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留め具

※文章史上最も「留め具」という単語が出て来ますが気にせずお読み下さい。

ある日の午前中、私はネタを考えようと机に向かった。
そして2分後「扇風機を掃除しよう」と思い立った。

皆様も経験あるかもしれないが、勉強前に家の掃除を始める現実逃避のアレである。

私は網のカバーを外し羽のほこりをベランダで拭き始めた。

その後カバー部分をたわしで擦ろうと思ったのだが、さすがにほこりが舞いすぎてお隣さんのベランダを汚しそうだったので、家の前の道路で掃除することに。

扇風機の前後のカバー部分のほこりを取り、家に戻りひとつずつ元に戻していく。
そして羽を取り付けたあとに気付く。

「羽を止める留め具がない」

辺りを見渡し物をどかし確認する。

ない。

羽を拭いたベランダに出てみる。

ない。

カバーのほこりをたわしで擦った家の前の道に出てみる。

ない。

ない!!

ないよ!!
留め具ないよ!!

え、え、このままじゃ扇風機使えないよ!
まだ全然暑いよ!

私は慌てて辺りを見回す。
ない。
ベランダに出る。
ない。
道に出る。
ない。

↑これを3セットやりながら気が気でなくなる私。
こういうひとつでもいつもと違うことがあると気になって仕方がない…。

ない。
どこ探してもない。

コレはどう考えても留め具が神隠しにあったとしか考えられない。

「消えた留め具」というしょうもなさ過ぎる怪談話が出来上がってしまった。
なぜ扇風機の留め具などを隠したのか…神の御心というのは本当にわからない。

とにかくまだ探し続ける。

もうなんか「最初から留め具などはなかった」「留め具などなくても問題ない」などと考え始める私。

さらには「むしろ留め具は邪魔だった」「留め具さえなければこんな目に合わなくて済んだ。」「留め具が全部悪い…あいつさえ…あいつさえ居なければ…」と留め具に犯罪者の如く牙を剥き始める私。

そしてまた「留め具が神隠しにあった…」と神の御心に青ざめる私。

そうこうしてるうちに1時間は探しただろうか。

もうバイトへ行く時間も迫っていたし探すのをやめて試しにアマゾンで「扇風機 羽 留め具」で検索してみる。

あった。

なんでもあるなアマゾン。

値段は500円だった。
安い。いや安いのか?よくわからん。
いやそもそもこの留め具がこの扇風機に合うかどうかはわからない。

というか買って合ったとしよう。
その後に元の留め具が見つかったらこんなに嫌な事はない。

「今さら…今さら現れても遅いよ!!」

と新しい彼がいるのに元彼が現れたみたいになる。
おっさんと留め具2つの謎の3角関係にはなりたくない。

しょうもない怪談話に続いて訳のわからん恋愛話まで出来てしまう。

後から留め具が出てくるかもと考えると買えない…。しかし扇風機が使えないのは本当に困る。。

試しに留め具なしで羽を取り付けスイッチを入れてみる。

ガンガラゴンゴンゴン!!

羽がカバーに何度もガンガン当たりすごい音が鳴る。
その光景は扇風機のブラウン色も相まって暴れ馬の様だ。

もはやここまでか…。。

うなだれた私はXで同じ境遇の者がいないか探し出す。
そしてどこか知らない誰かのポストを見て勝手に傷を舐め合うのだ。

「扇風機 留め具」で検索すると同じように失くしたり壊れたりした人達のポストがちらほら。自分だけじゃないという安心感を得る。

しかし失くしたけど見つかった人のポストもあり勝手に「ずるい!!」などと悔しがったりもした。

そうして検索結果を見ていると1つのポストを発見した!
それは羽部分ではないがカバーの留め具が壊れ、「結束バンド」を使って止めたという内容だった。

結束バンド!!

これはいけるかもしれん。

私は早速結束バンドを取り付けて見た!


恐る恐る弱風のボタンを押してみる。

フワアアアア〜〜

扇風機は心地よい風を僕に送ってくれた…!
いけた!いけたいけた!!
よしよしよし!!

続いて中風ボタン。

ブワァァアア〜〜

名の通りの中風が僕を吹き付ける…!
いけた!いけたいけた!!
よしよしよし!!

そして最後の強風ボタン!

ガンガラゴンゴンゴン!!!!!

この暴れ馬が!!!!!

やはり強風だと結束バンドが手前にずれて外れ羽がカバーに当たるようだ。
ならばと私はもう一本結束バンドを巻きつけた。

そして強風ボタンを教えてみる…

10秒、30秒…1分…羽はいつまでもカバーに当たることなく僕に強風を浴びさせてくれた。

「馬が懐いた…」

こうしてなんとか扇風機を使用できることになった。
良かった…本当に良かった…。

もしこの先留め具が現るその時までこの状態で使います。
っいうか本当にどこ行ったんだよ…。

あと写真直すと掃除したとは思えないくらい汚れついてるな…。


まぁ…もう疲れたし…いいや!!

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畠山達也
大人とは思えないくらいわんわん泣いて喜びます