタンゴ』を観てきた

ハロウィーンの日、7時間18分の超長尺映画『サタンタンゴ』を観に行ってきた。

これより前に観た休憩を挟むような長い映画は、ドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマンの『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』で、こちらは3時間25分。

『エクス・リブリス』も十分長いと思ったけど、『サタンタンゴ』は倍以上。

7時間半って、ほとんど労働時間じゃないの。

マーティン・スコセッシ、ガス・ヴァン・サント、ジム・ジャームッシュ、そして私の大好きなアピチャッポン・ウィーラセタクンと、世界の名だたる映画監督に影響を与え、伝説とも評される本作。

限定公開の期間はたった1週間ということで、どんな盛り上がりだろうとお祭り気分で映画館に赴いたけど、平日の昼間から映画館に出勤してくる物好きは想像していたより多くなかった。

この映画、7時間18分という長さだけでなく、超長回し映像で構成されているところも特徴のひとつ。

そして映し出されるのは、貧乏、疑念、依存、降り続ける雨、泥まみれ、タバコの煙。

快さとは対局にあるモチーフを半日ただひたすら観続けることになるんだけど、個人的な感想としては、それがなぜか心地よかった。

なんと言っても、作品の完成度がものすごく高い。

ナレーションの中でも「宇宙」という言葉が象徴的に使われていたけど、この映画自体も人間のコントロールを超えた宇宙的な完成度。

一般的な娯楽映画だったら絶対にカットされてしまう膨大な間。

そこに没入していると、自分の存在がスクリーンの中に溶け込んで、映像に閉じ込められた「空間」としてその場を体験しているような、不思議な感覚になる。

最近流行りの映画では矢継ぎ早に繰り出されるシーンを必死で頭で理解するようなものが多いけど、この映画は真逆。

「みた」というより「体験した」という表現がぴったりで、どれだけ事前にネタバレ記事や評論を読んだとしても、実際に7時間18分を体験してはじめてこの映画を味うことができるんだと思う。

経済と宗教という、人間には一生つきまとう普遍的なテーマを題材に、ものすごく皮肉が効いていて、そしてものすごく愛があって。

めっちゃ長いけど、また機会があったら観るかもしれないな。

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羽鳥明弓/Ayumi Hatori
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