２、専業主婦という生き物

2010年5月23日11時30分
青山の結婚式場に私たち家族は揃っていた。弟の結婚式だ。
公立高校を卒業して、早稲田に入った弟は合コンで出会った瞳さんと長いお付き合い期間を経て、今日結婚式を挙げる。

ふたりが選んだこの式場はどの結婚雑誌でもランキング上位に入る、人気の式場だ。早稲田から、営業職とはいえ一流企業に勤める弟と、慶応を出て誰もが知っているIT企業に勤める彼女。その企業の中でも新規事業の銀行部門の企画・営業なので花形部署だ。
弟の見た目も悪い方ではないが、大げさに言うと宝くじが当たったのではないかというくらい、彼女は美しい。

本当に、踏み外さない人というのは存在するのだ。

もちろん彼女は結婚後も仕事を続けるだろう。お互いの職場に近いマンションで新生活を既に始めている。
父や母はうるさい事は言わないし、世間一般の基準から見ても私の家族は付き合いやすい。父も母も私たち姉弟を独立した個人として扱ってくれたし、弟とは仕事の話や両親の老後の事もざっくばらんに話し合えるほどいい関係だ。
決して、私はうるさい小姑ではない。義妹になる彼女に要求することもないし、一定の距離を取りながら上手にやっていけると思っている。
ただ少しだけ、嫉妬心があるだけ。
何もかも持っている彼女に、間違いなく、嫉妬している。