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市村正親と鹿賀丈史の名演技と宮本亞門の脚本と感動のラストシーン[ミュージカル 生きる 感想,批評,レビュー,あらすじ]

ネタバレ注意
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 ミュージカル「生きる」(原作:黒澤明)を鑑賞したので感想等を記事にします
 公園を作る、というのが主人公の渡辺勘治最後の仕事である。病気がわかるまでは面倒な仕事と向き合ってこなかったが、自分と向き合って公園の仕事からは逃げないと決意したということだろう。しかも、話が進んで公園に息子との思い出があるとも明らかになる。主題は「病気との対峙」「残りの短い時間をどう過ごすのか」というよりも、親子の愛情であると私は思った。舞台のセットで渡辺勘治とその息子が住まう家が用意されている。一階が渡辺勘治、2階が息子夫婦の部屋である。終わりゆく渡辺勘次と、子供ができ、これから家庭を築いていく息子夫婦が相対的に表現されていて、物悲しかった
 序盤、役所の仕事の仕方について職員たちが演じる場面があった。組織の仕事というのはどこでも上からの指示に従うのみであり、確かにつまらない。役所に勤めているとそれが顕著に表れるのだろう。平よりも偉い主任は課長に従い、その課長は部長に従い、部長は自分よりも立場が上の人間の指示に従っているだけである。会社員、公務員、その他組織内で労働すれば、この構造は避けられないが、生活の長い時間を指示に従って過ごすというのは、人生のしょっぱい部分である
 小説家が舞台の案内役であり、時々舞台の前の方に出てきて物語の進行を説明してくれた。全てのミュージカルで進行役がいるのかは知らないが、初めて観劇する私からすれば、新鮮で面白かった。
 モンペを着た市民が公園を作ってほしいと役所に訴えにくるシーンの歌が上手かった。泣けるシーンではないが、なぜかわずかに泣けた。おそらく市民役の方々の演技が上手かったからだろう。
 席が舞台より遠く役者の顔を確認することが出来なかったが、十分に楽しめた。当たり前かもしれないが、出演者誰もが歌が上手く、心震えるものがあった。特に市村正親さんの歌が素晴らしく、感動した。舞台後の挨拶も聞きごたえがあった。主人公が病気をきっかけに自らの人生を振り返り(起)、残りの時間を悔いなく過ごすと決意する(承)、黒江町に息子と思い出がある公園を作り(転)、物語の終わりに渡辺勘治は息子の思い出の中に生きる(結)という、起承転結があり、楽しく観れたミュージカルだった

参考リンク
2020年版冒頭シーン特別公開】ミュージカル『生きる』舞台映像


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