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【効果的な訪問リハビリ】利用者さんのペースに合わせてリハビリしてはいけない⁉

訪問リハビリの利用者さんの多くは高齢者であり、セラピストの思考や行動のスピードよりもやや遅くなっていることがあります。

医療業界全体で言われている一般論では、サービスを提供している立場であることを自覚し、利用者さん(=高齢者)のペースに合わせて関わることで信頼関係を築きやすいと言われています。

つまり、セラピストのペースでリハビリを進めてしまうと、利用者さんが置き去りにされた感覚により心地が悪くなるため、不満が生じてしまうと考えられます。

しかし、リハビリを困難に対する挑戦、もしくは継続的な運動であると捉えると、利用者さんのペースで進めると目標達成の妨げになることがあります。

今回は、利用者さんのペースに合わせてリハビリをしてはいけない心理的な罠について紹介します!


リハビリを利用者さんのペースで進めた場合

訪問リハビリでは、自宅内外での困難になった動作への挑戦と反復練習、動作遂行に必要になる身体機能獲得のための運動をメインで行います。

このリハビリは、多くの場合で週に1~2回で実施するため、リハビリ以外の時間での自主トレーニングを提案することも多いです。

セラピストと行うリハビリ、利用者さんが1人で行うリハビリの2つを、利用者さんのペースで進めると下記のようなエピソードがよくあると思います。

・屋外歩行練習をリハビリの時に行っている利用者さんの場合。

「日差しが強い日は外を歩かない」、「歩く気分でない時は外を歩かない」という利用者さんの訴えに従ってリハビリを進めると思います。

上記のように天候や気分によって、運動量を変化させてしまうと運動量の低下だけでなく、条件が揃わないと挑戦できない完璧主義を強めてしまう可能性があります。


・自主トレーニングを始めた利用者さんの場合。

「調子(気分)が良いと感じた時には、ついついたくさん自主トレーニングをしてしまう」、「調子(気分)が悪い時は自主トレーニングを休む」と近況報告してくれました。

上記のようなに、調子や気分のような精神状態に合わせて自主トレーニングをしてしまうと、さぼり癖がついてしまい、将来的に自主トレーニングができなくなる可能性があります。

「〇〇(利用者さん)さんのペースでやってみてください」というセラピストからの声かけは、利用者さんへの尊重である一方、利用者さんを怠惰にし、目標達成を遅らせている可能性もあります。

上記の例のようなことは、高齢者に限って起こることではなく、全世代の人で起こる心理的な罠が原因になります。

以下に、その心理的な罠について紹介します。


目標達成を遅らせてしまう心理的な罠

目標を最短で達成させるためには、努力の継続しか勝たんと思います。

つまり、目標達成を遅らせてしまう原因は、何らかの理由をつけて継続を絶つことになります。

努力の継続を絶ってしまう要因の中に、「社会的に良い行いをしたら、悪い行いをしても良いと感じてしまう心理現象」=モラル・ライセンシングがあります。

例えば、ダイエットをしていると、今日はいつもよりも運動を頑張ったから少しお菓子を食べようと考えてしまったり、今日は募金活動に協力したからポイ捨てくらいは許されるだろうと考えてしまうことがあります。

モラル・ライセンシングは、すべての人間が持つ思い込みになります。

そのため、モラル・ライセンシングという心理現象があることを知っていなければ、気づきません。。。

それでは、目標達成を早める方法=モラル・ライセンシングへの対策を紹介します!


目標達成を早める方法

目標達成を早めるためのモラル・ライセンシング対策は、以下の2つがあります。

1.目標を思い出す
2.リハビリの提案は、効果→種目→量の順で行う

それぞれについて、解説します。


1.目標を思い出す

モラル・ライセンシングは、現状に注目が集まった時に起こりやすいです。

そもそも人間は、未来について考えれることが少ない、目標を忘れやすいものです。

そのため、訪問リハビリにおいては運動を行う瞬間がつらい、やりたくないのようなネガティブな気分が、運動成果が出た未来の自分の姿よりも、重要視されてしまうのです。

常にリハビリ=未来への自己投資であることを感じられるように、頻回に目標の確認を行っておくことで、未来へ目を向けられるようになり、モラル・ライセンシングが起こりにくくなります。


2.リハビリの提案は、効果→種目→量の順で行う。

モラル・ライセンシングは、他人から行動を強要された後や道徳的(やりたくはないが、自分にとって良い行い)な行動を取った後に起こりやすいです。

訪問リハビリにおいてはセラピストが運動種目と運動量を設定してリハビリを進めてしまうと、訪問リハビリの時間は頑張れるが、1人では運動ができなくなる可能性が高まります。

利用者さんが自主トレーニングにも積極的に取り組めるようにするためには、運動をすることで得られる効果を説明し、複数の運動種目を紹介します。

そして、利用者さんに種目の選択をしてもらい、その後に運動量をセラピストと利用者さんが一緒になって決定していきます。

これは、運動について利用者さんと会話している際に、未来について考える機会があるため、モラル・ライセンシングが起こりにくくなります。


まとめ

今回は、利用者さんのペースに合わせてリハビリをしてはいけない心理的な罠について紹介しました。

利用者さんを尊重することと、利用者さんのペースに合わせることは、似て非なるものと考えます。

利用者さんのペースでリハビリを進めてしまうと、効果的な運動量を維持できない、挑戦することが億劫になる、リハビリのさぼり癖がつくなどのネガティブな影響が出る可能性があります。

その理由は、「社会的に良い行いをしたら、悪い行いをしても良いと感じてしまう心理現象」=モラル・ライセンシングがあるためです。

モラル・ライセンシングは、未来よりも現在に関して価値を重く持ちやすく、目標や目的は忘れやすい人間特有の思い込みです。

その対策としては、未来について考える機会を持つために、以下の2つをセラピストが意図的に行うことが有効になります。

1.目標を思い出す
2.リハビリの提案は、効果→種目→量の順で行う

是非、試してみてください!

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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