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スズメキビキビ

ニューヨークに来るまで、スズメの砂浴びは見たことがなかった。夏、まだらに芝の生えた公園の一角に、スズメが何羽かバタバタやっている。乾いた土が蟻地獄の罠みたいに逆円錐にいくつか凹み、その一つに1羽が飛び込むと、勢いよく胸を左右にゴシゴシバタバタッ、下腹部をゴシゴシバタバタッ、これでもかこれでもかと言わんばかりの熱の入った擦りよう。全身を使って胸と下腹部を交互に繰り返す、何たる集中と運動量。私がやったらと思うだけでフラつく。もふもふの下にムキムキの筋肉を思う。他の凹みでもそれぞれがゴシバタやっている。気が済んでそこを離れる1羽も、さっと入る別の1羽も、テンション高くキビキビと動く。なんかストイック。この血圧の高そうな感じがスズメの魅力だ。

テンションの高い彼らは、枝の細かい小潅木に何十羽ととまり、一斉に喋る。ビチビチビチビチ止まらない。「それじゃあ誰が何言ってるのか分かんないでしょう」とツッコミたいけどけど聞いてくれなそう。こんな街中の木の内側で、「私たちは誰にも見えてない」ことになっているのか無礼講なのか、人通りを気にする様子はなく、立ち止まる通行人も毎度私一人だ。


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