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複合施設ブーム考察

昨今、道の駅をはじめとした複合施設のオープンが大流行中です。
たくさんの自治体が、地域活性や農業・産業振興の目的で複合施設を建設しています。
複合施設の運営者として、私自身の頭の整理も兼ねて少し考えてみました。駅長ブログに何回かに分けて投稿したものをまとめてます。

1、ブームの背景

ブームの背景にあるのは…
建設の際、国からの大きな(金銭的な)支援が期待できるというのも背中を押してくれるでしょう。
もちろん、道の駅のように利益を産むことができる施設は、ただの『ハコモノ』とは違い将来に渡って自治体に交流人口の増加や金銭的なバックマージンとしても利益をもらたす可能性が高いです。
道の駅の中には利益の○%は自治体に還元するというところも多くあります。
初年度から2000万円の利益を出した道の駅もありますから、ふるさと納税と同じように税収以外の収益としては魅力的です。

ですが、私がここで言いたいのは「簡単に考えないで欲しい」ということです。

言葉を選ばずに言えば、既にお客様からは
「道の駅って当たり外れがあるよね」
などと言われます。(怖い怖い怖い😱  その恐怖と日々戦っていると言っても過言ではない。)

思うような収益が得られずに、結局自治体が維持費や運営費を負担しているところも多いのが実情です。
特に指定管理制度(詳細については、ウィキペディア参照 Wikipedia指定管理制度)を採用している場合は従業員の職場環境も不安定です。

ですが公の部分と民間の部分が入り混じった道の駅のような営業形態というのは、現在の地方自治においては、とっても効果的で効率が良く現実的だと思います。

現在の日本では、大きな資本を持った企業の力がとても強いです。
営利を目的とした企業体ではなかなか扱えずに、滑り落ちてしまう業種や業態を救えるのがこの仕組みです。

例えば、小規模農家はまさにその状態で、かといって自分で売り先を探したりオンラインで販売するスキルもなく…
それが続いたら、日本の一次産業は間違いなく廃れて行きますよね。

庭園の郷保内の一番のウリは広い公園のような敷地に植えられている樹木が全て売り物である、という点です。
少子化や和風庭園離れから下向きだった、300年続いている保内地域の産業を新しい形で発展させよう!というのが「道の駅」庭園の郷保内の取り組みです。
これまでの「庭=お金持ちのもの」というイメージを払拭して間口を広くして、まずはたくさんの方に『こういう産業があること』『興味を持ってもらうこと』が目的です。

文字通り、保内地域と一心同体なのが「道の駅」庭園の郷保内です。
赤字になっても止められないのです!!!

2、成功の秘密

そんな複合施設運営。上手くいくポイントって何なのでしょうか。

お客様の『道の駅愛』に助けられている毎日ですが、昨今のお客様は本当にお目が高い…
商品に対してのクレームならまだしも、

「あそこの道の駅は何がやりたいのかわからない」
「ここの道の駅のコンセプトは何なのか」

というど直球の意見をいただくことがあります。
これは全国「道の駅」女性駅長会の会長としての立場から言うと、『道の駅の広報』が成功している証でもあり嬉しいことです。
(イチ運営者としてはドキッ!としますが😅)

これは、全国一号となる道の駅からここまでの歴史を作ってきた先輩方のお力に他なりません。
たくさんの方の努力の上で、私もお仕事をさせていただいています。

「道の駅のくせに、野菜が少ない」
「道の駅のくせに、正月に休むなんて」

というご意見もいただきます。
「道の駅=直売所」「道の駅=お土産を変えるところ」
というイメージが浸透している証拠ですよね。
それも、これまで頑張ってきた皆様の努力の賜物。

庭園の郷保内は、
「こんな道の駅あるんだ!」
と言っていただくことも多く(これはこれでアリだね、と思っていただいてるという前提で…)、お客様に新鮮で前向きなビックリを提供したい。という個人的なビジネス信条に沿っており、お褒めの言葉と受け取っています。

近いところでは、「道の駅」燕三条地場産センターは野菜がなくて怒られる道の駅ですが金属加工業で世界的な有名な燕三条地域のプロダクトを一挙に見て、試して、買うことができます。
コンサートホールと一体になっている道の駅もありますし、
「こんな道の駅あるんだね」
という道の駅が増えることにより、お客様から「この道の駅のコンセプトは何ですか」という質問に繋がっているんだろうなぁ、と思います。

北陸地域のアンケート結果から見ても、コンセプトがはっきりしている道の駅が人気上位に入っている印象です。

コンセプトって、お客様へのメッセージだと思っています。
メッセージがダイレクトに伝えられるように、私もスタッフも努力しています。
道の駅を訪問される際には、その道の駅のメッセージを探してみてください。

