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日常の何気ない言葉が、誰かを救っている

フリーランスの編集者にも「新年度」がやってきた。

1月末に退職し、転職活動をしながらひとりで迎えた新年度。
雇用先の上司・チームメンバーはいないので、前々職の先輩AさんにこんなLINEを送った。

「Aさんは、退職してもずっと私の先輩なので挨拶させてください。新年度もよろしくお願いします!」「サイトをグロースさせ続けているAさんを尊敬しています」

すると、こんな返信が。

「こちらこそ、よろしくお願いします! サイトのPVが最高記録になりそうです! 鳩田さんのおかげです。いままでも、これまでも」「歴代スタッフのおかげで達成できたと思います」

なんて素敵な言葉なんだろう。

ちょうど1年前。

編集長を務めたニュースサイトが最高PVを達成したときも、先輩は同じ言葉を伝えてくれた。
1年が経ち、また同じ言葉が聞けるとは思っていなかった。
退職しているのに。

そのとき、あらためて思った。
今、所属はしていないけど、ずっと「チームメンバー」なんだな、と。

同社のスタッフやOBとは今も連絡を取り合うし、飲みにも行く。相談にものるし、のってもらっている。とくに今まで関わったプロジェクトのチームメンバーは、一緒に困難を乗り越えてきた「戦友」という感じ。A先輩も然り。

携わったサイトは今でも見ているので、誤植を見つければチームメンバーに修正依頼の連絡をすることも。業務は行っていないけど、気持ち的には、ある意味そこまで変わらない。
「チームメンバー」という関係性はずっと続いている。終わっていないのだ。


前々職はリファラルで入社した。そのA先輩は、私を誘ってくれた人だ。

じつは2回声をかけてくれ、1回目は別会社へのお誘いだったが希望業界ではなかったのでお断り。数年後に再度声をかけていただき、通常の選考を経て入社となった。

その先輩に「なんで誘ってくれたんですか?」と聞いてみた。すると、

「鳩田さんの能力を見込んで、はもちろんのこと、一緒に働けたら絶対楽しいし、笑いが絶えないだろうなと思って」と伝えてくれた。

いつもさらりと素敵な言葉をくれる。
実際、めちゃくちゃ楽しかった。大変なこともたくさんあったけど、ユーモアを交えて楽しく乗り越えた。成果も残した。

私にチャンスをくださったA先輩から、心に残る素敵な言葉をたくさんいただいた。心のブックマークに永久保存してある。

そんな言葉をいただくたびに「いつか自分も恩返ししたいな」とずっと思っていた。


でも、じつは知らず知らずのうちに、私もその先輩を救っていたという。

数ヶ月前の飲みの席にて。

「鳩田さんの言葉、今も忘れないんですよ。
“Aさんが営業で取ってきた仕事は、どんなに大変でも全力でやる。任せてください。なんとかします。だから安心して取ってきてください”って。
いろいろ大変だったけど、この言葉で頑張ろう! って思えたんです」


えーっと……



「私、そんなこと言いましたっけ?」(おい)

なんと、まったく覚えていない。

普通に思ったことを言っただけ。あたりまえの感覚だったので覚えていなかったのかもしれない。


そこで気が付いた。
「私も素敵な言葉を伝えたい!」と思っていたけど、

「日常の何気ない言葉でもいいんだ」と。

「恩返ししたい」「喜ばせたい」と、力の入った言葉じゃなくてもいいんだ。覚えていないくらいのさりげない言葉でも、知らず知らずのうちに誰かの心に残っているのかもしれない。誰かを救っているのかもしれない。

だから、いいことや気のきいたことを言わなきゃって思わなくてもいい。
上手く表現できないから……と何も伝えないのはもったいない。だったら「素敵」「好き」「最高」とか、短い言葉でもいいと思う。
何よりもちゃんと「伝える」ことが大切なんだ。




いま、自分は所属先のない、野良編集者だ。

でも、A先輩含め「チームメンバー」と思える人がいる。所属していなくても、別の場所にいる仲間だと思う人がたくさんいる。

そんなチームメンバーに、どんどん想いを伝えていきたい。自分にとってあたりまえのことや、普通の感覚だと思うことでも。
感謝も喜びも、素直にちゃんと伝えていきたい。

これまで「チームメンバー」の言葉にたくさん救われてきたから。

これからは少しずつ恩返しをしていきたいな、と思う。


そんなわけで。
チームメンバーのみなさん、新年度もどうぞもよろしくお願いします!


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