3、複合施設の運営はめっちゃ大変

さてそもそも、なぜこのような考察をしているか?というと…

「思うような運営ができていない」
「これから道の駅/複合施設を作ろうと思っているが何からして良いかわからない」
「設計中だが、どうしていいかわからない」
「運営者が決まらない…」

というご相談をいただいたり、耳にすることが多くなっており、それぞれに共通した原因があるように思うからです。

大前提として、『複合施設=様々な業態のビジネスの集合体』なので、複合施設の運営って、めっちゃ大変です。

例えば庭園の郷保内であれば…

・土産物店
・花屋
・植木屋
・農産物直売所
・ホームセンター/雑貨店
・レストラン
・カフェ
・造園業者向け資材販売店

という8業種を同時に行っている、という形態です。
それぞれに仕入先が違い、直売所は基本的には委託販売なのでビジネスモデルも違います。おまけに資材販売は掛け売りのシステムも導入しています。
同じ飲食でもレストランとカフェでは業態が違うため、別のスキルが必要です。レストランはテナントさんなので、テナント運営という業態になります。
花屋と植木屋も一緒だろうと思われがちですが…実は業界的には全く別事業で、それぞれ個別のスキルが必要です。

それぞれの8業態が独立して商売として成り立つ業種を、一度に行っているのが複合施設なんです…
(言葉を選ばずに言えば)
それを、簡単にできると思っている人が多すぎるのでは?というのが私の見解です。

「土産は置いておけば売れる」
「野菜さえあればお客は来る」
「とにかく大きい施設を作れば自然に人が集まる」
「道の駅を作ってさえしまえば、儲かる」

(改めて言葉を選ばずに言えば)
素人ほど、このように考えてしまいがちです。
理想はそれぞれのプロ、専門家を入れて計画していくことですが、行政を含めた素人が考えることが多いのが現実です。

そして素人こそ、中途半端なコンサルタントに頼んでしまいがちなのも現実です。
もちろん、高いスキルを持って貢献してくださるコンサルタントさんもたくさんいらっしゃいますし、私も頼りにしています。
ですが、中途半端な知識で多額の費用を持っていくところも少なくありません。
複合施設なだけに、「どの部分を、どんなスキルのある方に頼むのか」も重要です。お願いする事が明確になっていないと使いこなせないのでお互いに不幸ですよね。

そして、複合施設の中でも道の駅は特殊なビジネスモデルです。
他の複合施設とは別のターゲット設定が必要です。

大型施設が地方の負の遺産となっているところも少なくありません。
少子化や地方行政が難しくなっていることを鑑みても、行政が手がけた複合施設が負の遺産となっていってもおかしくありませんよね。

「道の駅って、当たり外れがあるよね」
というのは、お客様の言葉。

私は道の駅ファンのひとりなので、不幸な道の駅や複合施設、無くしていきたいです。

4、公共と営利

ありがたいことに、庭園の郷保内にも視察などで行政関係者や県内外の道の駅関係の方がお出でいただく機会が増えています。
みなさん、色んな角度から庭園の郷保内を知り、興味を持ち、訪問してくださることが心から嬉しく思います。

まだまだお見せするのが心苦しい部分も多いのですが…(発展途上施設と思っていただければ)

さて、行政が関わる複合施設では『公共』的な部分と『営利目的』の部分が共存している事が多いです。
道の駅は100%がこの対極な2つが共存しています。
その線引きとバランスの取り方はとても難しく、どこの道の駅でも苦労されていますが、まさにこの仕組みが個性的な道の駅を生み出していると思います。

庭園の郷保内でいえば、公共的な部分は『造園業の振興』『地産地消』『情報発信』です。
造園業の振興は、屋外での植木花苗の販売の他に造園業のみなさんの仕事道具である縄や竹、土などの資材類や剪定鋏などの道具類の取り扱いもあります。
地産地消は農業振興、情報発信は訪れるお客様へ向けたサービスということになります。

営利の部分はレストランやカフェでの飲食提供と、お土産物や雑貨などの物品販売です。

運営責任者としては、このバランスが本当に難しく、どちらに偏ってもいけない。
バランスを取りながら全体の満足度も上げていく、という舵取りが求められます。
もちろん、どちらか一方に偏った営業をしても良いのですが、個人的には関わる全員がWinWinWinになるためには、あまり偏り過ぎない方が良いのではと思っています。

お客様の感覚的にも、公共と営利のバランスが取れた道の駅を求めていらっしゃるように感じます。
みなさんは、どう思いますか?


ありがとうございます😊 引き続き優良な情報をお伝えできるように頑張ります!